20020315

医療制度改悪
患者負担が2割から3割に、保険料も引き上げ
国民犠牲の小泉政権へ怒りを
生活苦に追い打ち許せない


 政府は「医療制度改革関連法案」を国会に提出した。患者負担を2割から3割にし、医療費の自己負担限度額も引き上げる。勤労者が加入する保険の保険料も引き上げる。また、高齢者にも負担増を押しつける(別表)など、国民総犠牲の改悪案であり断じて許されない。怒りを小泉政権にぶつけ、これと闘おう。看護協会はすでに、看護要員の抑制、削減が行われないよう求めている。日本医師会も、これ以上の患者負担増は家計破壊となると反対を表明している。労働組合も、高齢者団体も反対の声をあげ1000万署名などを展開している。澤田誠悦全国医療事務局長、日本高齢・退職者連合で社会福祉を担当している深瀬清祐事務局次長に聞いた。


短期間に81万人の署名
日本高齢・退職者団体連合事務局次長 深瀬 清祐氏

 健康保険は戦前戦後を通じて、いくら財政が苦しいときでも本人負担は原則無料で、それが基本だった。それを5年前に1割負担にして、そして今度の案だ。絶対認められない。
 70歳以上の高齢者は、1回800円で受診できていた。それが最高で8000円にもなる。国民年金の月5万か6万だけの収入の人が、8000円持って病院に行くのは大変だ。
 社会的入院の問題もある。本当は福祉で面倒を見なければならない人を、介護施設がないなどの理由で医療が支えている。そういう問題に全然触れないで、負担ばかりを押しつける。
 それと、大病院と中小、あるいは診療所の連携をどうするかや薬価の問題、いわば医療供給体制の側に全然メスが入っていない。
 社会保障の発展には労働運動の高揚があった。三池と安保闘争の後、新国民健康保険法が施行され、国民皆保険体制が完了した。年金に物価スライド制を導入した過程には年金ストを構えたことがあった。健康に対する関心も高まり、医療にとっては画期的なことだった。
 退職者連合は、医療の充実策として予防医療をきちんとすること、早期発見、早期治療のシステムをつくるための運動をしていく。
 医療保険制度改正の署名運動を昨年の12月から行った。思った以上に反響があり、短期間で81万人分集まった。3月6日に集会を行い、署名を衆議院議長あてに提出した。署名運動は引き続き行っていくが、あらゆる行動で、医療保険改悪の関連法案の廃案をめざしていく。

医療体制充実こそ急務
全国医療等関連労組事務局長 澤田 誠悦氏

 全国医療は、自治体病院で働く労働者が圧倒的に多い。地方には医療過疎地が多く、そこでは自治体病院ががんばってやるしかない。
 今回の医療制度改革案で診療報酬が2.7%引き下げになった。それに、地方交付税も引き下げられる。  財政状況がさらに厳しくなれば、自治体病院自身が窮地に立つが、労働者には賃金を下げる、人を減らすという攻撃になる。もう一つは、業務の民間委託がどんどん進んでいくと予測される。ただでさえぎりぎりの状況でやっている医療現場の労働者がますます厳しくなる。同時に、医療の質がなかなか確保されなくなっていく。
 小泉首相が言う「聖域なき構造改革」というのは、経済効率最優先ですべてがそこに集約される。医療は効率では計れない。それを押しつけられたら、現場での矛盾はむしろ拡大する。
 私たちは「いつでもどこでもだれでもが必要な医療を受けられる」で、安心して暮らせる町づくりを運動の基本理念にしている。
 当面の運動は、疾病予防、健康維持の対策も柱の一つとなる。保健と医療と福祉をすみ分けではなく、ネットワークを地方自治体単位に確立していく運動もやっていく。
 それから、医療提供体制を強力に推進していきたい。市町村合併、地方交付税の引き下げに見られるように、地方の切り捨てが進んでいるが、こういう所にこそ国がもっと積極的な財政投入を行い、国の責任として医療の充実をはかっていくべきだ。
 毎年取り組んでいる全国医療の闘争は、今年は5月10、11日に行う。全国の医療関係労組が結集して10日に集会を開く。そこでも政府に強く要求をぶつけていく。