労働新聞 2002年11月25日号 大衆運動

沖縄
全国レベルの保育環境求める

公的助成・認可推進 訴えストライキ

宮城 茂光・認可外保育ネット代表に聞く

社会福祉でも本土との格差が

 沖縄の保育園事情は、本土とはかなり異なっている。
 まず、全国約6000の認可外保育園のうち、約10%の520カ園が沖縄にある。沖縄全体でも、2万2312人の子供が認可外保育園(注1)に通っている。これは、保育園に通う子供の47%にもなる。全国平均は5%なので、非常に高い。しかも、うち60%が待機児童(注2)で、全国最悪だ。
 認可外保育園が多いのは、その設備が劣悪だからでは決してない。現に、300坪以上で100人以上の子供を預かるような認可外保育園がいくつもある。
 これが認可されないのは、沖縄の社会福祉政策の遅れに原因がある。復帰後、認可外保育園から認可園への移行が遅々として進んでいないのだ。現に、この20年間で、認可外から認可に移行した保育園は、わずか10カ園にとどまっている。米軍基地の問題は折に触れて問題になるが、本土との格差は基地だけではない。
 本来、保育園が認可外から認可に移行できるよう、行政は十分に助成などを行うべきだ。ところが、子供1人当たりだと、公立保育園では約200万円、私立法人は約100万円が助成されているのに、認可外では3000円程度にしかならない。これでは、行政は責任を果たしているとはいえない。
 一部の問題のある保育園を取り上げて、認可外保育園のすべてに問題があるというのは間違いだ。現に私たちは、社会的な役割を果たしているし、「なくてはならない」存在だ。もし、認可外保育園を排除してしまったら、子を持つ親は働きに行けなくなってしまう。

ストに保護者も理解、支援の声

 こうした中、国は10月1日から認可外保育園の届け出制を実施し、行政の指導が強化された。これで、サービス内容や利用料、職員の配置数、入所定員などを届け出る必要があり、保育士の数など基準を満たしていない園は、県の指導を受けることになる。
 沖縄では事情が違うのに、全国と一律の基準を適用されても経営が成り立たなくなるだけで、十分な保育はできない。
 保育料収入だけでは、子供3人に保育士1人というような、国の指導規定に従った保育はできない。助成がままならず経営難なので、保育士も長時間・低賃金で働いている。この待遇を向上させることこそ、子供の安全につながる。
 もし、本土並みの割合で認可保育園へと移行できれば、それだけで2000〜4000人の保育士の雇用が生まれる。全国一失業率が高い沖縄にとっては、保育園の整備も立派な雇用対策だ。
 今回のストライキは、こういた実情をアピールし、知ってもらうために行った。地方議員でさえ、実態を知らないのだ。私たちは過分の要求をしているのではなく、沖縄の保育を本土並みにしたいだけだ。
 幸い、父母もほとんどが理解を示してくれ、「認可外園がなくなると仕事ができなくなる」「認可と認可外にそんなに差があるとは知らなかった」との声が強い。
 行政もようやく動き始めているようなので、これからも認可外保育園への助成強化など、緊急対策を訴え続けたい。
(注1)保育園事業は自由に参入・運営できる。児童福祉法に基づいて設置された認可保育園に対し、認可外保育園には事業所内保育園や病院内保育園、ベビーホテルなどがある。
(注2)保育所への入所を申請していながら、入所待ちとなっている児童のこと。


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