980315


地方住民の生活と営業守れ

大阪府党 府知事に要求突きつける


 金融危機などわが国経済の危機が深刻化するなかで、地方経済もいっそう落ち込み、住民の生活条件も悪化、地場産業、中小企業の経営は危機にひんしている。また、都道府県財政も多くが、長年の大銀行・大企業優先政策もあって財政悪化に陥っている。そうした地方自治体は、住民の生活・営業の窮状を救うどころか、逆に大銀行、大企業のみを救い、住民、地域業者などを切り捨てようとしている。大銀行に三十兆円を投入する橋本政権の手口と、基本的に同じである。東京都、大阪府など「財政再建団体」寸前の自治体は、民生関連費や市町村補助金、職員数のカットなど、住民への犠牲転嫁によって「財政危機」を切り抜けようとしている。経済危機のもとで、いっそう強まるこうした犠牲転嫁を断じて許さず、闘わなければならない。労働党大阪府委員会は今回、府知事に対し、「大阪府九八年度予算と府政運営に関する要望書」を申し入れ、また府下で街頭宣伝を行い、闘いを組織しつつある。


 大阪府民の生活はいま、深刻な状態に直面している。

 民間機関がまとめた近畿地区の昨年の企業倒産件数(負債総額一千万円以上)は、前年比一二・七%増の三千四百五十九件、八四年に次ぐ史上二番目の水準となった。販売不振といった不況型倒産(五六%)が多く、銀行の「貸し渋り」も中小企業の倒産に拍車をかけている。大阪府では、昨年は千八百九十五件(前年千七百九十件)にもなり、一月は百六十三件で東京に次いで全国二位、負債総額は約二千百億円で全国一位となった。

 また東大阪商工会議所がまとめた昨年十二月の景気動向調査では、中小製造業の生産額業況指数はマイナス五八で、十月調査に比べて五ポイントも悪化。採算状況、資金繰り、受注の各指数も悪化した。

 雇用状況は、近畿地区の昨年十〜十二月の完全失業率が四・二%と、全国水準(三・五%)をはるかに上回る状況となった。

 商業関係では、小売商店数の減少に歯止めがかからず、大型店の出店が経営圧迫に拍車をかけている。大店法規制緩和を背景に、四万〜七万平方メートル規模のダイエー(枚方市)、イトーヨーカ堂(枚方市)、マイカル(茨木市)、西友(四条畷市)など、超大型店の出店が明らかになっている。百貨店や大型スーパーが過度に集中する枚方市の中小小売業者からは、「大型店の営業時間延長やコンビニ乱開発で地元小型店が閉店せざるをえなくなっている」「日本の社会はスーパー、ホームセンター、コンビニの小売りだけが生き残るのか」という切実な声があがっている。

「弱者」いじめ、大企業のためのノック府政

 大阪府は「財政危機」を口実に、社会保障費や教育費、人件費の削減など大幅な府民犠牲策を提案してきた。

 ところが一方では、九八年度に限っても、破たんした「泉佐野コスモポリス」事業への総額二百三十億円の負担、採算が疑問視されている中之島国際会議場の建設に百八十九億円、「水と緑の健康都市」建設に五十七億円、また関西新空港全体構想の推進に九十五億円、りんくうタウン土地造成に五十三億円など、大プロジェクト事業の積極的な推進を打ち出した。

 今日の財政危機の原因は、支出面から見れば、九二年度以降の単独の投資的経費(関西国際空港関連整備など)の突出した伸びにある。その中で導入された第三セクター方式には、工事を請け負う大手ゼネコン、大手不動産業者、毎年の金利を手にする大銀行が、競って出資した。自治体の他に、大企業が経営に深く関与し、すでに多大な金利が出資銀行に支払われてきた。

 多くの大型開発事業は、大企業の儲けにはなっても地域の産業振興には少しも役に立たなかった。このことは、泉州の多くの地元経営者が強く批判している点である。

 こうした窮状を踏まえ、府民の生活と営業を守るために、労働党大阪府委員会は府知事に要望書を提出し、宣伝と闘いを開始した。


こんなに府民へ犠牲転嫁が

事業名

見込額

削減額

私学助成(府単独分)

190

93

重度障害者(児)医療公費負担事業

97

50

病院事業会計繰出金(府単独分)

46

46

水道事業会計繰出金(府単独分)

