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アサヒ靴が再建へリストラ案発表

労働者を4割削減 解雇を許さず、労働者は団結を



 千三百億円の負債を抱えて会社更生法適用を申請しているゴム靴製造大手、アサヒコーポレーション(本社・福岡県久留米市、以下アサヒ靴)では、労働者の四割をリストラする再建計画が出された。労働者に犠牲を押しつける計画は許されない。これに対し、労働党福岡県委員会は労働者に闘いを呼びかけ、宣伝活動を展開している。


 四月十日に二回目の不渡りを出し、千三百億円の負債を抱えて福岡地方裁判所に会社更生法の適用を申請しているアサヒ靴の保全管理人は七月七日、従業員削減などが盛り込まれた再建計画と、「更生の見込みがある」という意見書を添えた調査報告書を同裁判所に提出した。

 再建計画には、(1)二千百五十人のアサヒ靴本社の労働者を約八百人削減、関連会社を含めて千七百〜千八百人削減する、(2)全国六十数社の販売代理店を当面十六社程度に整理統合し、ゆくゆくは九社にしぼる、(3)製品数約三千三百品目を二割カットする、(4)海外生産比率を五割以上に高める、などが柱となっている。

 これはアサヒ靴本社の労働者の四割を首切り、さらにアサヒ靴の発展を支えてきた子会社や関連会社、そこで働く労働者に経営破たんの犠牲を一方的に押しつけるものである。すでに百八人の解雇者が出ているが、そのうち再就職できたのは二十二人だけで再就職の受け皿がなく、厳しい犠牲が強いられている。

 このように会社側は財産を保全し、企業の再建と継続をはかることを第一義としている。管財人に前社長でアサヒ靴再建本部長の就任も検討されているが、アサヒ靴の創設者であり、会長である石橋は財産をなげうって社会的責任を果たすべきである。

 すでに民間調査会社の調べでは、七月七日までに製造子会社や販売会社などの関連会社が全国で五十社倒産している。

 また、本社のある久留米市はゴム産業が基幹産業であり、雇用不安の増大、連鎖倒産、購買力の低下による商店街へのダメージなど地域経済が崩壊するおそれもある。

 これらの再建計画に対し、アサヒ労組の小川清登委員長は「再建のために血を流すことはやむを得ない」とし(七月七日会見)、労働者への犠牲押しつけに抗議の声も上げていない。また、更生手続きが始まれば、再建に全面協力する姿勢を表している。

 いったい誰のための労働組合なのか。臨時に開かれた組合総会では、「退職金はどうなるのか」「わが身はどうなるのか」という質問が相ついだ。アサヒ労組は社内預金や賃金を正当に払わせ、労働者の解雇に反対し、削減が避け難いならば世間並みの退職金を要求して闘うべきである。

 労働省は七月七日、久留米市を「緊急雇用安定地域」に指定した。しかし、これで事態が解決するわけではない。労働者は団結し、地域経済を支える各層と広く連携して闘う以外に危機を乗り切る道はない。


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