980425


アサヒ靴が倒産

地域経済に大きな打撃

企業は社会的責任をとれ!


 大手ゴム履物メーカーのアサヒコーポレーション(本社・福岡県久留米市、以下アサヒ靴)は四月六日に銀行取り引きが停止し倒産した。関連倒産は北海道から東京、九州にまで広がり、地域経済に打撃を与えている。労働党福岡県委員会(中村哲郎委員長)は、企業の社会的責任と市、県の支援を要求し、直ちに宣伝活動などを開始した。


アサヒ靴は一八九二年に久留米市で創業した履物メーカーの老舗(しにせ)で、子供向けの靴では業界トップ。アサヒ靴と取り引きのある企業は三百二十社にも上る。同社は主力の久留米工場だけでなく、北海道、台湾、米国にも工場がある。

 久留米市では、アサヒ靴のほか月星化成、ブリジストンの三大ゴムメーカーがあり、製造業出荷額の五割をゴム製品が占めるほどの『ゴム企業城下町』となっている。

 久留米市にはアサヒ靴の関連企業約百二十社があり、久留米工場、関連、下請け企業だけで五千人の労働者がいる。そしてその家族、地域の商店街などを考えれば、地域経済に及ぼす影響は計り知れない。

 すでに久留米市は六日、支援対策本部を設置し、福岡県も同日「アサヒコーポレーション及び関連企業対策協議会」を設置した。麻生渡・福岡県知事は「これだけ大きな従業員、関連会社を抱えた会社で、社会的責任は大きい」と述べている。

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 こうしたなかアサヒ靴は無責任な態度に終始している。

 ふつう、企業は倒産が決定した直後、すぐさま会社更生法適用を求めるものである。裁判所が認めれば、管財人が債務を棚上げし、再建計画を立てて実行することになる。

 アサヒ靴は九日、取締役会で会社更生法の適用申請を正式に決めたが、再建計画やいつ申請するかについては「具体的には言えない」などと言う始末である。久留米市議会から「市民の税金で支えるのだから、アサヒに会社の状況をもっと公にさせるべきだ」との声が上がるのも当然である。

 倒産の影響を受ける関連、下請け企業には政府系金融機関から優遇措置のある融資を受けることができる。しかしこの適用もアサヒ靴が申請に必要な負債額や負債者名簿を提出しなければ受けられない。事実、通産省は二回目の不渡りが出た一日に両制度を適用する方針を固め、同社に提出を求めても「早急にしたい」と答えるだけであった。

 社長は「自分に一番の責任がある」としながらも、会社再建については「大きく血を流して再建する計画」と労働者、関連企業を犠牲にする大合理化を示している。

 一方労働組合は四日、連合福岡、同北筑後地協、ゴム労連が「アサヒ再建支援共闘会議」を設置、「アサヒ再建支援カンパ、組合員激励行動、業界団体などへの再建支援要請」などに取り組んでいる。

 すでにアサヒ靴の生産は一日から半減しているが、交代勤務にして週二・五日の体制とする、給与の二割カットを行うことで労資は合意した。

 会社の再建は必要だが、再建のなかで労働者に犠牲を押しつけることは許されない。また関連、下請け企業へのしわ寄せにも反対しなくてはならない。

 佐賀県では、県がアサヒ靴の子会社への融資を断わるなどの問題が起きている。広範な国民連合・佐賀は四月二十一日、井本県知事に雇用確保と中小企業への具体的な支援策を求める要望書を提出した。


関連倒産など

一日〜 台湾の和豊化学工業は操業を一%に

四日 久留米市の東洋ゴム織布は、二十九人を解雇

六日 北海道アサヒ販売倒産

八日 福岡県朝倉町のアサヒゴム加工、朝倉町、杷木町 の工場で操業停止

八日 久留米の西南旭、熊本県鹿本町の工場で操業停止

九日 佐賀県千代田町の南田産業、七十人を解雇

九日 福岡県山田市のアサヒシューズ工業は、操業停止、社員自宅待機

九日 佐賀県三根町の旭縫製西島工場は、全員に解雇通達、十四日解散

九日 佐賀県多久市の筑紫旭 加工は、操業の一部停止、従業員の半数は自宅待機、二十日全員解雇

九日 佐賀県鳥栖市のトス井上は、従業員全員を自宅待機

九日 久留米市の馬場商店は、従業員を全員解雇

九日 福岡市のフジ製靴、五人を解雇

十日 土佐アサヒ販売倒産

二十一日 東京アサヒ、横浜アサヒ、千葉アサヒが倒産


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