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労働新聞 2021年1月25日号・1面〜2面

中央/新春講演会を開催

大隈鉄二議長が断固たる訴え
コロナ禍が加速する
危機を解明

 日本労働党中央委員会主催による新春講演会が一月十日に開かれ、友人・支持者、党員同志が参加した。
 新春講演会は、党中央委員会宣伝局の田中剛同志の司会で始まった。

大隈議長が熱烈に講演
 新春講演は、党中央委員会の大隈鉄二議長が行った。
 以下、「労働新聞」編集部の責任で概要を紹介する。なお、講演の全文は別の機会に公表される予定である。
 冒頭、大隈議長はコロナ禍を冒して参加した友人・同志に感謝を述べた。
 大隈議長は、世界、日本の情勢が激変するなか、新聞などのマスコミや解説者による説明は十分ではないがそれに触れないわけにもいかないと、内外情勢に対する見解を語り出した。ただし党内でデータを集めて検討した上での見解であり、「私なりの考え方を率直に問題提起することが、皆さんの以後の研究に役立つと思う」と述べた。

抜け出せない金融緩和
 大隈議長はまず、白井さゆり元日銀理事へのインタビュー(「日経新聞」二〇二〇年十二月二十九日付)を材料に語り始めた。米連邦準備理事会(FRB)が「金融緩和で雇用を生み格差を縮める」と主張しているのはウソであり、緩和マネーが生み出した不況下の株高で格差は広がったという部分を紹介した。
 大隈議長は、米国における現在の株高がその証左であると述べ、さらに「世界の株式時価総額、今年十五兆ドル増」(「日経新聞」十二月三十一日付)から、「世界の上場企業の株式時価総額は百兆ドル(約一京円)を超え、一年間で約十五兆ドル増えた」と引用した。
 議長は「投資家は『中央銀行は打つ手がないので金融緩和を行うはずだ』と読んで株を買う。『どうせわれわれを殺せない』と見ている。企業家、株式を持った人は、株価上昇分の利益をまっすぐいただいたが、持たない人は(特別定額給付金の)十万円だけだ」「『株が上がった』という記事を見たら『誰が儲(もう)けているのか』と考えていただきたい」と、注意を喚起した。
 続けて、日米欧中央銀行は緩和政策をやめられない。もし金融緩和をやめれば、株価急落で一九三〇年代の世界大恐慌のような事態を招きかねないし、金利上昇による政府財政の悪化とさらなる不況につながる。続けても格差は広がり、バブルはいずれ崩壊する。
 大隈議長は「ナイアガラの滝ではないが、緩和を続ければ世界は奈落の底に落ちるということは知っているが、各国中央銀行には他に打つ手はない」と述べた。
 また、記事は「持続可能な成長につながる金融政策を探る」としているが、大隈議長は「『探る時期』とは言っておれない転換点が、この一、二年以内にやってくる」と断じた。

債務問題と企業家の見方
 大隈議長は政府累積債務の問題に話題を転じた。
 コロナ対策ということで各国政府が財政出動を拡大させて政府債務が増えているが、「これは本当に生活に困っている人たちを助けようとしているのか」と問いかけた。
 それを考える上での参考資料として、大隈議長はマルクスによる「資本論」の一節を紹介した。
 その引用部分では、「モノをつくる機械」には「二種類」があり、「一方は工場のなかにあり、他方は夜と日曜は外の小屋に住んでいる」。生命のない機械は使えばすり減り、ついには取り替えた方が製造に役立つようになる。もう一方は「生きている機械」、すなわち労働者で、資本家にとっては使えば使うほどよい存在なのである。
 大隈議長は「政府、支配層は決して、困っている人たちを助けようとしているのではない。『生きた機械』として見ているにすぎない」と喝破した。
 なお、大隈議長は「資本論」に言及した際、マルクスが当初「青年ヘーゲル派」であったことに言及し、方法論としての哲学、弁証法について理解することの重要性を力説した。

