20020305

仕事がない、銀行は貸しはがし
中小企業は悲鳴をあげている
小泉政権に要求をぶつけよう


 出口のない長期不況のもとで、中小企業はかつてない危機に陥り、加えて、産業空洞化による仕事の減少、貸し渋り、貸しはがしで資金繰りの困難さに直面し悲鳴をあげている。自殺に追い込まれた業者も後を絶たない。この現状に対し小泉首相は、相変わらず「構造改革」を叫び、中小企業にさらに追い打ちをかけている。現在国会で審議中の2002年度予算案でも、中小企業対策費はわずか1861億円で、しかも昨年度より減らしている。中小事業所には約4400万人が働いている。中小企業の危機突破のために政府の責任を追及し、仕事の確保、中小融資の保証など、小泉政権に要求をぶつけよう。全国中小企業団体中央会の橋本一美企画部長、王子工場協会役員に現状や要求を聞いた。


今は需要喚起の思い切った政策を
橋本 一美 全国中小企業団体中央会企画部長

 中小企業の現状は、売上高や収益状況が大変悪くなっている。雇用人員についても、人員の増減を前年同月比で見ると、最低値を記録した。
 金融の面でも環境は悪く、銀行の貸し渋り、場合によっては貸しはがしで、これまではあまりこの種の報告は地方から来ていなかったが、それが多くなった。中小企業は持ちこたえられないという、非常に厳しい現実がある。資金繰りでだめになって事務所の中で首をつった人もいる。
 こういう現実を招いている要因は、個人消費が振るわないこと、それと産業の空洞化にある。
 私は石油ショック(73年)も円高不況(86年)も経験したが、当時は短期にはきつくても、経済の基調は右肩上がりだったから、がまんすればという気持ちがあった。今は先が見えない。今までになく悪い状況が長い。
 政府は、この現状に追い打ちをかけて、来年度税制改正をめどに外形標準課税を導入するとしている。団体の命運をかけて何としても阻止したいと今、外形標準課税反対の署名運動を展開している。6月初めに要求をぶつけたい。
 地域には中小企業がたくさんある。それなりの人も抱えてやっている。地域の中小企業がおかしくなることは、地域経済はもちろん、日本がおかしくなることだ。政府は中小企業のためにやっていると言うが、予算を見ても、年間で一般会計で2000億円ぐらいだ。大きい企業の何千億もの債権放棄という話を聞くと、中小にも目を向けよと言いたくなる。
 小泉首相が「構造改革」を言った時、あの時は非常に景気が悪かったから、同時に景気対策をきちんとやってもらいたいというのはあった。ところが、あの時期はそういうことを言うとたたかれるという状況だった。今は、これだけデフレになり、需要を増やすための思い切った政策をとってほしい。中小企業の経営者にはその声が強い。

「改革」には本当は反対だった 景気回復につながらない
王子(東京・北区)工場協会役員

 この地域は従業員が10人以下、多くは数人規模の零細に近い工場が多い。だから産業、景気の動向によってその波を直接かぶる。金属加工、組み立て工場もあるが、印刷関連工場が多いのが特徴だ。
 ここ数年の状況は、1つは、元請けの海外移転あるいは海外への発注で仕事が極端に減った。2つ目は、元請けからコストダウン(単価切り下げ)の要求がきついこと。3つ目は資金繰りに困っていることだ。
 最近のことでは、IT(情報技術)産業の不況で、関連の会社が立ちゆかなくなったことと、銀行の対応が非常に厳しくなったことだ。
 資金繰りはどの会社も四苦八苦している。銀行からは、やれ担保物件だとか保証人だとか返済期限だとか言われる。政府は、中小・零細企業の現状にもっと目を向けるべきだ。その上で銀行への指導をきちんとすべきだ。
 今だから言うわけではないが、小泉首相が「構造改革」と言った時に、産業界の本当の腹の内は批判的だった。景気回復につながるとは思えないからだ。それと、小泉首相の言葉だと何でも民営化だと聞こえる。そうなると政府の責任はどうなるのか。商工中金が民営化されたら、中小企業の資金調達はなおさら苦しくなる。
 40代、50代と働き盛りで、社会を支えている世代が一番厳しい状態に置かれている。デフレといわれるが、この世代が委縮することになれば、景気にとっても心理面からの影響が大きい。社会のあり方の問題にもなってくる。