981025


沖縄

女子高生ひき逃げ事件

対米追随の政府に怒り


 沖縄の米兵による女子高生ひき逃げ事件は、容疑者が起訴され、身柄が引き渡されたが、被害者の女子高生は息をひきとった。沖縄県内では抗議と日米地位協定見直し、米軍基地撤去を求める声が高まっている。市町村議会の抗議決議も相ついだ。沖縄県民は大田知事を先頭に、政府や米軍司令部に対し、地位協定見直し、基地の整理・縮小を強く要求し、闘い続けている。 


 この事件で、改めて政府の米国追随ぶりが露呈された。

 事件翌日、沖縄県警は容疑者の逮捕状を取り、身柄引き渡しを求めた。しかし、米軍当局は「起訴前の身柄引き渡し事案に該当しない」と引き渡しを拒否。

 九五年九月の少女暴行事件から、地位協定は運用面で見直され、起訴前の身柄引き渡しについては、九五年十月の日米合同委員会で、「殺人などの凶悪犯罪の際、日本のいかなる要請に対しても好意的配慮を払う」と合意した。しかし、「凶悪犯罪」の定義はあいまいだ。また、凶悪犯罪でなくても「日本側の特別見解を考慮」するとした。

 しかし、日本政府は米軍に身柄引き渡しを要求しないばかりか、小渕首相が「日米安保条約を円滑に活用するために一定の特別な法的措置を認めることは、国際法上も認められている。地位協定を見直す必要はない」(十六日の全国知事会で発言)と述べるなど、日米安保に固執し、対米追随をあらわにした。

 日本政府は沖縄県民の切実な要求を受け止め、米国に米軍基地の整理・縮小や、地位協定の見直しを求めるべきである。


事件後の経過

七日 未明、北中城村で女子高生が米兵にひき逃げされ、意識不明の重体に。

八日 粟国県知事公室長らが海兵隊基地司令部へ、事故再発防止などを要請。

   県警が容疑者身柄引き渡しを要求、米軍が拒否。

九日 北中城村議会が抗議決議と意見書を採択。

   高教組、中部地区労、平和運動センターがキャンプフォスター前で緊急抗議集会。

   外務省首脳が起訴前の身柄引き渡し求めないと表明。

十二日 県警、容疑者の米兵を書類送検。

    沖縄市議会が抗議決議と意見書採択。

十三日 那覇地検、米兵を業務上過失傷害と道路交通法違反で起訴。被告の身柄が日本側へ移り、那覇拘置所へ。

    外務省沖縄事務所の原島大使が地位協定の改定を求める考えはないと表明。

    宜野湾市議会、名護市議会が抗議決議を採択。

十四日 被害者の女子高生が入院先の病院で死亡。

十五日 北谷町議会が抗議決議を採択。

    野中官房長官が「今回の事件をもって地位協定の変更を求めない」と表明。

十六日 全国知事会議に大田知事が出席し、地位協定を起訴前の容疑者引き渡し可能に見直すようを求めた。

    高教組、県教組が抗議集会と決議。県職労と水道労組が県庁前で抗議と地位協定見直し求め集会。約四百三十人が参加、決議を採択。

十九日 山内・県出納長が東京で地位協定見直しなどを首相などに要請。

二十一日 平和運動センターなど千五百人が集会。


地位協定は外交特権ではない

沖縄県高等学校障害児学校教職員組合執行委員長 伊禮 弘宜氏

 事件について、一つは発生源としての米軍基地という構造的な問題がある。ひき逃げした米兵が、事件後基地に逃げ込んでいることを見ればわかるように、基地が犯罪を発生させる温床になっており、「基地に逃げれば守られる」という、復帰以前の流れをひきずっている。

 二つ目に事件後の対応の問題だが、起訴前の容疑者引き渡し要求を米軍は拒否した。これについて外務省まで「外交特権と似たようなもの」といっているが、外交使節と軍隊は明らかに違う。しかも米軍は沖縄が好んで招へいしたものではない。

 外務省は、「日米安保も地位協定も、全国共通に適用している」という形式上の受け答えしかしない。しかし、凶悪犯罪などは、全国の七五%の基地がある沖縄に集中している実態があり、これは差別だ。もし、これが沖縄でなく他の県だったら、本土の人はこれほど長い間問題を放置しただろうか。「温度差」という表現があるが、沖縄のことを自分のこととして感じないから「放っておけ」という姿勢がある。だからわれわれは、沖縄を米国の占領下に置いた関係がいまでも継続しているという思いがある。

 当然、地位協定は見直されるべきだ。基地の縮小・撤去は段階的にしか解決できないだろうから、少なくともその間は米兵でも県民と同様に扱われるべきだ。

 教職員組合としても、基地の存在を続けさせているという責任がある。運動しなければ変わらないので、闘い続ける以外にない。

 政治的な立場を超えて、「差別」という観点も含めて取り上げ、闘っていきたい。


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