デジタル通貨問題
 続いて大隈議長は、急速に進む技術革新が経済社会、国際政治に及ぼす問題として「デジタル通貨」のを取り上げた。
 現在、中小国でもデジタル通貨を導入する動きが広がっており、米大統領選挙でも話題になった。導入を進めている諸国は、いずれも金融システムがあまり発展していない国々である。問題は、世界第二位の経済大国となった中国が、「デジタル人民元」の準備を進めていることである。
 この問題を考える際に重要なのは、第二次世界大戦後、米国が基軸通貨ドルを国際政治上の武器として活用してきたことである。現在も、イランやイランと通商する諸国を制裁する手段(経済制裁)などとしてドルが使われている。
 だが、従来の金融システムの「外」にあるデジタル通貨を導入することは、金融寡頭制が支配する諸国(帝国主義諸国)ほど容易ではない。
 中国が年内にも導入を始めるので、主要国も対抗して研究を始めているが、事実上、手立てはない。デジタル通貨は金融システムを大きく変える。つまり金融機関の存在意義さえも問われざるを得ない状況になっている。
 大隈議長はデジタル人民元が発行され、中国の発展戦略である経済圏「一帯一路」などを通して流通するようになれば、「米国はドルを使って他国をいじめることができなくなる。その衝撃波が一、二年以内に迫っている」と断じ、参加者に強い印象を与えた。
 さらに大隈議長は、英「フィナンシャル・タイムズ」のウルフ編集長による「企業の目標 再定義を」(「日経新聞」十二月十六日付)を紹介し、企業の存在意義さえ問われる状況にあるとも述べた。
 さらに大隈議長は、金融不安と「最後の貸し手」としての中央銀行、裏付けとなる金の問題などのデータを紹介しながら、ドイツを中心とする欧州諸国の対米、対中政策などについて言及した。

菅政権の性格の暴露など
 大隈議長は国内情勢に話題を転じた。
 大隈議長は、デジタル通貨問題など国際情勢が激変するなか、米国のいうことを聞かなければやっていけない日本の現状、保守政権の内外政策は「時代錯誤である」と断じた。議長は、内政において菅政権は「アトキンソン(小西美術工藝社社長)内閣である」と喝破した。この下で、地方銀行の再編・合併や中小企業の淘汰(とうた)などの改革政治を強力に進めようとしていると暴露した。
 続けて、第二次世界大戦前の欧州労働者の状況をふり返りつつ、高給を得るデジタル関連の労働者が出現しつつあるこんにち、労働者階級の状況についてリアルにつかむことが、党建設の前提であることを指摘し、以降の課題の一つであるとした。
 最後に、「労働者の危機というだけでなく、支配層もまた現状にとどまれずに国家権力を強めざるを得なくなっている。各国内は軍事監獄のようになる。世界は「社会革命」、争乱の時代で、ブルジョアジーの没落とプロレタリアートの勝利は避けがたく迫っている」と断言し、参加者に闘いと連携を呼びかけた。
 コロナ禍のなかの開催であったが、新春講演会は闘いの決意を固める機会となった。(K)


