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労働新聞 2021年9月15日号・3面

在沖米軍が汚染水の放出を強行

米軍の横暴と弱腰のわが国政府許すな

 一九五一年九月八日、米・サンフランシスコで日米安保条約が調印された。この日米安保七十年を沖縄は相次ぐ米軍由来の事件・事故が多発するなかで迎えた。
 在沖海兵隊は八月二十六日、米軍普天間基地内に保管していた有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)を含んだ汚染水約六万四千リットルを一方的に公共下水道に放出した。この汚染水をめぐって日米合同委員会で協議しているなかでの出来事であり、まさにだまし討ちというほかない。この米軍の行為に対して、当然にも沖縄県は「激しい怒りを覚える」(玉城知事)と抗議、県議会も抗議決議と意見書を全会一致で可決した。
 しかし、わが国政府は「遺憾の意」(岸防衛相)というだけで、米国に対して強い姿勢をまったく打ち出せていない。
 すでに下水道から採取した水からPFOS・PFOAが国の暫定指針値(一リットル当たり五〇ナノグラム)の約十三倍の六七〇ナノグラムも検出されたことを宜野湾市が発表している。
 またこの六月以降、普天間基地に所属する軍用機の事故も多発、八月には垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが重さ約一・八キロものパネルなどを落下させた。しかし、米軍は事故原因を究明することなく、オスプレイの飛行を続けるなど占領意識丸出しだ。
 菅首相は今年四月の日米首脳会談でバイデン政権の中国包囲網の形成に積極的に呼応、「台湾有事」への介入を明言した。七十年を迎えた日米安保はさらに危険な領域に踏み込もうとしている。米国の対中包囲網の舞台は当然東アジアであり、わが国全土、沖縄がその最前線となる。
 アフガニスタンでの惨めな敗走が象徴するようにもはや米国の威信は地に落ち、世界はいっそう多極化の色彩を強めている。
 「今こそ、対米追随からの脱却の声を高らかに上げる国民的運動を強めるチャンスである」。
 日米安保破棄、辺野古新基地建設阻止、南西諸島における自衛隊増強反対とともに米軍の汚染水の一方的放出、そして弱腰のわが国政府に全国で抗議の声を上げよう。


市議会として国、米軍に抗議 県民と米軍、どちらを守るか
 桃原功(沖縄・宜野湾市議会議員/島ぐるみ会議ぎのわん事務局長)に聞く

 在沖米軍が普天間基地からPFOS・PFOAの放出を行ったことに対して地元・宜野湾市の松川市長は抗議、そして市議会も抗議決議を九月八日に全会一致で可決した。桃原功市議会議員(島ぐるみ会議ぎのわん事務局長)に聞いた。(文責・編集部)
  *  *  *
 市議会の抗議決議と意見書を携えて、基地外務省沖縄事務所、沖縄防衛局、そして在沖総領事館を訪れた。しかし、外務省、防衛局共に解決に向けた反応がなかった。なぜここまで米軍に何を言えないのか。いったい県民と米軍、どちらを守るのかと言いたい。
 米総領事館でも新しい総領事が私たちの申し入れに対応した。それでも総領事の認識は海兵隊のコメントをそのままコピーしたような内容だった。
 かれらに「汚染水」という認識はまったくない。あくまで汚染された水を処理・分別してPFASは焼却処理したという言い分だ。一リットル当たりPFOS・PFOA量は二・七ナノグラムであり国の基準値(一リットル当たり五〇ナノグラム)を下回っており、「日本の基準より二十倍きれいで安全だ」という理屈である。
 「だったら、あなた飲めますか?」と言いたい思いだった。
 PFOS・PFOAは残留性、蓄積性共に高い有機化合物なので、仮に今回放出された総量は六万四千キロリットルとされているが、これが一リットル当たり二・七ナノグラムであってもこの総量の多さによって蓄積される量は危険な水準になってしまう。米側と私たちの認識と決定的な差がある。
 沖縄本島の西側にある北谷町に浄水場があり、この取水源の一つは嘉手納基地内と周辺にある河川や井戸群であり、基地内ということは汚染されていることが分かっている。そして、北谷町と宜野湾市の二つの自治体はこの北谷浄水場から一〇〇%、供給を受けている。また、沖縄市、中城村、北中城村、そして浦添市、那覇市なども北谷浄水場から供給を受けている。約四十五万人もの県民に影響を及ぼしている。ちなみに東側に位置する西原浄水場、石川浄水場からはほとんどPFOS・PFOAは確認されていない。基地内から取水していないからだ。
 そして併せて、国と米軍、沖縄県、宜野湾市との間でこの処分についての協議をしようと確認をしたにも関わらず、その協議前に勝手に放出したことに強く抗議した。
 沖縄県も謝花副知事が抗議するため海兵隊に面会を求めたが、「抗議は受け付けない。意見交換なら受け付ける」という姿勢だった。
 実はバイデン米大統領は就任直前に米国内におけるPFOS・PFOA汚染をキチンと規制することをと公言していたと報じられている。日本の関係当局、米軍、領事館にもこのことを指摘し、在沖米軍基地にもこの規制をキチンと適用することを強く求めた。
 日米地位協定で基地の管理権は米軍に委ねられ、これが沖縄県が実態を把握できないカベになっている。
 私たち沖縄県民はこれまでずっと日米地位協定の抜本改定を求めてきた。また全国知事会も日米両政府に地位協定の抜本的見直しを提言してきた。
 しかし、日本の対応は、同じように米軍との間に地位協定があるドイツやイタリアと比べても非常になさけないと思う。沖縄では米軍に関わる事件や事故が起きても、いつも「運用の改善」というだけで、何も変わっていない。
 日米安保、地位協定のカベがなかなか突破できない現実があり、本当に不満と怒りを感じている。
 今回の一連のできごとを米国内の人びとにも訴えたい。
 与那国、石垣、宮古、沖縄本島、そして、奄美まで自衛隊の配備と増強が続いている。なぜ、日本政府は米国ばかりに気を使って、緊張をもたらすようなことをするのか。なにか偶発的なことがあれば本当に戦争になってしまう。何がきっかけで戦争になるか分からないので、そうしたリスクは本当に避けるべきだ。
 なぜ隣国(中国などアジア諸国)と仲良くしようとしないのか。これほど経済の相互関係が進んでいるのだから、本当は戦争なんかできるはずないのだが。
 重要土地等調査規制法が今年六月に成立したが、「沖縄タイムス」「琉球新報」の沖縄地元二紙はしっかりとその問題点を押さえた報道だった。本土大手紙と大きな違いだ。
 来年沖縄は日本復帰五十年を迎える。沖縄における基地問題はもちろん、コロナ禍で深刻化する貧困問題など事実を見ていくことの大切さを訴えたい。


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