20011215

国民犠牲の医療制度改悪
医師会、看護協会、退職者連合が反対表明

共同して小泉改革と闘おう


 政府・与党社会保障改革協議会は、11月29日に「医療制度改革大綱」を決定した。政府管掌健康保険料の引き上げと、本人の患者負担を2割から3割に引き上げる、高齢療養費の自己負担限度額の引き上げ、高齢者医療制度対象者の年齢引き上げなど、総じて、国民に大幅な負担を強いる内容だ。政府は、実施時期を2003年度からとしているが、高齢者医療の改悪は2002年度から実施するという。
 小泉政権は、今年6月に構造改革の基本方針を決定、その中に社会保障制度の改悪を明言していた。今回の「大綱」はその決定の具体化である。長期の不況で国民生活はがまんの限界にあるが、それに追い打ちをかける社会保障制度の改悪である。
 しかし、小泉改革がうまく進む保証はない。構造改革反対、抵抗の運動は広がりをみせている。道路特定財源の問題では、地方の首長が相ついで反対の決起大会を開いた。
 今回の社会保障制度改悪案にも、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会などが反対を表明している。三者は共同で、12月1日に「医療を守る全国総決起大会」を東京で開き、3000人が参加した。日本医師会は、政府の「医療制度改革」に反対する署名を展開し、署名者は500万人を超えた。11月23日には、大阪で府医師会、老人クラブなどが連携して2万人の決起集会を開いた。
 日本高齢・退職者団体連合は、高齢者への負担増、犠牲押しつけは断じて許せないと抗議の声をあげ、闘いを準備している。
 小泉構造改革に反対する戦線をさらに広げ、国民運動を発展させよう。
 日本高齢・退職者団体連合事務局長の須藤義美氏に聞いた。

100万人署名運動を展開する

日本高齢・退職者団体連合 須藤 義美事務局長

 今回の「大綱」は、抜本的対策が示されたとも思えず、全体に将来展望がみえない。
 私たち高齢者団体の立場からすると、一番問題なのは、高齢者医療の対象者を70歳から75歳に引き上げたことだ。それと、今まで退職者医療制度があった。職場を辞めてから70歳になるまでの間に適用される制度で、国庫負担が半分あったが、これをなくすという。なくした場合、健康保険からの拠出金が増額されるのか。そうでないとすると、私たちの保険の負担が高くなる。どうなるかは今の段階では分からないが、国庫負担がなくなるのはけしからん。
 高齢者の自己負担を定額から定率にすることはそんなに抵抗はない。というのは、今の定額で、診療所の場合だと定率よりも負担が多くなっていることもある。定額にしようが定率にしようが、問題は、患者負担の上限が引き上げられることだ。月収56万円未満の人が、現在は63600円が72000円になるという。ここまで上げるのは大きな問題だが、この上限が72000円で止まるかどうかもはっきりしない。
 高齢者への負担が増大するということは、現職の人の負担も大きくなるし、その人たちが年をとった時にますます苦しくなる。現職の人たちにもがんばってほしい。
 小泉首相は今度の「改革」案を「三方一両損」と言っているが、私にいわせれば「一方三両損」だ。国も負担し、医者も国民も負担するというなら分かるが、国だけが一方的に財政負担を削るという。国庫負担は出さないで他の二者に押しつけたものだ。
 私は、本来は保険料を払えば医療費負担はないのが当たり前だと考えている。所得の多い富裕層は、それだけ保険料を払っても不思議はない。保険料負担で差をつけ、医療費負担はなしにする。これが普通だと思うが、現在でさえ社会保険らしくない制度がさらに改悪される。
 小泉首相は、「改革には痛みを伴う」と言い、年金のことでも「物価連動にする」と言った。これは、年金受給者だけが苦しむだけでなく、生活保護費も下げることになる。女性の平均の年金は、30年働いた人でさえ月10万〜12万円程度だ。福祉年金を受給している人は月3万か4万円しか受け取っていない。これでは医者にも行けない、介護保険にもかかれない。こんな不況の中で四苦八苦している人に追い打ちをかける政治だ。とても許せない。
 日本医師会も反対しているが、医師会にも痛みがあるだろう。つぶれる病院もあるし、公立病院はいま採算が取れていない。医師会も患者負担はけしからんと言っている。
 これからの運動として、百万人を目標に署名活動を行う。簡単な数字ではないが、がんばりたい。年内には政府と政党に働きかける行動も行う。来年の通常国会で法案審議が始まる時(2月中旬頃)に集会など取り組むことも決めた。さらに、各県で県選出の国会議員への要請行動も取り組む。