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新ガイドライン 有事法制反対

広範な国民的運動を盛り上げよう

各界の人びとが新ガイドライン反対で活発に議論(東京)


 新しい日米防衛協力の指針(ガイドライン)とその具体化で、米軍使用の候補とされた民間港湾や空港をかかえる地域では、不安と危惧(きぐ)が広まっている。そして、それに反対する行動が次第に展開されている。自主・平和・民主のための広範な国民連合は、新ガイドライン決定の九月二十三日前後から、福岡、東京など各地で、関係自治体に対する申し入れや宣伝活動などを積極的にくり広げている。また最近、東京では弓削達・東大名誉教授や憲法学者の星野安三郎氏ら十六氏の呼びかけのもと、この課題でシンポジウムが開かれた。このような各界の人びとが連携して事の本質を知らせ、世論を喚起することは、国民的運動を次第に構築していくうえで、非常に重要な取り組みである。これらの闘いを手始めとして、よりいっそう地域や職場で、大衆行動を組織していくことは急務である。 


 シンポジウム「なぜ見直す?日米防衛協力の指針」が十月十二日、東京・全水道会館で開かれた。これは、九月の新ガイドライン策定を憂える弓削達・東大名誉教授や憲法学者の星野安三郎氏ら十六氏(別掲)の呼びかけと八十二人の賛同により開かれたもの。新ガイドライン策定後、学者、宗教者、労組委員長、国会議員など、広範な人びとの呼びかけによる初めての集いとなった。
 シンポジウムでは冒頭、森井眞・明治学院大学名誉教授が主催者を代表して、「ガイドライン見直しの経過からすると、日本政府は国民を思いやる以上に、米国というご主人の『番犬(在日米軍)』を思いやっている。わが国は周辺有事に備えるのではなく、アジア諸国民との相互理解、相互信頼を生み出す環境をつくるべきだ。われわれと同じような憂いを持っている人が、全国に多くいる。皆、心を合わせて大きな世論を作り出すような集会にしたい」とあいさつを行った。
 シンポジウムでは、パネラーである前田哲男・東京国際大学教授、由井晶子・元沖縄タイムス編集局長、姜尚中・東京大学社会情報研究所助教授の問題提起が行われた。
 前田哲男教授は、米国の「ナイ報告」に沿って昨年の日米安保共同宣言と今回のガイドラインが作成された経過を説明し、「新たな脅威を設定し、『周辺有事』で日米が四十項目にも及ぶ軍事協力をすることに、新ガイドラインのエッセンスがある。もはや六〇年安保体制とは別のものになった」と指摘した。
 由井晶子氏は、沖縄における米軍の蛮行や日本政府による一貫した沖縄犠牲策、祖国復帰の経過を述べたのち、新ガイドラインについて、「沖縄は新しい危険に巻き込まれる不安感に満ち、揺らいでいる。全国で大きな運動を起こさない限り、沖縄の現状は変えられない」と訴えた。
 姜尚中助教授は、今日のガイドラインに至る大平、中曽根政権以来の「国際貢献」論の経過を説明し、「ガイドライン見直しの経過は、もはやクーデターだ」と指摘、「八・一五を導いた教訓を政治家は学んでいない」と批判した。
 会場からは、星野安三郎(憲法学者)、竹岡勝美(元防衛庁官房長)、野田英二郎(日中友好会館副会長、元インド大使)、奈良本英佑(法政大学教員)の各氏らが、それぞれの専門の立場から新ガイドラインについての見解を述べた。

海員、航空労組が反対を表明

 特に、人員、物資の輸送などに動員されるおそれのある海運、航空の労働組合の発言は、きわめてリアルなものであった。井出本榮・海員組合副組合長は、太平洋戦争で多数の海員が犠牲になった経験から、「われわれの活動の基本は、平和の海の確立にある。ペルシャ湾での紛争でも、安全航行に非常に苦労した。日本がかつての過ちの方向に進もうとするならば、われわれも反対の姿勢を示したい。皆さんも世論を盛り上げていただきたい」と訴えた。パイロットなどがつくる航空労組連絡会(組合員約一万六千五百人)の参加者は、最近米軍を沖縄から移送した航空業界の実際から、「日本の空はすでに軍事優先となっており、ガイドラインによれば、航空関係も輸送、補給、整備、非戦闘員すべてが巻き込まれる。こういう問題は、民間航空として契約関係にないという立場で反対してきた」と表明した。この集いは、新ガイドラインの本質と危険性を伝え、世論を喚起するうえで非常に意義あるシンポジウムとなった。

シンポジウム呼びかけ人

一番ケ瀬康子・長崎純心大学教授
今村直・キリスト者政治連盟書記長
大島孝一・日本キリスト教協議会靖国神社問題委員会元委員長
片岡健・広範な国民連合東京代表世話人
河本末吉・全日本港湾労働組合委員長
儀同保・弁護士
島田政雄・日本中国友好協会全国本部顧問
関寛治・東京大学名誉教授
照屋寛徳・参議院議員
中川晶輝・日本友和会理事長
中西昭士郎・全日本海員組合組合長
濱田健一・衆議院議員
星野安三郎・立正大学名誉教授
槙枝元文・日中技能者交流センター理事長
森井眞・明治学院大学名誉教授
弓削達・東京大学名誉教授・フェリス女学院大学名誉教授


広範な国民連合

各地で要請、宣伝に 取り組む

 自主・平和・民主のための広範な国民連合は、新ガイドラインが発表された九月二十三日を前後して、新ガイドライン・有事法制に反対し、また民間港湾・空港提供などに反対する宣伝や関係自治体への申し入れなどを、各地でくり広げた。こうした運動は、新ガイドラインの狙いと危険性をいち早く宣伝し、国民的運動を盛り上げていくうえできわめて重要なものである。
 東京では十月九日、都知事に東京港の米軍使用拒否を求める要請を行った。
 愛知では九月十八日、名古屋港管理組合組合長(名古屋市長)に、港湾共用問題についての申し入れと公開質問状を提出し、当局と面談した。公開質問状では「名古屋港が米軍基地のようにわがもの顔で使われ、民間船舶の航行や安全が阻害され、周辺の住民は事故や騒音に悩まされる恐れがあります。名古屋港が軍港化し、人殺しの発進基地となり、その補給基地となることを絶対に許すことができません」と要求している。
 三重では新ガイドラインが発表された翌日の九月二十五日、県知事と県議会議長に反対を申し入れた。
 大阪では発表当日の九月二十四日、大阪港と関西空港の提供に反対して、府知事、府議会議長、大阪市長、大阪市議会議長に申し入れ、街頭宣伝も行った。
 松山港が米軍使用の対象として検討されている愛媛県の国民連合懇談会は九月二十四日、新ガイドラインに反対する決議を求める陳情書を県議会に提出した。
 福岡では九月十二日、県知事、福岡市に申し入れ、二十六日には県庁、芦屋、飯塚、久留米を重点に県内キャラバンによる宣伝を大々的に展開した。


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