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「慰安婦」に名誉と正義を

「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが発足

性奴隷制を裁く国際法廷開催を


 一九九〇年に韓国の女性が元従軍慰安婦であると名乗り出てから八年が経過した。この間、アジア諸国から被害を受けた女性たちが次々と名乗り出て、日本政府に公式謝罪や国家補償を求めているが、日本政府はいまだに法的責任を認めず、国家補償をしていない。六月六日に発足した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NET Japan)では、従軍慰安婦問題の真相究明と責任者処罰のために、「『慰安婦』に名誉と正義を! グローバル・キャンペーン二〇〇〇」を提唱、二〇〇〇年十二月に「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」の開催を提案している。VAWW―NET Japan発足記念シンポジウムの模様を紹介する。


 VAWW―NETは、昨年東京で開かれた「戦争と女性への暴力」国際会議を契機につくられた国際的なネットワーク。

 六月七日に開かれた日本ネットワーク発足記念シンポジウム「日本軍性奴隷制を裁く―『女性国際戦犯法廷』に向けて」には、全国から二百五十人が参加した。

 シンポジウムでは、同ネット代表の松井やより氏の開会あいさつにつづき、韓国挺身隊問題対策協議会共同代表のユン・ジョンオク氏が基調公演を行った。

 ユン氏は、「被害国内に生存している日本軍の慰安婦制度の被害者、自殺したり異国の地で亡くなったすべての被害者の心情をくみ取り、責任者を処罰してほしいという遺言にしたがって、戦犯法廷を開くことは歴史的に意義深いと思う。この法廷は、誰がどこで何をしたかを明らかにし、慰安婦制度について決定権を持って関わった人を対象に、その責任の重要性について問うものだ。このような法廷が戦後五十年以上たち、二〇〇〇年に開かれるのは、遅すぎるとも思う。現在も、女性に対する組織的性暴力は武力紛争下などで行われているが、もし、第二次世界大戦後、徹底的に日本が審判を受けていたら、現在、組織的性暴力はなくなっていたのではないか。日本政府は責任者を処罰すれば、被害者たちに賠償をしなければならないし、また、日本軍の最高責任者を処罰しなければならないので、真相究明を望んでいないのは明らかだ。アジアの多くの国々が憂慮するのは、日本が日中戦争及び太平洋戦争を起こしたことに反省する気配がない点だ。日本で今日、「プライド―運命の瞬間」のような映画が上映されているように、日本政府は、五十年前、肉体を犯し、五十年後の今は、精神を侵している」と訴えた。

 パネルディスカッションでは、内海愛子氏(恵泉女学園)、西野瑠美子氏(ルポライター)、大越愛子氏(「女性・戦争・人権」学会)、高里鈴代氏(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)がそれぞれ発言した。

 高里鈴代氏は、「調査の結果、沖縄には百三十カ所以上の慰安所があったことが分かった。一九四四年三月に日本の最南端の領土を守る防衛部隊が編成され、その中心になった部隊が、中国から慰安婦を連れて沖縄にやってきた。だから、沖縄の慰安所も、全体の政策とつながって設置された。そして沖縄はなんの断絶もなく、日本軍のつくった慰安所から、米軍が強姦を始め、そして米軍が使用する売春宿がつくられていく場所となった。今回のこの取り組みは、慢性病のように続いている沖縄の状況ともつながっていくことが大事だと思う」と、報告と問題提起を行った。

 シンポジウムでは最後に、映画「プライド―運命の瞬間」に対する抗議文が読み上げられた。


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