20020705

諸悪の根源=WTOを批判
ローマNGOフォーラムに参加して

坂本進一郎氏に聞く


 国連食料農業機関(FAO)がローマで開催した世界食料サミット五年後会合が6月13日閉会した。同時に行われた非政府組織(NGO)によるフォーラムでは「食料不安の根源はワシントン」と指摘するなど、米国のグローバル経済による貧困の拡大や農業破壊が厳しく批判された。このフォーラムに「秋田県労農市民会議」を代表して参加した農民作家の坂本進一郎氏に聞いた。

 今回のNGOフォーラムでは飢餓人口の削減、貧富の格差拡大が大きな問題の1つとして議論された。
 前回のFAOサミットの時、「2015年までの飢餓人口の半減」をうたった「ローマ宣言」に対しキューバのカストロ議長は「たった半分か」と演説して大拍手を受けたが、実際にも飢餓人口の削減は進んでいない現状が改めて浮き彫りとなった。そこでいちおう「ローマ宣言」の履行を決定し、NGOフォーラムでも飢餓人口の削減に向けた行動計画を決めた。
 また、「食料主権」も大きなテーマとなった。前回も議論されたが、引き続き議論された背景には、世界貿易機関(WTO)発足し、「自由貿易」の名の下に各国の食料や農業をめぐる環境が悪くなっていることが指摘できる。
 FAOサミットでは米国の代表が「もう国境はない」と主張して、食料難に陥った国に対しては「援助する」という考え方を打ち出した。こうした主張に対しては参加した多くの途上国をはじめ、各国から強い批判の声が出た。NGOフォーラムで決定した行動計画の中でも米国のやり方を強く批判する文言が入った。
 遺伝子組み換え作物の問題も大きな焦点として取り上げられた。
 問題は、WTOが自由貿易という形で遺伝子組み換えを容認していることだ。在来の農法で生産してきた農民が「遺伝子組み換え」の農法で駆逐されるおそれもある。
 また、NGOフォーラムで特徴的だったのはアジア各国からの参加者の数の多さと元気の良さだった。インドネシアからの参加者は、スハルト体制がひっくり返って、新しい政権の下で農業をもう一回立て直す意気込みを訴えていた。
 今回、FAOサミットに首脳級で参加したのは開催地のイタリアとスペインだけだった。途上国からすれば直接先進国に自国農業の厳しさなどを訴えたかったのではないか。
 結局、国際的な食料問題の解決の根本にはWTOの存在があり、ここを攻めなければどうしようもないことも分かった。実際、WTO発足によって日本もそうだが、各国で家族経営を基本とした農業は衰退させられている。
 フランスの農民で、シアトルのWTO閣僚会議で活躍し、反グローバル化の英雄とまでいわれた「農民同盟」のジョセ・ボベ氏は今回もデモの先頭に立った。
 ひるがって、日本でも減反政策を廃止して、市場価格をもとにして生産量を判断する方針を農水省が示すなど、市場中心の農政が一層行われようとしている。
 もはや議論するだけではどうにもならないことが分かったし、やはり農業を守り発展させる行動の重要性を痛感した。