980415


横浜市長選挙

市政の転換訴え大きな影響

共同して闘いを継続する

選対本部長 山本 喜俊氏に聞く


 四月五日に投開票された横浜市長選挙では、労働党公認の小杉ひでき候補が二万三千五百人余の支持を得た。市長選挙を闘って、感想・総括と今後の闘いについて、山本喜俊・選対本部長(党神奈川県委員会委員長)に聞いた。


 労働党の小杉ひできに二万三千五百二十八人(得票率二・六九%)の支持がよせられました。立候補を決意して二カ月もなかった短期間の闘いでしたが、闘って非常によかったと思っています。

 横浜市民のみなさんはもちろんのこと、県内各地や全国から支援をいただきました。紙面を通じてお礼を申し述べます。ありがとうございました。

誰のための市政か暴露

 情勢については詳しくふれられませんが、大激動の予兆は誰しも感じています。こうした中で横浜市長選挙がせまり、党としてみてみぬふりをするわけにはいきませんでした。また、現に自民党橋本政権のもとで労働者だけでなく商工業者などに犠牲が押しつけられています。

 この政治と闘うためには、橋本政権を暴露するとともに、地域で自民党政治を支え、かつ一握りの企業のための市政を進めている高秀市政を根本的に暴露し、党の旗を掲げて闘わなければならないというのが市長選挙を決断した最大の理由です。こうして地域の闘いと党を前進させ、重大な情勢に備えようということでした。

 社民党は、まともな政策論議もせずに自民党の現職市長に相乗りし、反動的政治を支えました。連合神奈川の一部指導部も同様です。民主党は自主投票で闘いに参加できなかった。新社会党は見えなかった。その中で、共産党系と神奈川ネットワーク運動の人と無所属が二人、計六人が立候補し、激しい党派闘争となりました。票の結果では、まず投票率が過去二番目に低い三四・一一%。当選した高秀市長は絶対得票率一八%弱で、市民の五人にひとりも支持しなかったわけです。

 共産党系の候補は、一昨年の総選挙時の横浜市での比例票、最低二十万票は取りたかったようですが、それに及ばず、得票率は前回より下げました。選挙後、参院選挙の戦略を練り直さなければとか、なぜネットや労働党が立候補したのかと八つ当たりをするありさまです。

影響与えた党の政策

 労働党は、みなとみらい(MM)開発に象徴されるような、三菱や東急などの一握りの企業家が牛耳る、その利益のための一極集中型開発を進める現市政を鋭く暴露しました。そして、この危機のもとで苦しむ商工業者や労働者の要求を基礎に、高秀市政と真正面から対決するまったく違う経済発展、街づくりの政策を提案しました。この主張と政策は大きな影響を与えました。

マスコミは、MM21と現市政を鋭く批判しているのは小杉だと皆が認めましたし、高秀市政のもとで犠牲となっている商工業者の実態や要求について、小杉候補から教えられたと何人ものマスコミ人が言うほどでした。

 他の候補者も、途中からMM21に代表される大規模開発について言及せざるを得なくなりましたし、終わった後の新聞は、高秀市長はこの問題を避けて通れないと論評し、労働党の政策が他党と世論に大きな影響を与えたということでした。

 この結果、高秀陣営は選挙終盤に商店街の役員を集めて締めつけを行い、共産党系は、商店街・経済対策の特別のチラシを配布しました。

 このような激しい闘いの中で、組織力で弱さを持つわが陣営は目立ちにくかった。こうした中で投票した二万三千五百人余の人びとは、労働党とその政策をある程度、理解している人びとだと分析することができます。これは非常に勇気づけられることだと思います。

 選挙後、よくやったという支持者からの声がありました。労働者からは「労働者の政党にあれだけの人が投票したというのは大変なことだと思う」と、ある大衆団体の役員の方からは、「六人の候補者の中から支持を得たことは、すごい努力をしたんだな」という感想が寄せられています。商店街からは、「家族四人が入れた」「小杉さんの話を聞いて初めて市政について分かり始めた。私も入れた」などの声があります。

この市長選挙を闘うにあたっては、誰のための市政か、どの連中が市政を牛耳っているのか、この点を明確にして敵をしぼり、中心的プロジェクトであるMM21の実態と結びつけて、徹底的に暴露しました。また小杉候補は、労働者と中小商工業者の要求を取り上げて、市政の根本的転換を主張しました。こうして住民各層の政治的な認識の発展と地域の階級闘争の発展を促進するようにしました。例えば、はじめて会った近所のお店の主人は、「MM21はそういうことなんですね。(新聞などで小杉候補の政策の紹介を見て)言われてみてはじめて分かりました」「あの連中が市政を支えもうけて、一方、その影で私たちはどんどん落ち込むということですよね」と言っていました。このように、地域で誰が市政を牛耳り、もうけているのか、なぜ自分たちが零落させられているのか、ということについての認識が進んだのではないでしょうか。

◎各界の現状徹底的に調査

政策を作るにあたっては、中小商工業者や労働者など各界の人びとの意見を徹底して聞きました。横浜経済界のトップの人たちにも会いました。そこではMM21への一極集中に対して、あれでよいのだろうかという不満があり、地元財界の中には市政をめぐってし烈な争いがあることもわかりました。

 横浜の経済を支えている中小商工業者のところでは、現職に対する不満をあちこちで聞きました。これらの人たちの声を代弁して闘うことができれば、現市政に反対する大きな勢力が形成できると、自信を持って政策を作り上げました。

 「MM21だけが横浜ではありません、商工業と市民に気配りのある市政」というスローガンで政策を作った後も、この政策でどうだろうか、と話を聞きに行ったら、これまで高秀市政を支えてきた有力者からも「MM21だけが栄えて、地域の地盤沈下がひどいよな」と言われて、この政策は浸透するなと、思いました。

 選挙期間中、街頭で「MM21を中心とするのではない街づくりを問題提起しているのですね」と話しかけてくる四十歳代の女性がいたり、横浜市をどういう街に作り替えるのかと、小杉候補に話しかける人がいたり、選挙公報とマスコミが書いた新聞記事を持って、「小杉のいっていることは私たちには非常によい」と、まわりに広めている商店主がいたりと、政策が受け入れられていたと思います。労働者については、工場のあるところで宣伝すると、向こうから近寄ってきて握手したり、耳元で頑張れよといっていく労働者がいて、具体的に労働者の中で労働党が期待されているのだなと実感しました。

市政をめぐり闘い続ける

 高秀市政に不満をもっている保守層の人たち、港を中心に古くから横浜の産業、経済を支えてきて、市政の中にも大きな影響を持っていたいわば古い保守層というか、影響力を持っている保守層が今度の選挙をめぐって高秀市政に対して一部不満を表明しているわけですから、一番大きな方向として、労働運動がその人たちと共同行動して横浜市政を変えるという課題があると思います。

 いずれにしても、市政を奪取する闘いを十六年ぶりに始めたわけですから、その闘いを継続していきます。その条件は大いに存在しています。

 選挙戦を闘ってみて、今の情勢を肌で感じました。また、市政を揺さぶる大きな闘いの組織者として、労働党の役割が果たせる時代だという感じがします。

 市長選挙を闘って非常によかったと思います。


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