農水省「新たな麦政策大綱」

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農水省「新たな麦政策大綱」

生産者麦価守る対策を

　農林水産省は五月二十九日、「新たな麦政策大綱」（以下、「新政策」）を決定した。これは一九五二年以来の大改革となる。新政策は、①現在の政府全量買い入れを、民間流通に三年から五年（二〇〇〇年産から二〇〇二年産）で移行する、②民間流通が定着するまで政府買い入れを継続、③麦作経営安定資金の創設、④災害収入共済の導入などが柱となっている。

　民間流通に移行した場合、民間取引価格は現行の政府売り渡し価格（生産者価格の約三分の一）程度になると予想される。そのため、輸入麦の売買差益を財源に「麦作経営安定資金」の創設が盛り込まれたが、「輸入麦の売買差益を財源にというが、今でさえ赤字。将来にわたり財源を確保できるのか」という声も上がっている。

　また、麦生産は天候によって大きく左右され、収穫量、品質の低下はそのまま収入減少につながる。そのため、災害による収穫量・収入の減少に適用される「災害収入共済」の麦への導入が盛り込まれたが、保証割合や掛け金水準などの具体化はこれからだ。

　麦は畑作の輪作、水田の転作・裏作に不可欠な作物である。日本農業を守り、七％まで落ち込んでいる麦の自給率を引き上げるためには、農家経営が安定する農業政策が必要である。

ＪＡ佐賀中央会

樋口勝年・農政営農生活部長

　佐賀県では一万八千ヘクタールの麦生産が行われている。農業機械、施設の効率からいうと、コメの重要な裏作だ。

　「新政策」に関しては、災害による収入減については共済の問題、生産した麦については買い入れの問題がある。農業共済の見直しでは、農家の負担が増えるならば、収入減と同じこと。生産農家が加入しやすく、実際に災害があったときには適用できる共済にしなければならない。

　また、国産麦を優先した国家貿易を守ることが大前提で、生産された麦は全量売り渡しが出来るように、政府に対策を約束してもらわないといけない。

佐賀・ＪＡ小城郡

森勝之・農産振興課長

　国産麦を民間流通に移行するというのは大きな問題。今まで政府が買い上げていたのを民間に移行した場合、「買い手市場」になってしまうのでは、と心配している。

　麦価の現状維持を確保するようなことがなければ、価格の下落につながるだろう。

　佐賀県は収穫期が梅雨と重なり、品質・収穫量低下を招きやすいため、農業共済を特例として設けてもらえるよう要求している。

　政府が麦価を安定させる政策を行わなければ、生産費もまかなえなくなり、日本の麦作りはつぶれてしまう。

　これだけ農産物の自由化が進んでいるのだから、むしろ国産麦の普及をし、「国産麦でなければ」と国民世論として盛り上げていかないといけない。