980805


「核廃絶へ」各地で取り組み

核保有5大国へ非難高まる

日本は核の傘から脱却を!


 八月を前後して、原水爆禁止運動が展開されている。五月にインド、パキスタンが相ついで行った核実験で、核廃絶へ向けた情勢は新たな局面に入った。米国など核保有五大国への非難、わが国の「核の傘」からの脱却を求める世論は一段と強まっている。自主・平和・民主のための広範な国民連合や青年・学生が、講演会や学習会を取り組んでいる。


野田元インド大使が講演 国民連合・大阪

 広範な国民連合・大阪は七月三十一日、大阪市内で講演集会「インド、パキスタンの核実験と新ガイドライン 核軍縮・廃絶への道―問われる日本の進路」を開催し、府下各地から市民・労働者が参加した。

 冒頭、主催者を代表して吉田伸・代表世話人が「この八月で被爆から五十三年が経過し、また、世界中の多くの人びとが核廃絶を願っているにもかかわらず、いまだに核がこの地球上からなくならない。参院選ではガイドライン関連法案など大事な問題が政策論争されなかった。われわれの運動をさらに強化して、あるべき日本の進路を実現させたい」とあいさつを行った。

 続いて、野田英二郎・元インド大使が約一時間半にわたって講演を行った。野田氏はインドが核実験を行った背景や意味、NPTの不平等性などについて話した後、非核地帯を広めていくために米国の核の傘から脱却して、日本が役割を果たすべきだと話した。

 また、わが国の対米従属外交、日米安保条約の問題点を指摘し、「平時に外国の軍隊が駐留しているのは正常なことではない」、「日米安保条約は冷戦体制の終結、米中関係の『安定化』や日中両国間の友好関係の発展などから、国際的に必要性がなくなっており、再検討する必要がある。安保を破棄しても、近隣国との相互信頼関係の醸成でわが国の安全保障は十分確保できる」と強調した。

 さらに、新ガイドラインの問題点にも言及し、過剰な対米追従外交から脱却し、自主的で平和的な外交の必要性を説いた。

 集会は野田氏の講演を受けて、質疑応答を行い、参加者は核廃絶に向けたわが国の役割と日米基軸外交の転換の必要性について、認識を深めた。


核問題で公開学習会 国民連合・愛知

 国民連合・愛知は七月二十六日、「インド・パキスタンの核実験に思う」と題した公開学習会を開催した。

 講師の佐々木雄太・名古屋大学教授は、約一時間にわたって、核問題の経過について述べ、その中で「NPT体制は持てるものと持たざるものを差別したもの。これに対して、これまでまっとうな批判をしていたのがインドだった」「日本政府がインド政府を非難するなら、まず米国の核の傘を否定しなくてはならない」「核抑止論は日本の戦国時代のように、民間人という人質をとる不道徳な手段」と発言した。

 参加者との討議の中では、広島、長崎の原爆投下は米国が単独で対日管理するための布石であったこと、日本の戦争責任が冷戦構造の下での米国の対日支配によってあいまいになったことなど、歴史的経過についても触れられた。

 佐々木氏はまた、核廃絶のためのこれからの新しい運動の展望として、米国の未臨界核実験に対する批判を強め、核保有国に期限を切った核廃絶を求めること、北東アジアでの非核地帯構想の二点を提起した。


日本アジア学生交流センターが集会

核廃絶と日本の進路を問う

元IAEA広報部長・吉田康彦氏が講演

 講演会「核廃絶と日本の進路〜平和な二十一世紀へ向けて」が七月二十八日、東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。主催は日本アジア学生交流センター(JASIC)。

 講師として招かれた元国際原子力機関(IAEA)広報部長の吉田康彦・埼玉大学教授は、「印パの核実験で核戦争の可能性が高まったなどというのは米国の宣伝に過ぎない。むしろ、両国関係は安定したといえるのではないか。核保有が政治的特権となっているのが現実であり、NPT体制はこれを容認してきた。核廃絶は核保有国の政府・国民が核の抑止力を信じている限り『夢のまた夢』である。だからこそ核廃絶へ向けて具体的な道筋を描き、即行動をとるべきだ。日本としては、核実験に対して情緒的に反対するだけでは何もならない。日本政府が対米追随の外交をやめ、核の傘から離脱し、北東アジアでの非核地帯創設に尽力すべきである」と問題提起した。

 質疑の後、主催者から多くの青年・学生団体からの協力があったことが報告され、最後に「二十一世紀を担う私たちの世代から、世界の平和に貢献する日本、アジアや世界から信頼される日本の生き方を見いだすために、議論を積み重ね、行動を起こそう」とよびかけられた。国の進路について、青年層からの積極的な動きとして注目される。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998