20010805

参拝の背景に安保強化

小泉首相の靖国参拝許すな

平和遺族会全国連絡会・西川 重則事務局長に聞く


 小泉首相は、日本国内や中国、韓国などの怒りの声をよそに、靖国神社への公式参拝を強行しようとしている。小泉政権は、アジアには大国づらをし、一方では米国に徹底して追随している。どういいつくろおうと、靖国参拝はわが国をアジアに敵対させ、亡国の道に引きずり込むものである。自主・平和の国の進路を実現するためにも、靖国参拝を許さぬ国民的運動を起こすことが、早急に問われている。参拝に反対して運動を続けている、平和遺族会全国連絡会の西川重則事務局長に聞いた。

 小泉首相が靖国神社を参拝しようとしていることについては、絶対に認めることができない。
 首相の参拝は、「政教分離」の原則に反するだけではない。むしろこの問題は、現在の政治状況全体の中で位置づけて考えることが大切だ。
 振り返れば、湾岸戦争や国連平和維持活動(PKO)による海外派兵にもさかのぼれる問題だが、近くは、九六年四月の日米共同宣言だ。
 ここで、当時の橋本首相は米国との間で日米安保の再定義に合意し、同盟関係をさらに強化する道に踏み出した。そうして、日米防衛協力の指針(新ガイドライン)や周辺事態法、有事法制整備の動きなど、政府が軍事大国化の流れをつくり出している。
 さて、靖国神社の性格についてだが、これは戦前、陸軍の保護の下で国民を戦争に動員するために使われた。戦後も、自民党を中心に七四年、「靖国神社法案」が提出されるなど、ずっと「国家護持」を狙う動きがあった。
 八五年、中曽根首相が公式参拝を行って、国内外から大きな反発を受けた。靖国神社の内部にすら、国との関係を見直す動きがあった。
 ところが九九年八月、野中官房長官(当時)が、国の靖国神社への関与を強めるべきという発言を行った。ここで彼は、靖国の特殊法人化や、A級戦犯を分祠して「全国民が参拝できるように」などと述べている。
 こういう中で、小泉政権が登場した。彼は「聖域なき改革」というが、靖国神社をまさに「聖域」化しようとしている。彼のような考え方は、別にいまに始まったものではないし、自民党内の考え方や安保強化の流れを継承しているものだということを、忘れてはならない。だからこそ、いくら近隣諸国が反対していても、彼は「参拝した後で考える」とうそぶいている。
 もちろん、首相が「私的に」参拝することなど不可能であり、彼が「公式」と明言しようがしまいが、事実上の公式参拝だ。
 また、どんなに「宗教色を薄めた」としても、憲法の政教分離の原則に反することは疑いない。
 だから、靖国神社の問題は孤立した問題ではない。先にふれた有事法制策動や海外派兵、憲法改悪の動き、教育三法の改悪や「つくる会」教科書の登場、森前首相の「神の国」発言にみられる天皇制イデオロギーなどとも結びついている。 この靖国参拝が許されれば、地方自治体の首長による各県の護国神社への参拝なども進むことが予想される。そういう意味では、韓国や中国が反対しているから、という「外圧」の問題ではなく、国内問題だ。

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