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青年

沖縄の米軍写真展が好評

沖縄の痛み知るきっかけに

熊本大学・学生 田中 博


 全国の大学では十一月初旬、学園祭が盛大に行われた。熊本大学の学園祭では、イベントの一つとして、「沖縄の米軍写真展」が取り組まれた。会場には多くの人びとが足を運び、写真やビデオを通して、沖縄の現状を知る貴重な機会となった。参加者の多くが熱心にアンケートに記入し、継続を望む声が寄せられるなど、写真展は大きな反響を呼んだ。学生の田中博さんにレポートしてもらう。

 熊本大学の学園祭「熊粋祭」で、「沖縄の米軍写真展」が同実行委員会によって開催された。展示は十一月一日から三日まで行われたが、小学生からお年寄りまで、幅広い年齢層の人びと約三百五十人が来場した。予想をはるかに上回る入場者だった。

 今回の写真展は、沖縄県福岡事務所の協力により開催の運びとなった。展示した写真は、現在問題になっている普天間基地や移転予定地になっているキャンプ・シュワブ、戦後の米軍による土地強奪、米軍によってもたらされた事件・事故、それに対する沖縄県民の闘いなどであった。

 どの写真も激動の沖縄を写した貴重な写真ばかりで、一般の目に触れる貴重な機会となった。また、同時に上映した沖縄戦のビデオも近年、一フィート運動によって集められた、カラー映像を混じえ貴重な映像ばかりだった。悲惨な地上戦の映像の数々に衝撃を受けた来場者も大勢いたようだ。この映像を上映した意義は、大変大きなものとなった。

新鮮な企画に大きな反響

 最近、このような企画は大学祭では行われなくなる傾向があり、来場した学生、一般の来場者にとっても非常に新鮮味をもって受け入れられたようである。

 この反応はアンケートの結果にも表れている。アンケートの回収率も高かった上に、皆非常に熱心に、感想や沖縄に対する思いを書き込んでくれていた。主な反応をいくつかあげたい。

 多かった反応としては「現在の沖縄の基地の現状が予想していたより非常に深刻なものであった」というものだ。その上で、日本政府の無策を訴える感想も多くみられた。

 来場された人びとはたいてい、沖縄問題についてマスコミである程度の知識は持っていたようであるが、それでも、住宅地に隣接する普天間基地などの写真には衝撃を受けたようであった。

 そのほかには「沖縄問題は日本全体の問題だ」という感想も多かった。九州各地で日米合同軍事訓練が行われている真っ最中でもあり、そのことと結びつけて考える意見も多く、身近な問題としてとらえてくれたようである。

 その一方で、「説明が不十分」、「戦争を扱っているが、より客観的にやるべき」といった意見もあった。今回の展示は沖縄の基地の現状を訴えるのが主な目的であったため、戦争について十分掘り下げられなかったと反省している。時間不足から、説明が不十分になってしまったこともあり、来年以降の改善が求められる。

 また、「あなたたちの意見も載せるべきではないか」、「基地をなくすといっても、具体的にどのようにしていけばいいのか方向性を示すべきではないか」といった厳しい批評もあった。

 このような、一歩踏み込んだ意見が聞かれることは、大変うれしいことである。「沖縄は今どうなっているのか」から「これからどうしたらよいのか」へ、今後、テーマを発展させていくにあたって、後押しとなる意見だった。

 今回の写真展は、大好評のうちに無事終了した。アンケートの中にも、「ぜひ来年以降も継続してほしい」、「日米合同訓練や自衛隊についても扱ってほしい」など、より充実した展示を求める声が非常に多く見られた。

 来年以降も企画を継続させることによって、来場した多くの方々の期待にこたえる必要を痛感した。特に、このような企画は非常に希少なものとなりつつあるので、その役割も大きなものになるであろうと思われる。


◇アンケートに寄せられた声◇

●基地問題があることは知っていたが、具体的にはわかっておらず、今回いくつかの点が理解できた。今日、日本としてどうすべきなのか、じっくり考え取り組まねばならないことだと思いました。

●「日本なのにアメリカの基地があるのは?」これが、一番大切だと思います。日本です、ここは。外国ではないのにおかしいと思うことは当然で、これからも言い続けなければならないと思います。そして沖縄を見捨てた本土と呼ばれる私たちも、考えなければならないと思います。基地を他県に移し、痛みを分け合うべきだと思います。そうしようとしないことは、いまだに残る差別だと思います。

●沖縄のことは知っていたけれども、ここまでひどいとは知らなかった。

●私は夏休みに実習で伊江島へ行きました。ほとんど実習だけにおわれる二週間でしたが、休みに「平和の家」という博物館みたいなところを見学しました。すさまじいばかりの本土への不信感でいっぱいの空気に圧倒されました。沖縄で起こったことは、50年以上たっても消えない恐ろしいものだったのだなと改めて気づきました。今回の展示を見て、その思いがまた大きくなりました。もしかしたら、本土の人間には入り込む余地がないのかもしれないけど、考え続けなくてはいけないことです。沖縄は「考えてくれ」と訴えています。私たち若い人間が改革するべきところは多いのではないでしょうか。

●戦後50年もたち、米軍基地の問題の残る現状にいらだたしささえ感じる。そういう意味で今回の展示は現状を考えさせ、政府にのみでなく国民の意識に訴えていく上で非常に重要なものとなったと思う。こういう活動を続けることで1日でも早い解決を望みたい。

●資料、写真1枚1枚から今まで知らなかったことを知りました。ジェット機が小学校にも落ちたというパネルは、胸が痛みました。基地の問題は、沖縄の方の生活とも深くかかわっていて、一筋縄ではいかないと思いますが、私自身もっと勉強しようというよい機会になりました。ありがとうございました

●われわれは単なる知識の詰め込みのような学校教育を受けてきたため、誰が一番傷つけられたのか、ふみにじられてきたのかを積極的に知ろうとしていない。被害を受けた人が一番真実を語れるような気がする。実際に戦争を体験せずに育っている私たちには、その真実との意識の差をこういった展示などを通じて埋めていかなければならないと、強く感じた。仮に戦争は起こらないとしても、必ず行き詰まりをみせるに違いないと思った。


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