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労働新聞 2021年8月25日号・3面

第17回地方議員交流研修会

地域・地方から国政変える
大きなうねりを

 「歴史的転換期の世界、問われる国と地方の生き方―地方自治体議員の課題は何か?」をメインテーマに第十七回全国地方議員交流研修会が八月十日、行われた。同研修会は二〇〇三年から毎年開催されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は開催を断念、今年はオンライン形式で行われた。同研修会は(1)コロナ禍が暴く地域の諸課題、地方政治の役割、(2)米中激突の東アジア、問われる日本の進路」、(3)大阪の医療崩壊と維新政治の三部構成で行われた。衆議院解散・総選挙が迫るなか、地方、地域には国政への怒りとそれを突き動かすエネルギーが充満している。地方自治体議員の役割は重要であり、そのことを再確認させた研修会であった。


 研修会は山本正治・国民連合事務局長(月刊「日本の進路」編集長)の司会の下でスタートした。
 実行委員会を代表して中村進一・三重県議が開会あいさつを行った。
 中村氏はコロナ禍の下で国民の格差が拡大していることを指摘、「公立・公的病院再編は誤りだった」と歴代政権が進めてきた医療破壊の政策を批判した。
 併せて「米国の言いなりで日本の平和が守られるのか」と述べ、先の日米首脳会談などで強まる米バイデン政権の対中対抗・封じ込め戦略に積極的に呼応する菅政権の姿勢に強い疑問を呈するとともに、対米従属政治から脱却する必要性を強調した。
 研修会では玉城デニー・沖縄県知事からビデオメッセージが寄せられた。
 玉城氏は沖縄におけるコロナ禍の厳しい現状を報告するとともに、改めて辺野古新基地建設の阻止と日米地位協定の抜本改正に向けた県民運動の先頭に立つと述べ、全国の地方議員の理解と協力を呼びかけた。
 嘉田由紀子参議院議員は滋賀県知事時代の経験を踏まえながら気候変動と甚大化する自然災害に対する政治の役割について発言した。そして、コロナ禍で露呈している菅政権の無策ぶりについて「科学的データとビジョン、そして魂がないという『三ない政治』だ」と喝破した。

コロナ禍、住民に犠牲強いる政治告発
自治体議員の果たすべき役割再認識

 研修会の第一部はまず、山田厚・甲府市議が発言した。山田氏は公立・公的病院再編に代表される歴代政権による医療破壊の実情について報告した。とくに菅政権の下で打ち出されている「新公立病院改革ガイドライン」よって、コロナ禍においても病床削減が行われている点を厳しく批判、公的医療の維持・再建に向けた地方議員の役割の重要性を強調した。
 小椋修平・足立区議は東京では派遣切りなどで寮を追い出されたり、家賃滞納で住居を追われ、ネットカフェに寝泊りしながら日雇いなどでギリギリの生活を強いられている人が約四千人以上いること、こうした人がいよいよ追い詰められ、支援団体に殺到している状況を報告した。
 伊藤周平・鹿児島大学教授は「自助」掲げる菅政権がコロナ禍で病床全体を増やさぬまま一般病床を感染病床に転換したことを厳しく批判、住民の命と健康を守る自治体議員の果たすべき役割を強調した。
 また河内ひとみ・荒川区議はケアマネージャーとしての経験も交えながら発言、実際にコロナ禍で「自宅療養」を強いられ、命の危険にさらされた区民の実体験について報告した。新谷信次郎・柳川市議は非課税所得世帯の支援枠拡大の必要性を提起した。
 玉城健一郎・沖縄県議はクラスター(集団感染)の発生など米軍基地の存在がコロナ禍をより厳しいものにしていると報告、情報開示などに向け、日米地位協定の抜本改定を求めた。原田和広・山形県議もコロナ禍で揺れる県内の状況を報告した
 こうした報告を受けて発言した金井利之・東京大学大学院教授は、自治体議員が住民のニーズを掘り起こし、国にその課題認識させるべきだと述べた。

