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労働新聞 2020年7月5日号・5面 国民運動

「カジノ誘致撤回を」
「安倍政権は計画
断念を」の追撃を!


潮目は変わった、横浜・
林市長から民意は離れた

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための緊急事態宣言が解除されるや、待ちわびていたように市民はカジノ阻止の行動を再開した。三月の横浜市会予算議会では「市長と市会は市民の声を聞け」「四億円のカジノ予算阻止」を掲げて四十日間に六回の大衆行動を主導した「十八行政区カジノ反対有志の会」。かれらは六月五日、市民説明会をやめて動画配信で済ませるという林市長の記者会見に対する抗議を皮切りに再始動、六月定例会に向けて三波の行動を呼びかけ、いま闘いのさなかにある。議会内の反対派議員の闘いを一体となって議会外の大衆行動で支え、米リゾート運営企業のラスベガス・サンズ撤退表明(五月十三日)で窮地に立った林市長に、いっそう攻勢的に誘致撤回を迫ろうと意気込んでいる。

コロナ禍で自公与党の支持者にも反発広がる
 市会本会議に向けた第一波行動は六月二十三日、闘いの舞台も桜木町の新庁舎前に移った。三十一階建ての、市民を睥睨(へいげい)するような約百五十五メートルの高層建築物。議会部分は行政部分と切り離され、入り口は三階、六階が本会議場、傍聴席は七階にある。
 有志の会の「行動隊長」佐藤さんが、第一声のマイクを握る。代表の大塚さんの司会で、次々とカジノ誘致断念を迫る各区からの参加者の発言が続く。皆が意気軒高だ。
 それもそのはずだ。その日、地元紙「神奈川新聞」が一面トップで「横浜市民六六%誘致反対」を大見出しに、コロナ禍でもカジノ事業を推進しようとする政府や市の姿勢に対し、「七三%の市民が評価せず」とデカデカと報じた。二十、二十一日に行われた同紙の市民意向調査によって、コロナ禍を経験するなか、カジノに対する市民の意識が大きく変わっていることが確かめられた。
 第一に、「誘致反対」はさらに増え、「賛成」が減った。反対理由の変化が興味深い。「カジノが横浜のイメージにそぐわないから」は変わらず最多だが、「他の政策を優先させるべき」が続く。コロナ対策最優先を求める市民の声が反映している。「ギャンブル依存症への懸念」も約六ポイント増えた。いずれも市民の闘いの成果である。
 また、注目すべきは賛成の理由で、「税収増への期待」が約一〇ポイントも減った点だ。「コロナ禍でカジノ業界が売り上げを落とす中、年間最大千二百億円と見込む市のシナリオを市民が懐疑的に捉えていることが垣間見える」との同紙の解説は本質を突いている。サンズが撤退表明したことで、市が売り込んできたカジノ推進の最大の「効果」がまゆつばだと感じるようになったのである。
 第二に、カジノを誘致しようとする横浜市の情報提供を「不十分」との答えが約八割にも上っていることだ。林市長は昨夏の「誘致表明」以来、ふた言目には「市民の皆様に丁寧に説明する」と言って市民説明会を行い、「広報よこはま」特別号を全戸配布した。だがその「説明」が市民の受け止めとは大きく乖離している実態が浮き彫りとなった。にもかかかわらず、コロナ感染防止を口実に、残されている六区の市民説明会をとりやめ、動画に切り替えると言い放った。林市長の市民無視の姿勢、ここにきわまれり!
 さらに、コロナ禍が終息しない下でもカジノ事業を推進している市の姿勢に、七三%が「評価せず」と答えている 。注目すべきは、「自民党支持者」の約五三%以上が「評価せず」と回答、「評価する」を三〇ポイント以上上回っていることだ。そして公明党の支持者になると、「評価せず」が約五一%、「評価する」の倍近くになっている。つまり、推進派の自公与党の支持者の過半数がコロナ禍でカジノを推進することに反発を強めているということだ。
 これらを受けて「神奈川新聞」は、「今こそ『白紙』で考えよ」と社説を掲げ、「経済波及や増収効果」などの前提条件が大きく崩れたとして、「市長は現実を直視し、今こそ白紙撤回すべきではないか」と断じた。菅官房長官がにらみを利かせる地元紙が堂々とこうした主張を掲載するまでになった。潮目は変わった。

