970915


ニュージーランドは反面教師

規制緩和反対のシンポジウム−−内橋克人氏らが報告


 「労働分野の規制緩和に関するシンポジウム」が九月七日、東京ウイメンズプラザで開かれた。この集いは、「ニュージーランドの経験から学ぶ」というタイトルのもと、ニュージーランドの規制緩和の経験に学ぼうと、同国から大学教授を招いて開かれた。主催は東京ユニオンなどによる実行委員会で、協賛は日本労働弁護団。
 最初は、日本、ニュージーランド両国の研究者からの報告として、評論家の内橋克人氏が日本の規制緩和の実情と問題点を述べた。ついで、ケルシー・オークランド大教授がニュージーランドの実態を説明。
 内橋氏は、まず規制緩和を主張しないとあたかも「国賊」とみなされるような現在の日本の風潮を厳しく批判した。政府は、規制緩和という「薬の効果」を盛んに宣伝するが、その「副作用」をいっさい明らかにしないと指摘。そして、経済活動のなかで力に大小があるので、それを前提とした公正な競争の社会にするため、社会的調整は大事だと強調、盛岡、鹿屋(鹿児島県)など自ら全国の商店街を調査した実態の報告とそこでの運動を紹介した。そして、雇用・労働問題など個別問題だけ取り上げるのではなく、規制緩和の全体像をとらえないと、反対する側に限界が出てくると指摘した。
 ケルシー教授は、内橋氏の話に対して「どこかで聞いた話だ」とユーモアをまじえ共鳴を表した。教授は、経済分野、政府のスリム化、労働市場、金融、財政抑制というニュージーランド政府による規制緩和の五つの主な政策を報告。その結果、労働者の賃金の大幅切り下げ、食糧配給が増大している貧困問題、社会保障の切り捨て、労働者の権利を奪う新労働契約法などの大きな社会問題が発生していることを紹介した。
 ついでパネルディスカッションが行われ、内橋、ケルシー氏のほか、ニュージーランドを視察した中野麻美弁護士、大脇雅子参議院議員がそれぞれ問題提起を行った。
 このシンポジウムでは、規制緩和の「先進国」イギリスで、五百人の解雇の撤回を要求して闘っている、来日中のリバプールの港湾労働者によるアピールも行われた。
 シンポジウムは、ニュージーランドの規制緩和の生々しい実態を学ぶ場となり、日本がそのような道を進まないようにすることを確認し合う場となった。


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