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東京

東京裁判を問い直す

平和遺族会が講演会



 平和遺族会全国連絡会は七月七日、講演会「いま、アジアから問われるもの―講演と証言で考える『あの戦争』と日本の未来」を東京・渋谷区立勤労福祉会館で開き、約百十人が集まった。

 七月七日は蘆溝橋事件の日であり、同会が「侵略戦争の反省とアジアへの加害責任の自覚の上に、戦没者遺族の平和運動を進めよう」と八六年に結成された日である。

 「東京裁判を見直す―何が裁かれ、何が裁かれなかったのか」と題して、内海愛子・恵泉女学園大学教授が講演を行った。

 内海氏は日本軍が抱えた三十五万人の捕虜について、アジア人は「無敵皇軍」という教育をして「解放」した後、労働者として強制徴用し、白人は「労務を希望する」とサインさせ、日本国内の軍需工場や泰緬鉄道建設に投入し、過酷な状況で働かせ、捕虜の二七%が死亡した実態を報告。

 また、二次大戦が民間人を大量に巻き込んだ戦争であったことや、日本軍の住民虐殺などが詳しく話された。

 まとめで「東京裁判・BC級裁判では、連合国に対する日本軍の戦争犯罪は綿密に裁かれたが、裁判の主体は東南アジアを再占領した帝国主義国家であり、アジアの被害は十分とり上げられていないし、連合国の戦争犯罪も裁かれていない。さらに戦後、アジア諸国は独立戦争や独立への闘いの中にあり、ベトナム戦争が終わるまで戦争が続き、日本を裁くことができない状態の中で、日本は口をぬぐった。そして日本は力をつけ、日本のヘゲモニーで、賠償条約が結ばれた。だからアジアでの日本の戦争犯罪はきわめて不十分にしか論議されていない」と問題点を述べた。

 そして「アジアの従軍慰安婦問題が大きな問題になっており、私たちの手でこの問題を明らかにする必要がある。ようやく東京裁判の資料が明らかになり始め、私たちの手で検証できる段階に入った。現在の戦後補償の運動がもう一回、日本がアジアで何をしたのかを具体的に問い直す必要があるのではないか」と問題提起を行った。

 集会は日本の侵略戦争を振り返り、歴史をゆがめる「プライド」を批判し、正しい歴史認識を求めるものとなった。


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