36

36

市町村振興補助金(公立病院助成)

21

21

母子家庭医療公費負担事業費

33

15

国民健康保険事業費補助金

28

14

府育英会助成費

12

12

大阪府98年度予算案より作成(試案、単位:億円)


一九九八年度予算編成と府政運営に関する要望書(要旨)

一、中小企業経営者、労働者に対する緊急かつ抜本的な不況対策の実施を

 府民生活はいま、深刻な状態に直面しています。

 これまでの府の不況対策は、今日の府民のおかれた状況から見てきわめて不十分と思われます。

 したがって以下の経済雇用対策を緊急に行うよう求めます。

(1)中小零細の商工業者への緊急融資制度、特に借入資格要件の緩和、融資基準の改革を行うことなど。

(2)中小製造業者の経営基盤の強化と熟練労働者の養成確保などを目的に、「モノづくり法(モノづくり基盤技術振興基本法)」の制定を政府に求めること。同趣旨の府条例を制定し、モノづくり産業の活性化を図ること。

 中小商工業者、建設業者の仕事の確保を図ること。府の発注を基本的に地元業者にするように指導を行うこと。

(3)府独自の「大型店舗出店指導要綱」を作成し、規制強化を行い、大型店の出店攻勢に歯止めをかけること。

 地域商店街の振興のために大型公共駐車場などを整備し、商業者の努力を支援するために財政資金も思い切って投入すること。

(4)長期失業者に府独自の職業訓練、長期失業者への特別生活支援制度を行うこと。親の失業、倒産などで子供に負担がかからぬよう、特別の奨学金制度を設けること。

一、財政再建はそれで儲けた大企業の負担で、ツケを府民に払わせるのは筋違い

 財政危機を理由に、府民生活への犠牲転嫁が進められています。老人医療費助成金の削減、六千五百五十人の職員削減、私学や市町村病院への助成金廃止、民間社会福祉施設への補助金の削減、府営住宅建設費の削減、府立高校入学料や府立スポーツ施設の使用料値上げなど、目白押しです。

 これらの施策の実施は、所得の低迷に加えて、政府の消費税アップ、社会保障切り捨てが進む中で、府民生活に対する大きな打撃となります。また市町村病院への助成金廃止などは、住民サービスを維持しようとする各市町村自治体に犠牲を押しつけるもので容認できません。

 財政赤字の犠牲を府民に押しつける前に、まずこれまでの開発政策の徹底した見直しが行われるべきです。

 また「泉佐野コスモポリス」の経営破たんに関して知事のとるべき態度は、開発事業の破たん処理にさらなる府民負担を強いることではなく、これまで府が進めてきた開発プロジェクトに関するあらゆる情報を公開し、解決の方途を府民とともに探る真摯(しんし)な態度です。

 以上のことから、

(1)老人医療費削減など府民生活に深く関わる助成金は継続すること。

(2)「泉佐野コスモポリス」事業への裁判所の調停案は拒否し、解決に向けた府民合意の形成に真剣に取り組むこと。

(3)採算が疑問視される開発事業は白紙撤回し、今後の都市再開発を完全な住民発言の保障と住民合意の形成、地域住民主体に切り替えること、を求めます。

一、バランスがあり、地域商工業と労働者・府民の活力が生まれる府政に転換を

 これまでの府政は、主要に近畿の財界が立案・推進した「すばる計画」と、その大阪府版ともいうべき「大阪府新総合計画」をベースにして進められてきました。

 その下では、府民大多数の生活と府民が暮らす地域は放置されてきました。商店街はさびれ、大工場は海外移転でなくなって空洞化が進み、下請け企業には仕事がなく、企業倒産とリストラで失業者が増えています。

 先頃提案のあった「財政再建プログラム」には、これまでの政策を検証し、再建のありようを示す長期的な視点がどこにもありません。

 府政運営の基本的な方向として、府民の多数を占める中小製造業、地場産業、地域の卸・小売業を重視し、その力を引き出し発展させる産業政策を推進し、バランスある地域政策を行う中で、府民大多数の活力を育てる観点が求められています。全国的にも落ち込みの激しい税収は、その中で長期的に解決を図る以外にありません。

一、アジア諸国との友好促進、新ガイドラインへの協力拒否の姿勢を(略)

一九九八年三月六日


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