九州/大隈議長が講演・
来賓から連帯あいさつ相次ぐ


米帝と「時代錯誤」の
菅政権との闘い呼びかける

 党九州地方委員会主催の新春講演会が一月十七日、福岡市で開催された。
 新春講演会は、党熊本県委員会の渡邉浩委員長の司会で進められた。渡邉同志は冒頭、参加者に謝意を示すとともに、「同志や皆友人の皆さんとの団結を深めて一年の決意を新たにするためにぜひ開催したいと思った」と述べ、講演会の意義を強調した。
 講演は、大隈鉄二・党中央委員会議長が行った。
 冒頭、大隈議長は、「皆さんといっしょにものを考える機会にしたい」と述べて講演を始めた。
 最初に、コロナ禍での膨大な金融緩和、実体経済と関係ない異常な株の高騰に触れ、「金融緩和は雇用を生んで格差を縮める」というのはウソで、株を持った奴は儲かり、格差はますます広がっている。株の暴落を誰もが恐れているが、誰もそこから抜け出せない構図になっている。先行きは地獄に行くような流れであると指摘した。
 次に「資本論」の引用から、資本家が労働者を「生きた機械」とみなし、労働者の維持のために公債の発行を政府に要求した歴史を紹介。「コロナ対策の十万円の給付金」も本当に「困った人を助けるためなのか」と問いかけた。そして、企業家は今も変わらず、労働者を「生きた機械」として扱っていると鋭く指摘した。
 また、今後の国際情勢の問題として、デジタル通貨を取り上げた。そして、「世界のすう勢は中国次第になってきている。ここにさらに、中国のデジタル人民元が登場し、世界の情勢を大きく変えることになる。ここ一、二年が転換点になるのではないか」と述べた。
 さらに中国情勢では、アリババやアントなどの独占企業への規制について、中国政府の消費者や中小企業を守るためという説明は、大衆の支持を受ける方向であり、肯定的に受け取れると述べた。
 ドルへの信用が揺らぐ中で、「最後に力を持つ金保有」の動向について、ヨーロッパ諸国による金の保有高が、二〇〇〇年代以降、計画的に増やされてきたことを指摘。その上で「最近、メルケル独首相の『中国離れ』が言われているが、それはごく短期的な見方で正しくない。メルケルは米国の衰えを考慮に入れて戦略的に手を打っている」と評した。
 国内情勢では、「菅政権は時代錯誤の内閣だ」と論断、また菅内閣の特徴を端的に「アトキンソン内閣」と呼び、零細企業と小規模な金融機関をつぶす内閣だと暴露した。
 終わりに、世界には最後のあがきをする米帝国主義と闘う連携が可能なチャンスがある。わが党は、広範な国民連合の一翼を担うことがますます重要になってきた」と闘う決意を述べ、もう一度、「自分の頭で考えることが大事だということを、皆さんに伝えたい」と述べて講演を締めくくった。
 続いて来賓からあいさつを受けた。
 朝鮮総聯福岡県本部の李周学委員長は、「今後とも皆さんと共に手を携えながら日朝友好とアジアの平和のためにがんばりたい」と訴えた。
 自主・平和・民主のための広範な国民連合全国世話人の中村元氣氏は、「私たちは、二度と戦争をしない平和な社会をつくっていくという理念で繋がっています。今後も皆さんとスクラムを組んでまい進していきたい」と述べた。
 平和・人権・環境福岡県フォーラムの松尾純一事務局長は、「アジアの共生・平和を大事な視点として今後も活動していきたい」と決意の一端を述べた。来賓あいさつ後、寄せられた祝電・メッセージが紹介された(別掲)。
 閉会に当たって、党福岡県委員会の中村哲郎委員長が参加者へのお礼を述べたあと、「講演では貴重な提起があったと思う。資本主義それ自身が大きく揺らぎ、危機の中で、わが国がどのように生き、そして、労働者が自らの手に政権を握っていくのかが大きく問われる時代に入ってきている。企業家は労働者なしにはやっていけないが、われわれ働く者は企業家なしでもやっていけるという観点が大事だ。ここ数年のうちに大きな転換期が来ると思う。私たちは、党を強め、国民連合を強め、人びとの期待に応える活動と闘いを展開していく」と結び、今年一年も団結してがんばっていく決意を確認して、意気軒昂(けんこう)に今年の前進を誓い合った。


21日本労働党新春講演会に祝電・メッセージを寄せた方々(要旨・敬称略・順不同)

【中央】
・社会民主党党首 福島 みずほ
・衆議院議員 大島 敦
・全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部委員長 武 建一

【九州】
・立憲民主党福岡県連代表、衆議院議員   山内 康一
・衆議院議員   稲冨 修二
・参議院議員   野田 国義
・福岡県議会議員 原竹 岩海
・福岡県議会議員 渡辺 美穂
・福岡県議会議員 仁戸田元氣
・飯塚市長    片峯  誠
・筑紫野市長   藤田 陽三
・大宰府市長   楠田 大蔵
・大野城市長   井本 宗司
・福津市長    原崎 智仁
・添田町長    寺西 明男

・佐賀県平和運動センター議長 井上 次人
 2021年日本労働党新春講演会のご盛会を、心よりお祝い申し上げます。
 さて、2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延し、未だに終息は見えず、感染拡大が続いています。日本でも緊急事態宣言が出され、不要不急も外出の自粛が呼びかけられるなど、国民生活は大いに混乱しました。
 安倍政権を引き継いだ菅首相は、臨時国会の所信表明演説の中で、新型コロナウイルス対策と経済の両立、デジタル社会の実現、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「脱炭素社会」の実現などを掲げました。そして、めざす社会像は、「自助・共助・公助、そして絆」と述べましたが、官房長官時代の発言等をみれば、過度な自己責任や自助偏重になるのではないかと危惧されます。さらに、行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進め、新しい時代をつくり上げるとしていますが、安倍前政権で問題になったのは誤った政治主導や官邸主導であり、公平・公正であるべき行政がゆがめられたことです。その真相と原因の究明や国民に対する説明責任を果たさなければ、国民に信頼される政治は実現しないのではないでしょうか。
 私たちの運動はいま、脱原発、沖縄県辺野古新基地建設阻止の闘い、佐賀空港へのオスプレイ配備反対の闘い、そして改憲阻止の闘いなど、大きな課題に直面しています。
 平和運動センターは、菅政権の国民無視の政治にストップをかけ、国民が安心して暮らせる平和で、安全・安心な社会の実現に向け奮闘する決意です。菅政権の打倒、改憲発議阻止を大きな目標として掲げ、ともに頑張りましょう。
 貴組織の益々のご発展と皆様のご健勝をご祈念申し上げ、メッセージといたします。


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