980215


98年度予算案

銀行には30兆円、国民生活は切り捨て

大衆的基盤のある国民運動で橋本政権を追いつめよう


 橋本政権は、二月初めの九七年度補正予算の成立に続いて、今国会で金融安定化諸法案、九八年度予算案の成立を図っている。しかし、この予算案は、徹頭徹尾大銀行・大企業に奉仕し、国民には過酷な犠牲を強いるものである。とうていこのような予算案を容認することはできない。今、国民経済に求められているのは、大企業優遇税制を改め、軍事費を大幅に削減し、消費税の即刻廃止、大幅な所得税減税の実施など、国民生活を豊かにすることである。真の内需拡大によってしか冷え切った消費は回復せず、景気の回復も経済の安定もあり得ない。

今や国民の不信と怒りはますます充満するばかりである。


 橋本政権は、二月初めに九七年度補正予算が成立したのを受け、金融システム安定化関連法案の早期成立と九八年度予算案の成立をもくろんでいる。すでに一月に国会に提出された九八年度予算案は、総額七十七兆六千六百九十二億円(一般会計)で〇・四%増(九七年度当初予算比)規模。

次々と国民へ負担増

 九八年度予算案は、昨年十一月に成立した財政構造改革法でいう「財政改革」実施の初年度と位置づけられている。そもそも同法のねらいは、九八年度から三年間にわたり、国民生活や中小業者などの営業にかかわる社会保障、公共事業、教育、農林水産、中小企業対策、人件費、補助金などの分野を特定し、各分野ごとに切り捨てる予算額目標を定め、「財政健全化」を図ろうというものである。

 したがって、九八年度予算案の内容は、大銀行、大企業を手厚く優遇する一方で、国民生活や中小企業、農業分野などを冷酷に切り捨てる、きわめて反国民的な内容となっている。

 予算案の第一の特徴は、大銀行・大企業を何よりも優遇している点である。その典型は、金融安定化二法案によって大銀行支援に三十兆円もの国費(税金)を投入しようとしていることである。

 大銀行のためには国債も増発し、膨大な国費を使い、財政改革を事実上放棄しておきながら、国民には「財政再建」のために負担を強いるなど、政府のいう「財政構造改革」のぎまん性は明らかである。

 また約三千六百億円にのぼる法人税減税、有価証券取引税の軽減、地価税凍結などによって、大企業に恩恵をもたらしている。

 第二に、今後数年間にわたり国民生活に多大な犠牲を押しつける点である。例えば、現在の社会保障水準を維持するのに必要な自然増約八千億円から約五千億円もカットした。そのために、高齢者入院費の値上げ、国民年金保険料引き上げ、母子家庭児童手当の約七万四千世帯分削減などが目白押しである。教育関係では国立大学授業料、高校授業料値上げなどを計画。九七年は過去最悪の失業率で約百三十万人が失業しているにもかかわらず失業対策関係予算は増額するどころか、〇・一%も減額された。

 第三の特徴は、中小企業、農業、地域の建設業などに大打撃を与える点である。昨年の倒産は一万六千件(負債一千万円以上)を超えて負債総額は過去最高となり、さらに統計に表れない倒産・廃業は数知れない。中小企業がこうした深刻な経営危機に直面していても、中小企業対策費は〇・四%減のわずか千八百五十八億円にすぎない。これは一般会計総額に占める割合がわずか〇・二三%と、十五年前の半分以下である。

 農林水産関係予算は三兆三千七百五十六億円で六・〇%減と、過去最大の削減額となった。九八年産米政府買入価格を二・五%引き下げ、九八年・九九年産米の減反面積を過去最大の九十六・三万ヘクタールに拡大して、農業の経営危機をいっそう深刻化させようとしている。

 公共事業は、一般会計では七・八%減額の八兆九千八百五十三億円。国・地方とも公共事業はいずれも減額となっており、地方の中小建設業には大きな打撃となるのは必至である。公共事業への依存度が高い青森などの東北、高知などの中四国、佐賀、鹿児島などの九州と地域経済への影響はとりわけ大きい。

 農業で食えない農村地域での産業と雇用対策を何ら示さないまま、公共事業の一律カットを実行することは、地方に死ねと言うに等しい。

 第四の問題点は、軍事費をほぼ温存している点である。軍事費は四兆九千三百九十六億円で、わずか〇・二の減。在日米軍への「思いやり」予算は二千五百三十八億円と膨大である。

国民の不信と怒りは充満

 すでに、長期の不況、民間や官公部門でのリストラ(行革)、「改革」・規制緩和などによって労働者の雇用、賃金などが劣悪化し、中小零細企業や農業も経営が危機にひんしている。そのうえ、前述のような「財政改革」による犠牲が加重されるのである。それは、国民に耐え難い苦難を強いるであろう。

 また一般歳出での初の一・六%の削減となる地方財政も深刻となる。市民サービスも低下し、国と地方自治体との矛盾も深まらざるを得ない。

 国民の怒りは、すでに限界である。この怒りを行動に変え、国民の敵、橋本政権を打倒しなければならない。労働者階級はその先頭に立とう。街頭に出て、中小商工業者や農民など諸階層に呼びかけて、行動を組織しよう。

 大衆的基盤のある壮大な国民運動を構築し、橋本政権を追いつめよう。


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