労働新聞 2002年10月15日号 大衆運動

在日朝鮮人への嫌がらせ 許すな

  日朝首脳会談で明らかになった拉致問題を契機にして、在日本朝鮮人総聯合会、在日朝鮮人への攻撃が相次いでいる。こうした事態は、わが国支配層やマスコミなどが、国民の悲しみや驚きの感情を利用して、意図的に騒ぎ立てることで、いっそう加速されている。こうした中、非政府組織(NGO)のピースボートは「在日朝鮮人への攻撃やめて」と題した緊急アピールを発表、9月19日には、東京で嫌がらせをやめるよう訴える街頭行動を行った。ピースボートの野平晋作氏に聞いた。

街頭で「在日への攻撃やめよ」訴える
ピースボート・野平 晋作氏に聞く

 日朝首脳会談では様々なことが決まったが、結果として、大きな焦点となったのは拉致問題だ。この問題が報じられて以降、全国各地で在日の人たちが、様々な嫌がらせなど人権侵害を受けている。
 私たちは、こうした嫌がらせは、どう考えても理不尽だと思う。そして、日本人としてもこれは大変恥ずかしいことだと強く感じた。そこで、私たちと同じ思いを持っている人たちは大勢いると思い、声をあげることで、こうした嫌がらせを許さない世論づくりができれば、との思いでこのアクションを起こした。
 日朝首脳会談については、ピースボートの中でも様々な意見があったが、皆一同に、「在日の人たちに対する嫌がらせは、許せない」ということでまとまった。
 また、もう1つは、日本の植民地支配、強制連行や慰安婦の問題も今こそ声をあげていかなくてはいけないと思った。いま日本では、在日の人たちからはこの問題について言いにくい状況にある。逆に日本人の側から、主体的に言っていく必要があるのではないか。
 そして、1日も早くアクションを起こして、声をあげようということで、例えばメールで知り合いに流したりして呼びかけ、当日は五十人くらいが参加した。参加した人の中には、仕事を休んで来たりとか、遠くから来たりと、やはり多くの人がこの問題で心を痛め、声をあげなくてはと考えていたようだ。また、ピースボートとしても何度も朝鮮には行っているので、いっしょに行った人たちなども多く参加した。
 街頭でのアピール活動の反応は悪くはなかった。くってかかったり、というものは一切なかった。やはり、拉致問題について関係のない在日の人たちに対する嫌がらせはどう考えてもやはりおかしい、ということは、誰が聞いても納得することだ。

戦争責任考えるきっかけに

 この間、戦後補償問題などについて歴史認識がまったく欠如した話が、ずっとされてきたように思う。その意味で、拉致問題もなし崩しではいけないけれども、日本も同様に過去の植民地支配の問題をなし崩してはいけない。
 いま、拉致の問題が大きな関心事となっているが、同じように、日本の戦争被害にあった朝鮮の人たち、そして植民地支配などのことについて無関心だった人が考え始めるチャンスとなればいいと思っている。

自国政府を変えていく責任

 「拉致被害者の立場に立つのか」「日本外交の利益を考えるのか」という論理の建て方はおかしい。拉致問題の解決と日朝の国交正常化は対立しないはずだ。
 日本の植民地被害を認めたがらない人たちが、「拉致問題の解決なしに国交正常化は認めない」と言っている状況だ。
 これからも、戦争責任の問題をきっちり追及していこうと言いながら、同時に国交正常化をしていこうと訴えていく。
 市民レベルの国際協力には2つの責任があると思う。1つは、政治状況に左右されない信頼関係を築くということと、もう1つは自国の政府に責任を負うということ、そして問題があるならば、自国の政府を変えていく努力をするということだ。
 例えば韓国などで、「アジア女性基金」が反発を受けているが、それは本来、戦争責任はまず国として認め、謝罪することが大事だということだ。私たちが政府に代わって謝罪するのではなくて、戦争責任を認めない政府を変えていくことこそが、私たちの責任だ。

