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労働新聞 2017年8月25日号 5面・国民運動

米軍機飛行差し止め
勝ち取りたい

大波 修二・第五次厚木基地
爆音訴訟団団長

 「静かで平和な空を」…米海軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)を離発着する戦闘機の騒音被害解消を訴える第五次厚木基地爆音訴訟が八月四日、横浜地裁に提起された。第五次訴訟の狙いや目標について、訴訟団の大波修二団長(大和市議会議員、厚木基地爆音防止期成同盟前委員長)に聞いた。


 厚木基地の爆音をめぐる裁判闘争は四十年以上に渡って取り組まれている。
 基地の爆音は周辺住民の生活を分断し、健康にも被害を及ぼし続けている。七十五デシベル以上の騒音が年間二万二千回も発生し、ひどい場合には百二十デシベルを超える爆音が住民を苦しめている。これは音の暴力だ。その行為が周辺二百五十万市民の生活に多大な悪影響を与えている。
 また、軍事基地の騒音は民間空港とは違い、定時に発生するわけではなく突然襲ってくる。これは横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とする空母艦載機の訓練によるものだ(空母は奇襲攻撃が主な任務であり夜間訓練は必然となる)。さらに人体に有害な低周波音も多発している。

これまでの闘いの成果
 このような人権が阻害されている状況を変えようと、一九七六年に第一次訴訟を、八四年に第二次訴訟を起こした。これらの訴訟は厚木爆同の会員百人ほどが原告となって取り組んだのだが、裁判所が人数を見て判決を出していると分かり、それならばもっと大衆的にやろうと大々的に原告を募った。九七年の第三次訴訟では五千人、二〇〇七年の第四次訴訟では七千人で闘った。
 四十年に渡る訴訟によって、厚木の爆音が受忍限度を超えた違法なレベルであることを判決で認めさせ、爆音に対する世論も前進させることができた。以前は米軍や日本政府に要請しても聞き入れられなかったが、国も爆音対策を迫られるようになり、具体的にはNHK受信料や防音工事の補助制度、あるいは夜間離着陸訓練(NLP)の大半の硫黄島(東京都)への移転などを勝ち取った。健康被害の立証でも成果があった。
 第四次訴訟では、地裁と高裁で自衛隊機の一部飛行差し止めが初めて認められ、また高裁では将来分の損害賠償も認められた。しかし昨年末に出た最高裁判決では自衛隊機飛行差し止めも将来分の損害賠償も覆された。
 何よりも、これまですべての判決では米軍に対して「第三者の行為だから司法の力が及ばない」とノータッチだ。外国の軍隊が駐留して好き勝手に軍事活動を展開し、国の主権はないがしろにされ、国民の人権が無視されている。このようなひどい状況を放置し続けることは許されない。
 第五次訴訟ではこの壁を突破し、米軍機の飛行差し止めを勝ち取りたい。若い世代も原告団に入って活躍している。今年度中に一万人規模の原告団を組織し、司法に迫る意気込みだ。
 与党政治家などは「岩国基地への空母艦載機移転」を記したビラを大量に配布、今後は騒音問題が解決するかのように宣伝し、私たちの活動を妨害している。これまでの米軍の行いを見ても、岩国に移駐後も厚木を利用し続けるだろう。厚木が静かになるどころか、岩国にも被害が拡大するだけとなる可能性もある。このような甘言に住民が惑わされないよう訴えを強めたい。
 現在全国七地区で同様の裁判闘争をやっているが、厚木の訴訟が先駆けて良い判決を引き出した部分もある。今後も各地の訴訟団と連携して共に前進したい。

地位協定の問題も
 問題は爆音だけではない。これまで厚木基地周辺では年に一回ぐらい墜落や大きな部品落下など危険な事故が起こっている。
 ハインリッヒの法則というものがある。一件の重大事故が発生した場合、その裏では 二十九件の軽微な事故が発生しており、さらにその裏では三百件もの小さなミスが発生している、という法則だ。日常の作業で小さなミスや事故をなくすことが大きな事故を確実に防ぐことになる。
 しかし過去の事例を見ると、米軍の活動には日常的な安全上の手抜きがあるとしか思えない。これまで何度も米軍や日本政府に対策を申し入れているが、住民の安全は軽視され続けている。
 加えて、いま厚木基地には米海兵隊の垂直離着陸機オスプレイが頻繁に飛来するようになっている。現在沖縄に配備されているが、今後横田基地に配備される計画もあり、自衛隊も導入しようとしている。現在でも危険な厚木基地が今度どのような状態になるのか、目に見えている。
 オスプレイは全国を飛び交うので、別の基地で配備されれば厚木も無関係ではいられない。沖縄を含めた全国的な配備の問題を今後の裁判でも訴えていきたい。
 地位協定の問題も併せて訴えたい。厚木基地には日本側が権限を持ち自衛隊が管理している施設や区域があるが、実際には米軍の使い放題にされている。このような状況の背景には地位協定で米軍が認められている特権的地位が関係している。不平等な日米関係の問題点を問題提起していきたい。
 こうした取り組みが、東アジアの国々との関係を友好的に変えることにつながればと望んでいる。日本に米軍基地が存在することは、中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を武力で威嚇しているということ。必要なことは武力ではなく話し合いで解決するという憲法の基本精神に沿う外交努力だ。日米同盟をやめ、中国やロシア、韓国、朝鮮とそれぞれ等距離に新たに話し合いを始めるべきではないか。


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