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労働新聞 2017年10月5日号 3面

広範な国民連合が
総選挙前に緊急討論会

選挙の争点と運動の政治方向示す

 自主・平和・民主のための広範な国民連合は十月三日、東京で「朝鮮半島危機。政局と総選挙の課題」緊急討論会を開催した。
 安倍政権による突如の衆議院解散、小池百合子都知事による「希望の党」の結成、維新の会との連携、希望の党への民進党の合流と反発としての分解、立憲民主党の結成など、議会政治をめぐる構図が劇的に変わる新たな政治・政党再編が始まっている。
 国民連合は、安倍政権が米トランプ政権の朝鮮半島での核戦争挑発を最大限に利用し、国民の危機感をあおり得票に結び付けて選挙戦を突破しようと策動していることから、この戦争の危機にどう対処するかが今回の総選挙の最大の争点であると提起した。また、アベノミクスは破綻し国債暴落・金融危機も迫っているといわれるなか、国民生活の危機をどう打開するかが問われており、そのためにも財政危機を誰の負担で打開するかだと提起した。
 今回の緊急討論会は、総選挙の争点と国民運動の政治方向を明らかにし、広範な連携を促進する取り組みとなった。


 集会の冒頭、主催者を代表してあいさつした西澤清・広範な国民連合代表世話人は「戦争の危機、改憲の動きが強まる重大な状況の中での選挙。アベノミクスはすでに破綻し、青年などの貧困問題、経済危機への対処が問われている。ここでしっかり議論していきたい」と趣旨を説明した。
 討論は角田義一・元参議院副議長、鈴木宣弘・東京大学大学院教授、柳澤脇二・国際地政学研究所理事長(元内閣官房副長官補)の三氏による問題提起を受けて始まった。

朝鮮半島の核危機をどう打開するか
 角田氏は「米国によって戦端が開かれたら、わが国は戦争当事国になり、日本や韓国、朝鮮は壊滅的な被害を受ける。安倍がやるべきは戦争をやらせないことだ。日本の財産・国民を守るために、ピョンヤンに行って交渉すべるきだ。朝鮮の体制を認めて平和共存するべきだ。核については、米国だけが持っていていいのかと米国にも迫る、そうした政府をつくるべきだ」と提起した。
 柳澤氏は「朝鮮戦争は休戦状態で、戦争当事国の一方が核を持っているのだから、朝鮮が核開発するのはいわば当然ともいえる。安倍政権は対話でなく圧力を主張し、地上発射型の迎撃ミサイル(PAC3)を配備し、全国瞬時警報システム(Jアラート)を発動、避難訓練などを繰り返し行い、日本だけが戦争に備えているように見える」「安倍首相の通常国会での『ミサイルを撃ち漏らせば米国が報復する』旨の発言は見逃せない。撃ち漏らせば、その時点で日本にミサイルが落ちている。日本が戦場になることを前提にしている」「米国の核による抑止という考えで朝鮮を挑発をし、朝鮮を追い詰め、危険を増している」「日本が戦術核を持つことになれば、国際的な拡散の発端となり、核の恐怖が現実のものになる」などと状況を解説した。
 そのうえで「相手に負けない力を持ち、ミサイルが来たら避難できるように備えておくだけでは、戦争の恐怖から解放されるという意味の平和はこない。戦争の原因となる対立を解消することこそが重要だ」と訴えた。
 また朝鮮を訪問中の福岡県日朝友好協会訪朝団の北原守団長(同協会会長、公明党・元福岡県議会副議長)などからのメッセージも紹介された。

アジアが共生できる政策が必要
 鈴木氏は「規制緩和とグローバリズムの自由貿易の下で米国への従属が進み、大企業への便宜供与が図られた。経営層の富裕化が進み、他方、国民の貧困化は著しい」「日本の対米経済外交は、対日年次改革要望書や米在日商工会議所の意見に応えたもの。規制改革推進会議はその執行機関。国民大多数の利益とかけ離れた政治だ」「地方創生や農業所得倍増は、ローソン、オリックスなどの一部企業が利益を上げること。その他の既存農家のほとんどはつぶれてもいい、食の安全保障などどうでもいいという考え方だ」「種子法が廃止されたが、都道府県が優良品種を安く普及させるために国が予算措置をしてきた根拠法がなくなり、それを民間にただで払い下げするもの。種子価格は高騰する。民間活力の最大限の活用、民営化が進めば、国民の命がモンサント社など海外企業にコントロールされてしまう。亡国そのものだ」と批判した。
 その上で、一部の企業への利益集中をもくろむ「時代遅れ」の環太平洋経済連携協定(TPP)型のルールではなく、「共生」をキーワードに、命・環境・人権を尊重し、あまねく行き渡る均衡ある発展と富の公平な分配が確保できるような柔軟で互恵的な経済連携協定の具体像、政策をわれわれが提示することが必要だと述べた。

小池新党「希望の党」の暴露も
 会場からは、相模原の社会福祉施設での事件を例に「貧困な高齢者や障がい者を、貧困なわれわれが支えている」と福祉現場からの発言、また自民党農政の下でコメ作りも限界にきている農家の実態と学校給食などに地元産の農畜産物を利用する地産地消で打開をめざしているなどの経験も報告された。
 日本政治の現実の最大の課題といってよい沖縄の米軍基地問題、新基地建設問題について、沖縄から参加した吉元政矩・国民連合代表世話人(元沖縄県副知事)が、本土では東京を中心にものが考えられ、沖縄は差別され放置されていることを訴えた。
 希望の党については、小池都知事と闘ってきた国民連合・東京の谷口滋世話人から、国際金融都市構想が特区をつくり、規制緩和を最大限駆使して進められていることも報告された。築地市場問題など、その欺まん的な政治手法も明らかにされた。
 また希望の党は、憲法改悪や安保法制では安倍政権と変わらないが、安倍自民党を「しがらみ」と批判しているように、大企業のための徹底した改革を旗印にしている。小泉改革以来の「改革」を推進した、米国べったりの竹中平蔵・東洋大学教授(元総務相兼郵政民営化担当相)が「規制緩和などが不十分」「第四次産業革命の中で政府の構造改革は後手に回っている」などと安倍政権を批判、小池党首と日本維新の会の松井一郎代表を結び付けたのも竹中氏だということも紹介された。
 さらに、希望の党は、安倍政権の補完勢力ではなく、むしろ農民や地方や商工業者などを引き続き支持基盤とする自民党ではやりきれない「改革」を徹底推進する多国籍大企業のための別動隊と見るべきとの評価も出された。

「平和、自主」「国民生活の危機突破」の政治方向を
 こうした議論を踏まえて、日本大学教授の露木順一・元神奈川県開成町長は「小池新党ができたが、もし安倍政権が倒れても小池さんの方も続きはしない。安倍と小池と『敵』同士が戦っている間に、こちらが『アジアの平和と日本の安全を守るのか、日本国民の生活を守れるのか』で具体的で分かりやすい対抗軸をつくれれば、良質な保守勢力とも力を合わせてまともな日本に変えるチャンスが生まれた」と発言した。
 最後のまとめでは、安倍自民党政権打倒へ、希望の党の動きなどに右往左往せず、「平和と自主」「国民生活の危機突破」の対抗軸を鮮明にし、広範な国民の怒りと力を結集して新しい政治勢力づくりを促進していくことが強調された。また当面する総選挙では、自公与党に反対するとともに、希望の党にも与(くみ)せず主張を貫き闘おうとしている候補者を激励、応援メッセージを送ることが提案され、了承された。


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