970915


群馬 ちょっと待った介護保険 県民の集い開催

築きあげた福祉なくなる


 群馬県前橋市で九月七日、「ちょっと待った公的介護保険・県民の集い(2)」が、同実行委員会の主催で開かれた。集いには県内各地の医療福祉現場の人たち、ホスピスケアの運動や障害者福祉にかかわっている人、地域でボランティア活動をしている人、退職者団体や高齢者などが参加し、五月に開催した第一回(労働新聞第七六八号既報)にくらべ、運動の輪の広がりを示すものとなった。
 
 講演にたった特別養護老人ホームやまと苑施設長の武田恵氏は、「なぜ介護保険に夢中になって反対するのか、それは戦後五十年たゆまぬ努力でつくりあげ守ってきた福祉がなくなってしまうからです。お金の問題だけではなくて、福祉現場の職員の心からも福祉が追い出されるんです」と指摘した。

 氏はさらに「福祉現場で働く私たちの仲間は損得にはうとくて気のよい人が多い。お年寄りの笑顔を力に安い給料できつい仕事でもがんばるんです。福祉にたずさわるときまず教わるのが憲法二十五条の生存権です。この権利を守るために働く仕事だと教えられてきました。しかし、介護保険では、権利を守るための仕事ではなく、金もうけのための仕事だというふうに変わります。職員とお年寄りの心が通いあって初めて生活が成り立つわけですから、どうなってしまうのか大変心配です。介護保険では、おむつ交換とかの介護だけにサービスが限定されています。だが介護されるだけで、一日中天井を見ていれば人間は生きる意欲も心も失ってしまいます。お年寄りには生き甲斐、生きている楽しみが必要です。このことをいくらかでも保障するために、いただく措置費の中身をやりくりし、職員も仕事の中身や人手不足や労働条件の厳しさをいろいろ工夫してきました。介護保険ではこれらがすべて自費になります。お年寄りには年金月額三〜四万円という人も多いんです。この人たちに最低でも八〜九万円の自己負担をどう払えというのでしょうか。施設も職員の首を切るか給料を大幅に削るかしかなくなるんです」と、特別養護老人ホームの現場の報告を行った。

 集会ではその後討論に移り、「もっとさまざまな手段で行動を」(保健婦)「だまされていたという怒りでいっぱいです」(退婦協役員)「こんなひどいことができるんですか」(高齢者)「生活に気を配ったり、介護もおむつ交換をこまめにやったりと努力してきました。この努力を踏みにじる介護保険には大反対です」(特養施設長)などの意見が出された。

 最後に、集会決議「ちょっと待った公的介護保険」を採択し、目前に迫った参議院での審議で、法案が可決されないよう各方面に働きかけていくことを決めた。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997