日米同盟からの転換求める
「台湾有事」への介入許さぬ運動提起

 第二部は「米中激突の東アジア、問われる日本の進路」をテーマに進行した。
 羽場久美子・神奈川大学教授は、「三〇年代に向けていかなる時代をつくるのかという分岐点にいる」と提起、その上で、米国の一極支配が終わりを告げるなか、バイデン政権による「価値の同盟」の基づく中国封じ込めに対して「(日本は)アジアの一員として、中国を締め出すのではなく、ワクチンや医療技術、IT(情報技術)などの分野も含めて共同して新しい未来と繁栄を享受する必要がある」と述べた。そして、米国では東アジアにおける限定核戦争の可能性について公然と議論されていることを紹介、「日本は米国の先兵になることではなく、地政学的に重要な位置にあるからこそ、米中をつなぐブリッジであるべきだ」と締めくくった。
 柳澤協二・元内閣官房副長官補は「一つの中国」との国際合意を形骸化させながら対中封じ込め戦略を強めるバイデン政権の下、わが国が中国との戦争の最前線に立たされる恐れを指摘、「同盟のジレンマが日本に降りかかる」と警鐘を鳴らした。その上で「日本独自のやり方を考えなければ」と述べ、菅政権が進める対米追随と軍事大国化の道ではなく、韓国やフィリピンなどの国々と協調しながら米中の対話を促す外交安保政策への転換の必要性について述べた。
 伊波洋一・参議院議員は米軍や自衛隊が南西諸島での戦争と台湾有事を想定しながら基地強化や日常的な訓練を行っていることを紹介、併せて米国が日本を「盾」にしながら、いかに自国の被害を回避しながら中国との戦争を進める戦略を具体化していることを明らかにした。そして、「米国は日本を守る役割を果たしていない」と述べ、日米安保でわが国が守られているかのような言説が幻想であると断じた。
 また國吉亮・うるま市議は同市における米軍基地の現状と基地被害について、長野広美・西之表市議は馬毛島での自衛隊基地や軍港建設、日下景子・神奈川県議から日米地位協定の抜本改定へ向けた県に対する取り組み、上村和男・筑紫野市議から自動車産業を中心とする福岡県における地域経済の状況や日朝友好などの活動について、森一敏・金沢市議は日韓関係の改善に向けた市民、自治体間での取り組みについてそれぞれ報告した。國仲昌二・沖縄県議からは米国が引き起こす台湾有事にわが国が関与しないことを求める決議を全国の自治体から上げることが提起された。
 締めくくりの討論では、「自治体議員は住民の命を守るという立場からの行動が必要」(柳澤氏)、「日本は戦争ではなく、経済と外交で世界平和と繁栄をリードしていくのが大事」(羽場氏)、「日米安保をそんなにありがたがるのか問われるべき。野党もそのことを真剣に考える必要がある。立憲民主党、国民民主党もまだ克服していない」(伊波氏)との発言と問題提起が続いた。
維新政治の実態に迫る報告
代わる勢力の必要性強調

 第三部の「大阪府の医療崩壊と維新政治」は、馬場慶次郎・吹田市議の司会の下、進行した。
 冒頭、山田けんた・大阪府議は府議会の現状を報告、府議会の約六割が維新で占められチェック機能が果たされていないと述べた。そして、コロナ禍「第三波」の最中である昨年十月には「大阪市廃止」の住民投票を強行したことを厳しく批判した。
 渕上猛志・堺市議は大阪府ではコロナ死者数が他自治体と比べて高い一方、飲食店への時短営業への協力金の支給率が著しく低いなどの問題があるにも関わらず、各種世論調査では吉村大阪府知事の支持が高い現状を報告した。
 武直樹・大阪市議は「大阪市廃止構想」に向けた住民投票の闘いについて報告、否決を勝ち取った要因として、「都構想」と言いながら実際は大阪市が廃止されるという事実と、大阪市廃止が市民にデメリットをもたらすものであることが広く伝わった点を挙げた。
 また野々上愛・大阪府議は維新政治による「行革」について、野村生代・枚方市議は維新による「教育改革」について、松平要・東大阪市議は中小企業政策などについてそれぞれ発言した。兵庫県からは大島淡紅子・宝塚市議が発言、県内における維新の伸張について報告した。また松尾ゆり・杉並区議が維新政治と同様の性質を持つ小池都政について報告、先の見えない自公政治のなかで不満をもつ人びとの思いが小池都政を押し上げている点を指摘、これらに代わる勢力の形成の必要性を強調した。
 田中誠太・前八尾市長は市長時代の経験を踏まえ、約十年間にわたる維新政治について、「巧みに住民を分断するとともに、マスコミを利用した」点を挙げ、この間、実際には大阪の成長率は他の大都市と比べて低位に位置するなどあらゆる指標が悪化している事実を明らかにした。
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 研修会全体のまとめを行った北口雄幸・実行委副代表(北海道議)は、研修会で提起された課題や提案について、九月から始まる各地方議会を前に参加者で意思統一し、意見書の提案・提出なども想定しながら取り組みを強めていくことを呼びかけた。


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