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APECの貿易自由化圧力に

林・水産物自由化反対

農林業団体が決起集会


 十一月十四日からマレーシアで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向け、日本への水産物、林産物などの輸入自由化圧力が強まっている。

 昨年十一月、APECで、水産物、林産物など九分野が、早期に関税の引き下げ・撤廃を行う対象分野とされた。しかし、APECでは「自主性原則」を基礎にすると合意している。にもかかわらず、米国は全ての国が早期自由化に参加するよう要求している。

 日本は世界最大の水産物輸入国であり、ガット・ウルグアイ・ラウンドでは大幅な関税引き下げが行われている。

 また、多くの道県経済では漁業および漁業関連産業への依存度が約一割を占め、離島や半島部では非常に重要な産業として、地域経済に大きな役割を果たしている。これらは中小漁業が多く、近年の魚価低迷などによる経営悪化など厳しい状況にある。

 このような中でさらなる自由化が行われた場合、漁業活動のいっそうの停滞を招き、自給力低下による国民への水産物の安定供給に支障をきたすとともに、漁村地域の経済に極めて深刻な影響を与える。

 林業は、史上最悪ともいうべき苦境に陥っており、このような中で、さらに自由化されれば、日本林業をいっそうの窮地に追い込み、わが国森林の荒廃を招くこととなる。

 このような中、十一月十一日、漁業・林業団体と農業団体が共同して「APEC貿易自由化・関税撤廃反対全国農林漁業代表者合同決起集会」が東京で開かれた。

 主催は、JA全中や全国農政協、全森連、日本林業協会、全国農業会議所、全国漁業協同組合連合会、大日本水産会、全国水産物輸入対策協議会の八団体。全国から三百五十人が集まった。

 JA全中の原田睦民会長は、「輸出国の理不尽な要求は、わが国の林漁業を破壊に導くものであり、今後のコメの交渉にも大きな影響を与え、農業の存立を揺るがす」と自由化反対を訴えた。

 決起集会は、関税撤廃反対決議(別掲)を採択し、団結ガンバロウで終了した。

 また、十一月四日にも漁業団体、林業団体がそれぞれ反対集会を開き、六百人が決起している。

 わが国農林漁業を守るため、さらに団結したねばり強い闘いが求められている。


APEC貿易自由化・関税撤廃に対する反対決議(要旨)

 米国を中心とする輸出国はAPECの自主性を無視し、自らに都合の良い分野についてのみ、ウルグアイ・ラウンド合意以上の関税撤廃を含む自由化を既成事実化しようとしている。

 わが国は、すでに世界の水産物貿易額の三分の一を輸入する輸入大国となっている。林産物についても国内需要の八割を輸入材が占め、これ以上の関税引き下げは困難である。また、農産物については、次期WTO交渉で議論すべきであるが、これ以上の関税引き下げは、わが国の食料安全保障と、貿易では代替できない農業の多面的機能に重大な悪影響を及ぼすことにつながる。

 本来、経済協力、経済支援を協議すべきAPECの場において、輸出国のみが一方的な利益を得る枠組みが設定されることは、絶対容認できるものではなく、APEC会議に向け、わが国農林漁業者は、林・水産物の貿易自由化、関税撤廃に断固反対するとともに、日本政府が、APECの柔軟性原則に基づく自主的対応を貫徹するよう強く求める。


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