頑迷な時代錯誤の林市長をさらに孤立させよう
 潮目が変わった背景に、「有志の会」をはじめとする市民の闘いを軸にした議会内との連携があるのは事実である。
 だが、より大きな視点に立つなら、コロナのパンデミックが、カジノ施設を閉鎖に追い込み、事業者に巨額の損失を負わせ、壊滅的な打撃を与えたことがある。横浜進出を狙っていた最右翼だったサンズが撤退表明に追い込まれた事実が問題を明らかにした。コロナ禍が、過大な投資と株主還元でしのぎ削り合い、巨額の過剰債務を抱えて、自転車操業で回してきたカジノ事業者のビジネスモデルのぜい弱な実態をあぶり出した。もはや一兆円を超える投資を前提にした日本型カジノは成り立たなくなったのである。
 こうして、林市長自ら振りまいた「経済波及や増収効果」の前提条件が崩れ、推進勢力が窮地に立つことになった。
 潮目が変わったことは、二十六日の本会議における反対派議員の一般質問に対する市長答弁、また三十日の関係委員会での自公議員の発言に表れた。自民党議員も、コロナ禍がこれからの経済社会のあり方に深刻な影響を及ぼすと言い、横浜における観光業やカジノ事業計画にも影響が出るであろうことを認めざるを得なかった。さらに、有志の会関係者が提出した請願についても、サンズの撤退表明を受けて事業化計画を見直すこと、「市民説明会」を新しい事業化計画に基付き全行政区で行うこと、この二項目については賛成の態度を表明した。
 こうした雰囲気が広がるなかで、横浜市は事業者の公募条件などを定めた「実施方針」案の定例会へ提出を見送る方針に転じざるを得なかった。平原副市長は答弁で「国の基本方針を踏まえて出した方がよいと判断した」と言い、八月公表は現時点で変更しないと言いながら、「国の動向で判断」とも言及している。
 カジノ誘致を撤回に追い込むチャンスが来ている。決定的な力は議会内の闘いと結びついた議会外の大衆行動である。
 「有志の会」は七月七日、定例会最終日の本会議に向けて第三波の市庁舎包囲、傍聴活動を呼びかけている。
 第一波行動でうれしかったのは、自治体労働者と民間労働組合の委員長以下三人の役員の皆さんが参加したことである。市民運動と労働組合が連携できれば、さらに大きな世論と運動を巻き起こすことができる。
 さらに、ある連合自治会の会長さんが参加され、発言してもらえることになっている。できる限り、広範な各界の人びとが共同し、大きな力を結集しなければならない。
 六月二十九日の「神奈川新聞」一面トップには「カジノ決着した」との大見出しが躍った。「ハマのドン」である藤木幸夫氏の見立てである。氏はアマ将棋六段で、先を読むのに長けていると聞く。十七日に行われた横浜港運協会の総会で会長退任の意を示し、横浜港ハーバーリゾート協会の会長職に専念して今後も闘い続けると表明した。
 もはや林市長から民意は離れた。「市民意向調査」によれば、支持率が二七%に対急落し、不支持率はその倍以上の五五%に達した。昨年九月調査から実に一三ポイントも急増した。安倍政権の直近の不支持率よりもはるかに高く、すでに危険水域に入った。
 だが、どんなに支持率が落ちても大人しく退くことなどあり得ない。来夏の市長選での決着を展望して、本格的に闘いを準備しなければならない。(N)


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