971105


 景気の悪化深刻、政府への不満増大

各層は連携した闘いを


 日本経済は、本年度の国内総生産(GDP)の「ゼロ成長」が予測されるように景気がいっそう悪化し、国民の消費の冷え込みは深刻化している。消費がここまで落ち込んだ背景には、消費税引き上げや特別減税廃止、医療費負担増という約九兆円の国民負担増があると指摘されている。これら負担増は、まさに橋本政権のおし進める「改革」絡みのものである。橋本政権のおし進める行財政改革、規制緩和などの「六大改革」に対し、自民党内部からも反対が噴出、郵政三事業の民営化などはざ折の浮き目を見ようとしている。景気悪化のもとで、国民の不安感、橋本政権に対する不信感はますます蓄積するのは必定である。規制緩和、消費悪化の二重の打撃で危機的状況に直面する全国の中小小売商は今月中旬、「怒り」の総決起大会を開く。小売業、医療関係の怒りの声を紹介する。


大店法の規制緩和やめよ

小売市場代表 大阪

 一般小売業全般は、百貨店・スーパーと同様、消費税引き上げ頃から一段と景気が冷え込んでいる。町の商店は、スーパー・百貨店の売上げ減よりさらに二、三%低いのが実情ではないか。お客さんは、「無駄のない生活」ということで、少量購入を心がけているようだ。今は食品ですら購入を抑えている。食品の落ち込みは、景気悪化の最終段階にくるものだが、いよいよきたかなという感じがある。
 国民は、特別減税廃止、消費税引き上げ、医療費増など、取られる一方であり、実質可処分所得は大きく減っている。どの業界もリストラ、自助努力は必死にやっているが、そのあげくにこんにちの苦境である。だから、景気浮揚のために、政府は減税などの手を打ってもらいたい。中小企業に対する資金援助など、抜本的な手段を講じてほしい。
 大型店の出店は、これまである程度阻止してきた。しかし大店法緩和に向けた新たな出店などにより小売りの競争も激化したので、消費悪化に輪をかけた厳しい環境にある。大店法緩和問題では、大きな資本と小さな資本が同じ土俵でやることにそもそも無理がある。規制緩和には反対で、われわれは全国小売市場総連合会を通じて政府に意見具申した。
 商店はどんどん廃業しており、従来のものが壊されている。資本主義経済の中でやることだから、これは当たり前なのかもしれないが、もう少し町や村の中で占めてきた商店街の役割などを、原点に返って対応してもらいたい。政治も何とか方向を変えてもらわないと困る。

今の政治の方向正すべき

松実和裕・川崎市商店街連合会副会長

 四月以後、商店街の売り上げが落ち込んでいるが、それは国民の心理的なものもあろう。安心して金を使えず、財布を開けたくない気持ちになっているのは、政治の責任である。戦後、経済効率を求めて走り続けた方向が、現在問われている。方向が軌道修正に入っているが、先行き不透明だ。政党は国政では離合集散があるが、地方選挙では同じ穴のムジナとなる。これでは国民に分かりにくい。国民の側も政治に期待していないので、選挙で棄権が多いし、どうでもよいから選挙に行かないという無関心層もかなり多い。いずれにせよ政治の方向を直さなければだめだ。やはり数は力なので、一人ひとりがそういう気持ちになる必要がある。

医療費負担増は老人いじめ

河野雪子さん(熊本・看護婦)

 うちの病院はベッド数約二百だが、九月から窓口では新しい医療費について質問する患者が多かった。うちの病院の場合、外来患者が多い時期を一〇〇とすると、医療費負担増の九月以後は八〇になったという。働いていると、九月から極端に減っていることが分かる。
 皆、医療費を抑えているようで、検査の必要をいわれても拒否する人も出てきている。薬代の自己負担増も非常に大きい。老人は薬三種類以上で負担が増える仕組みだが、老人は多くの病気を抱えているので七、八種類も必要だ。一回の受診で五百円なので、電気での治療に毎日来たりすると、すぐ月四回以上になってしまう。従来は薬代含めて外来千二十円だったのが、薬代を除いて二千円になった。
 老人医療費は現在定額制だが、将来定率制も検討されている。さらに一割負担ともなれば、老人は若い人と違って病気が一種類でないので、医療費がそうとうかさむ。特に入院した場合は厳しいだろう。このまま医療費負担をどんどん進められたら、本当に老人いじめとなる。
 そのうえに二〇〇〇年から介護保険が導入されれば、保険料は医療・介護保険合計で大変な額になる。
 本来高齢者は自然に増加するので、当然医療の国庫負担は増やすべきなのに、それを抑えているのがおかしい。国庫支出を増やさず、現在の医療水準を維持しようとすれば患者らに負担を求めることになる。政府はさらに国庫負担を下げようとしている。そんなひどい話はない。
 病院経営の面からみても、どこも経営が苦しいので、これ以上患者が減れば赤字病院続出となるのではないか。うちの病院経営も最近ついに赤字になったということで大騒ぎになっている。

老人医療費が2・8倍に

高山啓太郎さん(福岡・年金生活70歳)

 私は、長年のぜんそく、肺気腫、不整脈などの病気を抱えている。七十歳以上の老人医療は、初診料は従来千二十円だったのが、九月から一回五百円で、計四回までで二千円。つまり初診料が倍になった。薬は一回三種類以上の場合、私は四種類もらって、一回(二週間分)につき四百三十円で月に二回なので、計八百六十円。初診料と合わせて二千八百六十円となる。九月以前は、すべてで千二十円で済んだものが、約二・八倍になったわけだ。さらに将来、医療費引き上げ案があるようだが、絶対許されない。値上がりしたからといって、病院に行かないと逆に大変なことになるので、健康管理しながらきちんと通院している。病院の待合室では皆、今回の値上げについてブツブツ言っている。特に年金生活者は不満が強い。見ていると、病院に来る患者が減ったようだ。地元医師会も患者が減るので、値上げには猛烈に反対した。 


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997