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労働新聞 2018年8月5日号・5面 国民運動

神奈川/日米地位協定
抜本改定求め県民集会

 沖縄の改定案支持、県民運動 基礎に全国的取り組み提起

  「神奈川から日米地位協定抜本改定のうねりを! 人権を守り、主権を取り戻す県民集会二〇一八」が七月二十九日、横浜市で開かれた。昨年に引き続き開かれた集会では、米軍による事故・事件が多発し国民の人権や国家の主権がないがしろにされている状況を受け、米軍基地を抱える十五都道府県でつくる渉外知事会の会長を務める黒岩知事に対して抜本改定に向けて県民世論と運動の先頭に立ち国に強力に働きかけることが訴えられた。また、昨年九月に沖縄県が十七年ぶりに独自にまとめた抜本改定案を支持し、渉外知事会の総意として取りまとめることも迫った。朝鮮半島など東アジアの政治流動化は国の主権回復と自主・平和な国の進路への転換の好機である。二十七日には、全国知事会が地位協定の抜本改定の提言を全会一致で採択した。学者、弁護士、商店街役員、県会議員、元国会議員、前首長、沖縄県人会役員など各界九人の呼びかけで開かれた集会は、県民運動を強め、全国的運動を促進する時宜にかなった重要な取り組みとなった。


 集会は呼びかけ人の露木順一・前開成町長の司会で進められた。
 主催者あいさつで中野新弁護士は、沖縄県が抜本改定案をまとめた後も米国がドイツやイタリアと結んだ地位協定を独自に調査していることを紹介した上で、「本来こういうことは国がするべきこと。政府は何もせず、司法も米国が関わると判断しない。人権と主権を守る抜本改定に向けて神奈川でも取り組みを強めよう」と呼びかけた。
 続いて、集会に先立つ二十三日に行われた県知事への要請行動について、越川好昭・綾瀬市議会議員が報告した。厚木基地爆音防止期成同盟や原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会、「輝け九条」新護憲市民の会、かながわアクション、自主・平和・民主のための広範な国民連合・神奈川が行った要請では、黒岩知事が今年の渉外知事会で地位協定に「犯罪の予防義務を米軍に負わせる条文」を付加することでお茶をにごそうとしていることを批判、米軍による事故や事件の即時根絶には実効性のある強力な措置が必要で、協定を抜本改定し、日本の主権を行使し米軍に国内法を適用することを強く要請したことが報告された。また連合神奈川が今月「平和ビジョン」を策定し、「米軍基地の整理・縮小、地位協定の抜本的な見直し」を打ち出したことを紹介、県民運動の発展に労働組合が動き出していることも報告した。

明田川氏が講演
「本土での理解こそカギ」
 集会の講演では、明田川融・法政大学教授が「沖縄はなぜ、十七年ぶりに改訂を求めているのか」をテーマに解説した。「日米地位協定 その歴史と現在」などの著作のある明田川氏は、まず戦後の沖縄は一日も絶えないほど米軍事故や米兵犯罪の被害に遭っており、日本への復帰前にはいっさい裁判権がなかったことに言及、「沖縄の歴史と現実に対する理解を本土でも広げ深めることが地位協定の問題点を知る上で不可欠」とした。
 また、地位協定は一九六〇年の締結以来、一度も改定されていないが、日本政府がそれを正当化する「改定不要論」の理由として、「省庁間の利害調整の困難さ」などさまざま挙げているが、「不要論の真の根拠となっているのは本土の国民の関心の低さで、国は必要がないと高をくくっている」と、国民世論を高めることの必要性を訴えた。
 さらに、沖縄県が出した要請の内容を個別に解説、その訴えがきわめて真っ当であることを説明しつつ、逆に現行の地位協定ではいかに国の主権や国民の人権やないがしろにされているかを具体的に暴露した。
 最後に、質問に答える中で、協定の運用を決めている日米合同委員会が日本政府側の要請で国民からひた隠しにされてきたとし、ここでも国民的な関心の高まりが必要であると訴えた。

各界から熱いメッセージ
「県民運動のうねりを」
 集会に寄せられたメッセージが紹介された。集会には、阿部知子衆議院議員(立憲民主党神奈川県連代表)、久保孝雄・アジアサイエンスパーク協会名誉会長(元県副知事)、川平朝清・東京沖縄県人会名誉顧問、元山仁士郎・「辺野古」県民投票の会代表、野平晋作・ピースボート共同代表、山根徹也・横浜市立大学教授から集会を支持し激励するメッセージが寄せられた。元山氏の「沖縄の運動に『第二の基地県』と呼ばれる神奈川県が呼応せず、どの都道府県が動くのでしょうか。県民投票の署名集めを通じて、一人が動けば変るということを改めて痛感しました。あなたはどうするのか。沖縄はずっと問い続けています」との熱いメッセージには、ひときわ大きな連帯の拍手が起こった。
 各界から力強いアピールが行われた。
 横浜国立大学の山本泰生教授は、山根市大教授を中心に県大学人有志百二十七人で安倍政権のめざす改憲を批判する声明を打ち出した活動などを紹介、基地を多く抱える神奈川県民が沖縄の闘いと連帯を強めるべきだと訴えた。
 厚木爆同の石郷岡忠男委員長は、厚木基地が米軍横田基地(東京)や陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉)、陸自東富士演習場(静岡)などを行き交うオスプレイの「中継地」として利用されていることを暴露し警鐘を鳴らした。
 日下景子県議会議員は、二十五、二十六日、山形市で開かれた全国地方議員交流研修会で、昨年から取り組んできた神奈川での地位協定抜本改定を求める県政闘争と本集会を紹介、今後地方議員が連携し全国的運動として取り組もうと呼びかけたことを報告し、引き続き県議会の場でも皆さんと連携してうねりをつくると決意を述べた。
 横田・基地被害をなくす会の大沢豊代表は、横田基地で激しさを増す米軍訓練の被害などを報告、神奈川と連携して運動を強めたいと決意を述べた。
 また途中退席した斎藤勁・元衆議院議員からも県民運動のうねりをつくるために連携して闘うアピールが寄せられた。
 最後に安海のぞみ・座間市議会議員が集会アピール案を提案、「県民、国民運動こそが抜本改定を実現する原動力」とし、県内各界へ「県民運動のうねりをつくろう」、さらに首都圏、渉外知事会県、本土の全県の皆さんに「国民運動を巻き起こそう」と呼びかけ、採択された。そして「この運動は人権を守り、主権を取り戻す道理ある正義の運動。沖縄県民の島ぐるみの闘いと連帯し、結びつくことによって、国を動かすに違いない」と結び、意気高く集会が締めくくられた。


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