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労働新聞 2020年4月25日号・5面 国民運動

通信/林市長はどこまで市民の願いを踏みにじる気か

横浜市・労働組合OB 三村 隆

 四月十五日の午後、横浜市の林市長の記者会見中継を見ながら、怒りがこみ上げるのを押さえることができませんでした。
 私は『労働新聞』四月五日号の五面のルポ記事で紹介された「十八行政区カジノ反対有志の会」に途中から参加した一人です。「四億円のカジノ予算を止めることが当面の決定的闘い」という呼びかけに共感して、市会に向けての六回の行動にはすべて参加してきました。予算は議決されましたが、市会の最終日の傍聴席からの「闘い」も体験しました。「闘いはここから、闘いは今から」です。
 七日、有志の会は次の闘いとして「市民の命にかかわるコロナ対策を最優先せよ、カジノ事業は停止せよ」と市長へ緊急要請を行いました。そして十五日。事前にある新聞記者から、今回の市長会見は、コロナ対策が中心だが、カジノの日程にも言及があるらしい、ついてはコメントをいただきたいと「有志の会」の代表の方に連絡が入っていたとも聞いたので、どんな発言をするのか大きな関心を持っていたのです。
 しかし、林市長の口から発せられたのは、冒頭のような表現でも足りないくらいに頭にくるものでした。会見の趣旨はコロナ対策についてでしたが、記者からの質問はカジノ事業との関連にかかわるものが圧倒的でした。林市長は答弁の中で「コロナ対策を優先するため、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致に向けた実施方針公表を二カ月先送りする」と言ったものの、その理由としては、「国家プロジェクトで、国は認定の申請期間を変えていない。来年の一月から七月までに間に合うようにしたい」「二カ月延期しても可能」と繰り返すばかりでした。記者が「二カ月後にコロナ感染が終息していなかった場合でも進めるのか」という質問に対しても、「国のスケジュールに変更がない限り」と木で鼻をくくったような答弁を繰り返すばかりでした。その後から有志の会のメーリングリストには、怒りの声が次々と上がりました。
 代表の大塚要治さんが、「二カ月遅れても、どうってことないでしょう。ゼロ回答だ」と切り捨て、「カジノ予算の四億円をコロナ対応に回した訳ではない。三十数人増員された推進課の職員をコロナ対策に回すということも言っていない」「市民説明会がやられていない六つの区での説明会なしに予算議決を強行したが、実施方針の公表も説明会なしにやるつもりか」と指摘、その発言は『神奈川新聞』に載りました。
 しかも許せないのは、「横浜市はコロナ対策を最高レベルでやっている」とヌケヌケと言うのです。市会では「帰国者、相談センターの相談者数」さえ、即答できない関心のなさを自己暴露しました。最近保育士の感染が判明した際にも「保護者に知らせず保育を続けて」と市が指示した事実も発覚しています。
 振り返ってみると私たちは三月十日に「市長への質問状」を出した時からコロナ感染拡大を理由に挙げて予算議決を含むカジノ事業の停止を求めてきました。最近も、有志の会に続いて「カジノを考える市民フォーラム」や「カジノの是非を決める市民の会」も市長への要請を行い、最後は自公与党ですら「延期」を要望せざるを得ない事態になっていたのです。『神奈川新聞』も「コロナ対策が最優先だ」と社説を書いているほどでした。
 私は、成人してここ五人の市長を見てきましたが、これほど上の人(「ハードパワー」、菅官房長官や安倍首相、トランプ米大統領)の方にばかりを忖度して、市民には詭弁(きべん)を弄(ろう)し背を向けてはばからない市長を見たことはありません。「二枚舌」という言葉がありますが、林市長には何枚の舌があるのでしょうか。
 有志の会のメーリングリストに、ある女性が自らが書いたパブリック・コメントを投稿していました。「博打場の寺銭で税収を計るとは、なんと不健全でさもしい愚策。市民への背信、ヨコハマの過去と未来への冒涜です。増収は一瞬の線香花火、増え続けるのは治安の悪化、街の衰退、ギャンブル依存症、質屋と自殺者…です。カジノ誘致絶対×。横浜市職員の皆さん、『この緊急時にカジノかよ!』と面従腹背の方も少なからず、でしょう。皆さんの契約相手は市民です。市民への公僕としてのプライドをかけて異議申し立てするのは今です。カジノよりコロナ対策」。
 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界の誰しも予想できないほど急激に広がり深刻さを増しています。いつ終息するかさえ予測できませんが、コロナ後の世界はこれまでと違った世界になり、経済も社会生活も、価値観も、日本の生き方もすっかり変わることは確かだと思います。
 林市長は今なお「IR事業は将来の経済成長を支える国家プロジェクト」と大宣伝しますが、それはリスクだらけの時代錯誤の愚策になりませんか。「市民税法人税よりも二倍近くもの収入になるというカジノの財政効果」は、まったくの空手形になりませんか。コロナのパンデミックによって、大損害を受け、株価が暴落している一つがカジノ業界です。これからも感染症が予測される中、横浜市民を没落するカジノ業者のいけにえにするのですか。
 いつから私たちの行動が自由に開始できるか分かりません。私は、四月五日付に書いてあった沖縄県民のような闘い方、議会外の大衆的闘いを優先して発展させ、議会内の闘いと結びつくことが肝心という言葉に共感しました。カジノを阻止するため、来年夏の市長選をも展望して、がんばりたいと思います。
 特に私は、労働組合で活動していましたので、労働組合の皆さんが立ち上がって、市民といっしょなってカジノ阻止のために闘うことが求められていると痛感しています。そのためには、もっともっと現役の皆さんにもがんばってもらえるよう働きかけたいと思っています。一九七二年には、市の職員組合は他の組合、市民といっしょに大動員をかけ、飛鳥田市長を先頭にベトナム戦争の現場に送り込まれる戦車を村雨橋で止めた力を発揮しました。そんな話もしてみたいと思っています。


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