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 沖縄から日本を考える

青年・学生が沖縄を考える全国ネットを発足


 沖縄独自の文化や歴史、基地問題に関心を持つ青年・学生が情報交換や交流の場として「沖縄を考える全国ネットワーク」を発足させた。全国の大学で沖縄についての写真展を開催してきた学生たちが中心になり、「意見の違いを超えて沖縄の問題を日本全体の問題として考えよう」と呼びかけたもの。十月二十六日に東京YMCAで二十大学から百人以上が参加して行われた「発足の集い」から参加者の発言を紹介する。


沖縄から 砂川かおりさん(琉球大学大学院生)

 「沖縄環境ネットワーク」や「行動する女たちの会」などで活動しています。環境問題については、基地を抱えている地域では、沖縄でもどこでも、化学物質などで汚染されています。砲撃演習などによっておこる山火事、油の流出、放射性物質の投棄、文化財の破壊、騒音被害などの問題もあります。
 その他の問題では、米兵との交通事故の場合、公務外の事故では加害者の米兵に補償能力がない場合は救済措置が全くありません。それから性犯罪。九五年の事件が初めてではなく、戦後五十年間ずっとありました。土地の強制使用の問題では、特措法改悪で国家によって土地が取りあげられるという状態です。
 司法では県知事の代理署名拒否訴訟が敗訴になりましたし、行政では振興開発特別措置法に基地を返還することが項目にあるのに、実施されていません。司法でも行政においても問題を解決する糸口がつかめていないと思います。
 県外の新聞には沖縄の問題は小さな記事でしか扱われず、情報が伝わっていない。これは意図的になされているのではないかと感じています。
 アメリカのアーティストが沖縄の基地問題について東京で展示会をした時、スポンサーの都と文化庁に「基地のある地域の人が基地に反対するかも知れないので、ショッキングな情報は伏せたい」と言われたそうです。これは主権者を取りまちがえているのではないかと思います。
 新ガイドラインはアメリカでは「戦争マニュアル」として報道されてます。かりに戦争になったら多くの米軍基地がある沖縄が被害を受けます。
 沖縄戦でかなりの被害を受け、戦後五十年間基地を受け入れてきました。もしも「国のために仕方ない」というなら、その役割は十分担ったはずです。これらの問題を解決するために本土の人も考えるべきだし、責任があると思います。
 「過去に目を閉ざす者は未来についても盲目である」という言葉があるように、過去をしっかり見て、将来を考えていくということが私たちに必要なことだと思います。


全国の学生から

◇少女暴行事件後、地方から訴えを起こして国を動かしていくという今までにない動きに、沖縄に対する興味が高まりました。インターネットのホームページで沖縄問題への意見などを発信している。この会でも沖縄について新聞などと違う側面から、日本中、世界中に発信していきたい。(熊本大学一年)

◇社会問題を足元から考えていかないといけない。沖縄の問題を、「自分がその状況に立たされたらどうするか」を基本に考えていきたい。(一橋大学四年)

◇去年の県民投票の際に高校生県民投票の活動をして、市民が意思表示することで、問題解決へ一つ前進できると自覚した。県民投票で政府も沖縄に目を向けるようになった。この会をみんなで集まって大きな力にして意思表示をする舞台としたい。(大学一年・浦添市出身)

◇「GAMA―月桃の花」の上映会を大学で準備している。本土の人間でも、同じ国民、同じ人間として沖縄の問題を考えたい。(中央大学三年)

◇沖縄でおばあさんから、今でも(戦争を思い出して)時代劇の日本刀が見られないという話を聞きました。若者は真実を知らなければいけないと思う。(東海大学一年)

◇沖縄から、朝鮮・ベトナム・湾岸戦争に米軍機が飛んでいった。基地から被害を受けるだけでなく、加害者にもなる。新ガイドラインが出されて、目の前から戦闘機が飛んでいくことがありうることを考えるといてもたってもいられない。会の中で自分の感じていることを出し合っていきたい。(音楽大学四年・本部町出身)

◇沖縄の写真展を大学でやってきた。アメリカの世界戦略、新ガイドラインの中で米軍の基地がどうなっていくかを考えていきたい。新ガイドラインと平和憲法を考える講演会を準備している。(千葉大学大学院)


沖縄を考える全国ネットワークの呼びかけ(一部)

 少女暴行事件を契機に、戦後長らく米軍基地をかかえてきた沖縄に注目が集まりました。「アジアとの平和的な国際交流の拠点へ」と沖縄を再生していこう、という気運が高まっています。青年・学生からの関心も高まっています。
 実際、沖縄を考えるさまざまな企画が学園祭などで行われるようになっています。しかし、相互のつながりはなく、個別の努力に任されているようです。
 私たちは未来を担う世代として、沖縄県の独自の文化や歴史、また米軍基地の実際について理解を深め、世論に訴えることの必要性を感じています。沖縄に心を寄せる全国の青年・学生による緩やかなネットワークとして、「沖縄を考える全国ネットワーク」をつくることをよびかけます。全国各地で沖縄に対する関心を高め、いわゆる「沖縄と本土との温度差」を縮めることにも役立つことでしょう。
 意見の違いを前提とした緩やかなものですが、以下の点を確認事項とします。◎基地のない沖縄をめざす ◎アジアの平和拠点としての沖縄 ◎環境保護 ◎独自の歴史や文化の尊重 


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