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さらに国民世論を盛り上げよう

日中関係の揺るぎない発展を

大阪で「新時代の日中関係」シンポ

中江元中国大使 衞藤前亜細亜大学長らが問題提起


 日本・中国両国の友好関係の発展は、わが国の平和な進路、繁栄にとって、またアジアの平和と共生にとっても重要である。しかし、今秋以後には日中両首脳の相互訪問が確定しているものの、両国関係の破壊をもくろむ策動がひき続いている。「日華議員懇談会」結成、国会議員の尖閣諸島上陸、日米防衛協力のガイドラインの中間報告などである。おりしも大阪では、「新時代の日中関係」をさぐるシンポジウムが開かれた。これは、呼びかけ人に見られるように、政界、経済界、労働界、女性、日中友好運動など各界の人びとが共同して取り組んだものである。日中関係破壊の策動に反対して、国民世論を盛り上げ、日中関係を長期に確固として発展させるうえできわめて大きな意義を持つものである。この時期、こうした取り組みを各地に広げ、さらに国民世論を高めなければならない。

 「日中国交正常化二十五周年記念―シンポジウム・新時代の日中関係」が六月二十一日、大阪市内において開催された。

 このシンポジウムは、現在の閉そくした日中関係を打開し、長期にわたる揺るぎない信頼関係をきずく方向をさぐり、その実現に向けた世論を高めることを目的に開かれた。後藤田正晴・日中友好会館会長、中山太郎・元外相など十一人(別掲)の呼びかけで、賛同人をつのり実行委員会が主催した。また大阪府、大阪市、関西経済団体連合会、大阪商工会議所などが後援。

 シンポジウムは、中江要介・元駐中国大使、衞藤瀋吉・前亜細亜大学学長(東京大学名誉教授)をパネラーに、歴史認識、尖閣列島、日米安保の各問題などをめぐり、約二百人の参加者によって活発な討論が行われた。

 最初に岡本知明・大阪国際平和センター理事長が主催者を代表して、開催にいたる経過を説明。ついで劉知剛中国総領事、中馬弘毅衆議院議員、北川石松・元環境庁長官が来ひんのあいさつを行った。また、左藤恵衆議院議員や中山正暉衆議院議員など、多くの国会議員や大阪府議会議員の祝電も紹介された。

日中関係の現状打開を強調

 討論に先立ち、木村一三・日中経済貿易センター会長が、呼びかけ人を代表して、「現在の日中関係は、晴れ間が見えるきざしもあるが、曇りっぱなしの状態だ。この数年が日本の進路を決すべき重要な時期だが、このままでは大変なことになる。日米中の相互関係の中で、日中関係は一番もろい。日本の外交は米国に左右されることなく、日中関係が米中関係に影響を与える状態をつくること、さらに東南アジアも含めた総合安保体制の中心に日中両国が存在することが必要である。最低限、日本政府が中国に約束したことは必ず実行するよう、民間から世論を高めていきたい」との問題提起を行った。

 続いてパネラーをまじえた討論に移った。中江要介氏は、「二十五年前は冷戦の時代だったが、今や世界の構造は劇的に変化した。現在の日中間には、大きくは歴史認識問題と日米安保問題が存在する。米ソ対立がなくなったもとで、いつまでも古い考えや日米安保にしがみつく必要はない。今後の良好な日中関係を築くために、体制の違いを認識すること、中国は偉大な発展途上国だという認識、小異を残して大同につく考え方、過去を忘れず未来への教訓とすることを提案したい」と述べた。

 また衞藤瀋吉氏は、世界的な観点からアジア、日中関係を展望するとして、世界の仕組みには三つの層があると指摘。その「環境問題、経済協力、政治・外交」の三点について、「中国の人口は二十一世紀に十六億人を超え、人びとを飢えから守るのは大変なことである。食糧供給問題への対策は、国際社会の中でほとんどない。経済協力は、中国の発展のために国際的な協力が求められており、日中間の関係がぎくしゃくしても、進めるべき問題だ。政治・外交の問題は、第一と第二の問題をしっかり進めれば、おのずとうまくいくと思う」「信頼関係を築く基礎は、思っていることを正直に言うこと。日中が、互いの違いをよく理解することが出発点となる」と述べた。

 その後、パネラーの補足発言、会場からの発言を受けて、コーディネーターの槙枝元文・日中技能者交流センター理事長が討論のまとめ的発言を行った。槙枝氏は、日本国民の歴史認識の不統一、日本の教育と教科書作成の問題を指摘し、中国を敵視するのではなく「パートナー」とすべきであると、日本の自主的な外交を求めた。

 参加者は熱心に討論に参加し、日中両国間の揺るぎない信頼関係を築いていくことを確認しあった。

シンポジウム呼びかけ人

上坂 明 (大阪平和人権センター理事長)
上田正昭 (京都大学名誉教授)
岡本知明 (財団法人・大阪国際平和センター理事長)
木村一三 (日中経済貿易センター会長)
熊谷信昭 (大阪府日本中国友好協会会長)
後藤田正晴 (財団法人・日中友好会館会長)
中山太郎 (元外務大臣)
前川朋久 (日本労働組合総連合会大阪府連合会会長)
槙枝元文 (日中技能者交流センター理事長)
もず唱平 (作詞家)
安田佳三 (財団法人・日中経済協会理事長)


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