20020515

トラック協会

軽油取引税・高速道路料金 引き下げを政府に要求
経営危機突破へ行動起こす

全日本トラック協会 明智 公司・常務理事に聞く


 不況とそれに拍車をかける小泉改革によって、国民各層の生活と営業は危機に追い込まれている。ほとんどが中小のトラック業界も、経営危機が深刻だ。危機打開へ、全日本トラック協会(浅井時郎会長)は5月15日、東京で全国総決起大会を開く。同協会の明智公司常務理事に、業界の現状や要求などを聞いた。


 トラック運送事業者は全国で5万5427社(2001年度末現在)あり、約120人の従業員が働いている。業界はいま、きわめて困難な経営環境にある。
 1つは、バブル崩壊以後の長引く不況だ。企業収益が圧迫されていることが、輸送部門にも大きく影響している。2000年度末までの10年間、国内貨物の輸送量はトン数で6%も減少した。運賃もデフレの影響を受けて下落傾向であり、採算がとれない事業者が多い。
 トラック業者はその99.7%が中小企業で、所有するトラックが10台以下の中小零細が約半分を占め、従業員の賃金抑制などでしのいでいる場合が多い。だが、いつまで耐えられるか楽観できない。
 もう1つは貨物量そのものが伸びていないにもかかわらず、業者の数が増えて過当競争になっていることだ。1990年に物流2法が施行され、トラックを5台持てば事実上参入できてしまう。この結果、一般貨物業者はこの年から10年間で38%も増加している。約1万4000事業者が新規参入した形になり、価格競争で売り上げが下がっている。われわれは規制緩和を一概には否定しないが、大きな影響が出ているのは事実だ。
 こうした結果、貨物運送業者の事業収入は91年度を100とすると、2000年度は73.9にまで減少した。経常利益では赤字企業が40〇%で、10台以下の規模になると、これが52%にものぼっている。倒産も2000年度は527件と、前年度比で18%も増加した。

環境規制も負担増に
 昨年6月、自動車NOX・PM法が公布され、大都市圏を対象に、大気汚染物質の排出規制が強化される。これまで規制対象だった窒素酸化物(NOX)に粒子状物質(PM)が加わり、対象地域も広げられた。
 これに伴い本年10月から車種規制が実施され、一定の車齢を超える車両は排出規制に適合したものに買い替えなければならない。だが、この資金負担は1兆円を超えると推定され、業界では資金調達への不安感が強い。それに、約12〜13年使えたトラックを7〜9年で買い替えざるを得ないということになると、車の稼働期間が短くなり、その分収入が減ってしまう。
 もちろん、実施までの期間をおくよう政府に要請を行っており、車種規制が半年延期されるなどの緩和措置が取られている。だが、どのみち車両を買い替えざるを得ない。
 加えて、東京都や神奈川県では、猶予期間を独自に1〜2年前倒ししており、国の規定とズレがある。これでは整合性がとれず、われわれは国に合わせてほしいと要望している。もし独自の規制を行うなら、それに対応した支援措置などを講じてほしい。
 トラック協会としても、省エネ運転やアイドリング・ストップ運動など、独自の環境対策を推進しているところだ。国や自治体には、いちだんの配慮を求めたい。

支援なしに生き残れない
 われわれもコスト削減を進めているが、もう限界にきている。これ以上、賃金へのしわよせは避けたい。あとは税金や高速道路料金など、政府の関与している部分を軽減してもらわざるをえない。これがないと、事業を継続できない。
 トラック協会は5月15日、経営危機突破の全国総決起大会を東京で開く。ここでのスローガンの最重点項目は、軽油引取税の暫定税率撤廃と、高速道路料金の引き下げだ。すでに各地の協会も3月、総決起大会などを開いている。
 トラック業界は自動車関係諸税を全体で約7500億円負担しているが、うち約5600億円が軽油引取税だ。もともと、この税金の本則税率は1リットルあたり15円だが、「暫定措置」として徐々に引き上げられ、現在32円10銭にもなっている。とくに、93年に7円80銭もの税率引き上げが行われており、業界としては、せめてこの分だけでも撤廃してほしいと要望している。
 また、トラック輸送は高速道路を使わずには不可能だ。だから、高速道路などの通行料金を引き下げてほしいという要望を出している。

道路特定財源維持すべき 外形標準課税に反対
 軽油引取税は道路特定財源の1つだが、この一般財源化というのはおかしな話だ。
 本来、道路整備の費用を自動車ユーザーだけに負担させるべきではないと思うが、トラック事業者は道路を日頃使っているので、その整備目的なら「仕方ない」という気持ちで税金を払っている。それを一般財源化し、別な方面に使うというのは、「約束が違う」という気分だ。一般財源として使うなら、まずその分の税金を返した上で、議論すべきである。負担する側の言い分も聞いてもらいたい。
 法人事業税の外形標準課税についても、反対の立場だ。
 もちろん、地方行政として景気に左右されない財源を確保したいというのは分かる。だが、いまの外形標準課税の論議は、労働報酬などを基準に課税するというもので、労働集約型産業であるトラック産業としては負担が非常に重くなってしまう。約半分を占める赤字事業者にもかかってくるわけで、影響が大きい。
 トラック業界は、一般国民に理解されていない面があると思う。路上をトラックがたくさん走っているのはわかっても、バスや電車のように自分が直接利用するわけではないので、生活とどう関係しているか分かりにくい。だが、阪神・淡路大震災当時の救援物資輸送のように、貨物輸送産業は国民生活上の重要な役割を担っている。われわれは国民のライフラインとして重要な役割を担っていることを自覚しながら、事業にまい進していきたい。