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 介護保険の早急な導入反対

一番ヶ瀬康子氏らが集会呼びかけ


 「もっとよく知ろう、公的介護保険―みんなで語ろう、福祉の未来」集会が東京都杉並区で十月八日、開催された。主催は一番ケ瀬康子氏(長崎純心大学教授)、中川晶輝氏(医師・全国老人福祉問題研究会会長)など二十四氏の呼びかけによるもの。
 まず中川氏が「私は、四年前まで特別養護老人ホームの施設長をしていたが、公的介護保険についてはよくわからない。なぜなら政府は中身を教えようとしない。今日は公的介護保険の実際について、講演を受けてみんなで考えよう」と開会のあいさつを行った。
 続いて、鈴木恂子氏(特別養護老人ホーム・信愛泉苑苑長、現場から公的介護保障を考える会)が講演を行った。鈴木氏は「公的介護保険の肝心なことは知らされていない。たとえば、保険料を払っていれば、誰でも介護が受けられるようにいわれている。しかし、実際には七十五項目にもおよぶチェックによる第一次判定があり、その上で専門家による第二次判定がある。昨年東京で実施されたモデルでは第一次判定と第二次判定の違いが約四割もあった。これでは正しい介護サービスが受けられるか疑問だ。しかも、介護認定が三十日以内に行われるが、その後自治体に介護請求し、実際に介護を受けられるまでに一カ月半はかかるのではないか」と問題点を指摘した。
 さらに「介護サービスを受ければ、保険料以外にも一割が本人負担になる。介護保険が行われるとホームに入所している人はだいたい年九十六万円の負担が必要になる。ところが入所者の七五%が年収百万円以下、半分は五十万円以下である。貧しい高齢者はサービスを受けられない。福祉に貧富の差が持ち込まれる。これは老人福祉法の精神に反するものだ」と批判した。
 そして鈴木氏は「厚生省は民間活力の導入をいうが、企業が福祉に参入すれば、どうしても利益があがるように介護が行われる。これでは福祉の質が変えられてしまう。また、厚生省は『十分なサービスにはインフォーマルなサービスの組み合せ』を主張するが、要するに家族に負担させることが前提になっている」と述べた。
 その後、ホームで働く職員や主婦などからさまざまな質問が出され、討論が行われた。
 最後に「公的介護保険制度の性急な導入に反対し、国民の、国民による、国民のための制度をつくるため、十分な時間をかけ討論すること」とした本集会の申し合わせを、参議院厚生委員長に提出することを全員の賛成で確認した。集会は用意したいすが足りないほど盛況で、介護保険問題についての人びとの関心の高さを示した。 


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