980225


98春闘

断固たる闘いにこそ活路

財界の「ベアゼロ」攻撃うち破れ


 九八春闘は、大手組合がすでに賃上げ要求などを提出し、三月十八日をヤマ場に本格化しようとしている。経済危機を背景に、支配層は低賃金、リストラ、また「六大改革」などの攻撃を強めている。しかし国民各層の不満は充満している。国民の抵抗の前に改革政治は挫折しつつあり、アジア危機の波及で橋本政権の危機は深い。確固として闘えば労働者が前進できる情勢である。国民各層と連携し、生活と権利を守るために労働者の断固たる闘いが求められている。


財界のキャンペーンをはね返そう
 日経連は一月十三日総会を開き、春闘を前にまたもや「ベースアップ・ゼロ」方針を打ち出した。
 財界は、大企業の「国際競争力の維持・強化のため」に、賃上げはできないというのだ。日本は「世界トップレベルの賃金水準」で、それは大企業にとって「高コスト体質」だから是正する必要があるというのだ。そして、企業活動を活性化するため、規制緩和などの橋本の「構造改革」は待ったなしの課題だといっている。結局、財界は賃上げどころか、雇用確保が優先だと「クビ切り」をちらつかせて労働者を脅しているのだ。
 さらに注意すべきことは、日経連が雇用対策に便乗し「労働市場の柔軟化」と称して、裁量労働制、変形労働時間制導入など労働分野の諸規制撤廃を主張していることである。これは「高コスト是正」のため、安い労働力を無権利のままこき使おうという魂胆である。
 つまり、財界にとって最大の課題は、外国企業との「国際的大競争」にいかにうち勝つかということで、そのために労働者には犠牲になれというのだ。「構造改革」が進み、企業が活性化するまで労働者階級は財界の言いなりに低賃金も、リストラも我慢せよというのである。これは、永遠に待てと言うのに等しい。

低賃金、失業、リストラ…
生活条件は悪化の一途

 しかし、労働者の生活実感はどうか。何が世界トップレベルなのか。先進国でも例を見ない過酷な長時間労働、サービス残業や過労死も当たり前の労働現場。低い社会福祉や教育で、賃金労働者の負担は大きい。そのうえバブル後の長期不況である。
 最近の家計調査によれば、労働者の実収入はほとんど伸びず、可処分所得は二・四%減少した(昨年十二月、前年比、勤労者世帯)。その結果、消費支出はついに五年連続のマイナス(全世帯)となった。昨年十二月には、マイナス五・〇%と石油危機後の七四年以来二十三年ぶりの大幅減少となった(別掲)。不況やリストラ、倒産などが続くもとで、人びとが完全に生活防衛にまわっている状況が浮き彫りになっている。
 失業率は、昨年は三・四%、失業者数は約二百三十万人と前年より約五万人増で四年連続で過去最悪を記録した。そのうち昨年十二月の解雇、倒産などによる「非自発的失業者」は六万人増(前年同月比)の六十三万人にも上った。
 他方、多国籍大企業は輸出を中心に大もうけで、例えばトヨタの営業利益は五千八百億円と過去最高となるという(九八年三月期、見通し)。さらに連合の試算によれば、大企業は総額人件費の約一・四倍にあたる約二千七百億円という膨大な別途積立金(主要五十社の平均・別掲)を積み立てている。そのわずか二・一%の原資で連合の賃上げ要求(一万五千円)が実現するという。要するに、労働者には低賃金、リストラなど犠牲を押しつけ、大企業はぬくぬくと膨大な利潤を貯め込んでいるのである。
 まさに大銀行・大企業栄え、労働者亡びる攻撃であり、こうしたやり方を断じて打ち破らなければならない。
 日経連の主張は、まさに多国籍大企業に最も都合のよい理屈である。労働者は「国際的大競争」を錦の御旗とした財界のキャンペーンをうち破らなければならない。敵の理屈にのせられたならば、闘えない。 

中小商工業者と連携し闘おう
 通貨・金融危機に示されるように資本主義の危機が深刻化し、わが国もそのまっただ中にある。橋本政権はすでに財政改革路線が破たんし、窮地に立っている。こうした中で、支配層は犠牲を労働者、国民に押しつけている。
 労働者階級は、大幅賃上げをめざし、首切り・リストラ、労働法制の規制緩和に反対して断固闘おう。連合は昨年、労働法制の改悪に反対して大衆的闘いを開始した。機械金属の中小組合も格差是正の闘いを強めている。
 また、長期の不況と橋本政権の「改革」、規制緩和などによって、全国の中小商店やトラック業界などは、その存亡をかけて昨年から次々と決起集会を開き、立ち上がっている。これまで保守政治の基盤とされてきた階層が立ち上がっているのである。これらの人びとは労働者の闘いにとって「友軍」である。社会保障や中小企業、農業、地方の切り捨て問題など、国民的課題でも労働者階級は広い戦線を形成し、先頭で闘うことが求められている。
 世界でも高失業のフランス、ドイツでは、失業者、労組が職安や銀行を占拠して「職よこせ」と激しい闘いを展開している。
 労働者が大きく前進できる情勢である。雇用も大幅賃上げもかちとるため、確信をもって、九八春闘をストライキを含む断固たる大衆行動で闘い抜こう。


大企業はこんなに貯め込んでいる(大手主要企業50社)
別途積立金
(一社平均)
対総人件費
(福利厚生費除く)
1992年度 2,458億円 -
1993 2,530億円 1.28倍
1994 2,567億円 1.34倍
1995 2,599億円 1.42倍
1996 2,687億円 1.39倍

別途積立金:利益留保を目的とした任意積立金のうち、特定の目的をもたないもの。連合総研が有価証券報告書から試算。


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