全国で多発する在日朝鮮人などに対する不当な攻撃
9月17、18日両日に限って起きたものの1部。
その後も埼玉などで同様の嫌がらせが続いている。

【宮城】
・東北朝鮮初中高級学校のホームページに、「朝鮮人帰れ」といった書き込みが相次ぐ
・東北朝鮮初中高級学校に「殺すぞ」という電話
【栃木】
・総聯栃木県本部に嫌がらせ電話が相次ぐ
【埼玉】
・朝鮮初中級学校と朝鮮幼稚園では集団下校
・さいたま市内の焼肉屋に「店をつぶしてやる」と脅迫電話
【東京】
・総聯中央本部に「北朝鮮に帰れ」「殺すぞ」といった電話が数十件以上
・総聯中央本部周辺を右翼の街宣車がうろつく
・朝鮮中高級学校に「おまえらぶっ殺す」と電話
・WBCスーパーフライ級王者で在日朝鮮人三世の徳山昌守選手の公式ホームページにある「応援掲示板」が、「北へ帰れ」など誹謗中傷する内容の書き込みが相次いだため閉鎖。所属する金沢ジムにも嫌がらせ電話が
【神奈川】
・朝鮮初中級学校に、「朝鮮に帰れ」「拉致問題をどうしてくれる」といった約30本の嫌がらせ電話
・総聯県本部に、「朝鮮学園を爆破する」といった脅迫電話
・朝鮮初中高級学校では、女子児童がバスの中で、男性に「この朝鮮の学生が」となじられ足をけられた。同校には「朝鮮人は国に帰れ」「危害を加えてやるぞ」など嫌がらせ電話が約30件あった
【長野】
・松本の朝鮮初中級学校では、嫌がらせ電話が
【新潟】
・朝鮮初中級学校に「数カ月以内に子供たちに害を及ぼす」といった嫌がらせ電話が
【愛知】
・中高級学校では、女子生徒が一宮市駅で男にスカートの裾を引っ張られ「朝鮮人か」と罵声を。別の女子生徒4人も名古屋市内の駅で暴言を吐かれた。いずれもチマ・チョゴリ姿だった
・在日朝鮮人愛知県商工会会館に、「めぐみさんを帰せ」などと書かれたスプレーの落書きが発見される
・総聯県本部には「学校はどこにある。カッターで切りつけてやる」といった電話が16件、メールが40本も
【大阪】
・市内の朝鮮初級学校に「生徒を殺すぞ」という脅迫電話。他の複数の朝鮮学校にも同様の電話あり
・総聯府本部に、「朝鮮に帰れ」といった内容の嫌がらせ電話がひっきりなしにかかる
・朝鮮初中級学校に登校中の女子中学生が、中年女性に無言で背中を突き飛ばされた。同市内の別の学校ではチマ・チョゴリで自転車登校していた女子中学生が、男性から石を投げられた
・生野区の路上で、中級学校2年の女子生徒が、高校生風の男5人から暴言を吐かれ、たばこの箱を投げつけられた
【兵庫】
・神戸朝鮮高級学校では、「北朝鮮に帰れ」などと嫌がらせ電話が数件
・垂水駅で朝鮮高校の女子高生に、日本の男子高校生数人が「拉致してやる」との暴言
【奈良】
・県警に「朝鮮会館を爆破する」という内容の電話が。総聯県本部は朝鮮初中級学校に集団登下校を指示
【広島】
・朝鮮初中高級学校には、ホームページに「朝鮮へ帰れ」「お前らは鬼畜だ」といった書き込みが12件あったほか、金正日総書記の名で「拉致した」と画面いっぱいにつづった悪質なメールも送られた
・総聯県本部にも脅迫の電話。右翼街宣車が誹謗の演説
【山口】
・総聯県本部に、北朝鮮を「テロ国家」などと非難する抗議電話が数十回

 


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