20010825

遺族を先頭にデモ
小泉首相の参拝許さぬ

靖国参拝は亡国の道


 小泉首相は、内外の激しい反対を無視して八月十三日、靖国神社を公式参拝した。十五日の終戦記念日を避けることで、内外の批判をかわそうとする姑息(こそく)な態度に、かえって中国、韓国をはじめ、日本国内からも激しい怒りの声がわき起こっている。首相・閣僚などの靖国参拝は明らかに侵略戦争を美化する行為であり、わが国をアジアと敵対させる亡国の道である。十五日を前後して、参拝に抗議する行動が東京、大阪などで闘われた。

東京 平和遺族会ら500人が結集

 「小泉首相の靖国神社参拝を問う! 平和の集い」が八月十五日、東京で行われ、全国から約五百人の遺族、労働者、学生などが参加した。主催は、全国十四都道府県の平和遺族会で構成する、平和遺族会全国連絡会。
 参加者で会場があふれる中、中山敏雄・群馬平和遺族会事務局長が開会あいさつを行った。中山氏は、「靖国神社参拝は日程の問題ではない。しゃにむに軍事大国化を進める小泉政権は危険で、許せない」と述べ、二日前の小泉首相の行動を侵略戦争を美化するものとして批判した。
 続いて、西川重則・全国連絡会事務局長が「追悼しつつ、戦争の準備をする」と題して基調報告を行った。
 西川氏は、まず、「私たち遺族は、戦後、肉親を失った悲しみを消すことはできなかった。だが、六九年、靖国神社国家護持の動きが高まる中、戦死者を思うことから、声を上げることへと変わっていった」と、平和遺族会設立にいたる経過を振り返った。
 さらに、「遺族にとって、悲しみの風化はあり得ない。だが、政治の力学は侵略戦争を美化し、『英霊』とまつりあげることで、遺族の悲しみを忘れさせようとしている。まさに靖国神社は、『英霊』『自衛戦争』という考え方で貫かれている存在だ」と、侵略戦争の事実を美化・忘却させようとする動きを批判した。
 最後に西川氏は、「憲法二〇条で定められている政教分離の原則を知っていてもいなくても、小泉首相は失格だ。欺まん的な『追悼』を行いながら、日米共同宣言、新ガイドラインと戦争準備を進める政府や国会に対し、闘っていこう」と結んだ。
 神奈川平和遺族会の石崎キク氏は、「戦後になって、侵略戦争の事実や被害の真実を知った。私たちの肉親は『英霊』ではなく、加害者の立場に追いやられた犠牲者だ」と述べ、参加者各人の信仰と信条に従った、一分間の「沈黙の時」を呼びかけた。
 その後、日本人の父をもち「天皇の逝く国で」などの著書で知られる、ノーマ・フィールド・米シカゴ大学教授が記念講演を行った。
 氏は冒頭、「小泉首相の靖国神社参拝や『つくる会』の教科書を批判しながら、彼の構造改革政策を支持するのは矛盾している」と提起した。
 さらに、「政府主催の戦没者慰霊会では、常に『戦没者の犠牲のためにこんにちの繁栄がある』と言われている。だが、経済大国となったのは侵略戦争のためではなく、米国の占領政策として、日本の経済復興を必要としたからだ」と述べ、小泉首相らを批判した。
 氏は「『平和のため』といえば何をしてもよいような論調がある。だが、日本が主体的に世界とどうかかわるのかという問題も含め、平和の実態について、よく考え直すべきではないか」などと問題提起した。
 次いで、歩平・中国黒龍江省社会科学院副院長などからのアピールが紹介された。
 集会後、参加者は都内をデモし、小泉首相の靖国神社参拝への抗議と、軍事大国化反対をアピールした。


韓国遺族会が座り込み

 韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会などは、八月十一日から、靖国神社境内で小泉首相の参拝中止を求めて座り込み・ハンスト行動を闘った。同会からは九人が参加、支援者とともにプラカードや横断幕を掲げ、行動を貫徹した。
 また、遺族の意思に反して父親が靖国神社に合祀されている李煕子氏は、合祀の取り下げを求めて靖国神社社務所に要請を行った。
 右翼勢力が暴言をあびせたことに対し、李氏は「父は強制的に徴兵され、殺された。それを返してくれと言っているだけなのに、どうして非難されなければならないのか」と、涙ながらに抗議した。
 金鐘大・遺族会会長は、「戦死した上に合祀されては、二度殺されたようなものだ」と批判し、神社側の誠実な対応を求めた。


大阪 南京からも連帯アピール

 「小泉首相の靖国参拝を許さない!」集会が八月十五日、大阪で開かれ、約三百人の労働者、市民が参加した。主催は、同実行委員会。
 発言した弁護士の井上二郎氏は、「靖国神社関連では六つの訴訟が行われたが、いずれも、参拝には『違憲の疑い』があると認めている。また、侵略戦争への反省が一切ない靖国神社の高慢さは、許せない」などと述べた。
 徐勝・立命館大学教授は、「靖国神社は各地の護国神社や軍人墓地とともに、軍事施設でもあった。現在、米国は日本にさらなる軍事貢献を求めており、それを背景に、国旗国歌法や盗聴法、今回の首相の靖国参拝がある」などと暴露した。
 また、中国の侵華日軍南京大屠殺史記念館、韓国の太平洋戦争被害者補償推進協議会などからのメッセージが紹介された。侵華日軍南京大屠殺史記念館と南京日本歴史教科書問題研究会共同のメッセージでは、「靖国神社は軍国主義の招魂社であり、参拝するということはとりもなおさず、侵略戦争を肯定することであり、また、被害国人民の傷をまったく無視した新たな加害行動でもあります」などとしている。
 集会最後に、「靖国参拝にあくまで固執する小泉首相の強硬姿勢は、教科書問題への不誠実な対応とも相まり、アジア諸国をはじめとした国際社会の中で日本が信頼され、協調して生きていく道を閉ざすものです」などとする抗議文を採択、参加者は市内をデモし、市民に訴えた。

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