970905


福祉の後退は許さない

東京・荒川 公的介護を考えるつどい

国民的議論を呼びかけ


 「公的介護保険法案」は六月、衆議院で可決され、参議院では継続審議となっている。現在、その内容が明らかになるにつれ、社会福祉施設や医療機関の現場、高齢者団体など国民の関心は高まっており、同時に介護保険法案は福祉理念を切り捨てるものという反対の声が高まっている。
 こうした情勢のもと、荒川区で八月二十三日、「みんなで考える公的介護保険、緊急・区民のつどい・2」が、七月十二日開催した同名のつどいの継続集会として開催された。つどいには、荒川区民を中心に、医療、福祉、介護に携わる人びと、民生委員、自治体職員、区議会議員など多数が参加、公的介護保険問題に対する関心の高さを示した。
 「今審議中の公的介護保険法案の内容説明と問題点」と題して、信愛のぞみの郷施設長の大塚幸雄氏は、東京都社会福祉協議会が発行したパンフレット「介護保険制度とは…」を資料として「誰もが必要となる高齢者介護は、税金による公費のうえに介護保険料が導入される。さらに、要介護の基準に応じた利用金額の一割を高齢者の患者負担とするというもので、所得が少なく、行き場のない高齢者にきわめて重い負担となる」「多様なサービス提供団体が参入し競争原理、そろばん勘定によって重度、低所得の患者が敬遠されるのではないか」などの問題点を提起した。
 みやまえ訪問看護ステーション所長の河内ひとみ氏は「法案の経過・背景および全国の自治体や議会などの動向報告」を行い、「法案の名前にごまかされてはいけない。負担増、有料化を招くだけで福祉の精神を容赦なく切り捨てるものであり、これは福祉の後退である。自治体にとっても、事務経費の発生、サービス基盤の整備、保険料徴収の問題、窓口の混乱や認定されなかった方々(都の調査では、四割の利用者が従来のホームヘルパーなどのサービスから漏れるとされている)への対応など、議論すべきことがたくさんある。荒川区など地方議会から慎重審議を求める声があがっている」ことなどを報告した。
 発言にたった医師は、問題点として「負担は増えるが、サービスの内容がどうなるかわからない。法案には、二百八十八におよぶ項目を政令、省令、委任で決めるとしているのでどのようになるかはっきりしない。各機関にサービス提供の基盤ができていない。都の医師会にしてもケアマネージャー育成を始めた段階であり、問題に気づき始めたところである」「この制度が導入されると、広い敷地があり、安い人件費でないと維持できない。療養型でない病院は淘汰(とうた)され、存在できないことになる」と述べた。
 また参加者からは「健康で文化的な生活を保障するとして六〇年代から整備されてきた福祉が、今後も維持されるのか不安である」などの意見があいついだ。
 国家財政の赤字を福祉にしわ寄せするという介護保険についてもっと勉強し、性急に押し通そうという政府の動きを止め、「焦らずに良いものをつくっていきたい」などの発言を受けて「法案の国民的議論を呼びかける」とともに、性急な導入を行わないよう求める「共同メッセージ」を各界に発することを確認して終了した。


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