20010715

全国町村会も真っ向から反対

地方切り捨ての「改革」打破を


 参院選では「構造改革」が大きな争点となっているが、小泉政権は、「財政難」を口実として、地方交付税削減や道路税の見直しなど、大都市優遇、地方切り捨てを押し進めようとしている。こうした中、全国町村会は七月五日、東京で三十七年ぶりに臨時大会「町村自治確立全国大会」を約千九百人が参加して開催した。大会は事実上、小泉政権の進める地方切り捨て政策に真っ向から反対するものとなった。「小泉改革」に対する危ぐや反対の声は、地方を中心に広がっている。改革に反撃する幅広い連携と闘いを組織することは緊急の課題である。

 小泉政権の進める地方切り捨て策に対しては、すでに六月九日、第七十一回全国市長会であいさつした小泉首相にヤジが飛ぶなど、地方の反発は始まっていた。
 同会議では、「『地方交付税の削減』が論議されるのは、地方財政の実態からはもとより、地方行財政の仕組みからも理解できず、到底容認できない」などの内容を含む「都市税財源の充実確保に関する決議」「地方交付税の充実に関する要望」などを採択した。九州知事会なども、同様の見解を発表している。
 これを受け、全国二千五百五十四の町村長で構成される全国町村会で、「小泉改革」に対する批判の声があがるのは当然ともいえる。

交付税削減などに猛反対

 あいさつを行った山本文男会長(福岡県添田町長)は、地方が「地域住民の暮らしのみならず、食料や水、電力などのライフラインを供給し、国土の七割に及ぶ地域を守りながら国民生活を支えるという極めて重要な役割を担って」いることを強調し、「『地方交付税の削減』や『道路特定財源の抜本的な見直し』といった地方への支出削減を前提とした議論が先行し、都市のみを重視したいわゆる『地方切り捨て』のような論調が跋扈(ばっこ)した」ことに不満を表明した。
 山本会長は、マスコミのインタビューに対して「参院選後に出てくる改革の具体的内容によっては、臨時大会を再び開かざるを得ない」と、政府をけん制している。
 大会では、「国の財政事情から一方的に交付税総額を一律に削減することには、断固反対せざるを得ない」などとする「地方交付税総額の安定的確保に関する特別決議」を採択した。
 これと関連して、いわゆる町村合併に対しても、「数値目標や期限の設定、地方交付税の段階補正等の見直しなどによる合併の誘導措置」などに反対し、「国および都道府県はいかなる形であれ市町村合併を強制してはならない」とうたっている。
 大会最後に採択された「宣言」は、地方の立場をさらに鮮明に表明している。
 宣言は、「『地域間競争』や『自立』の名のもとに、地方を規模の大小や経済効率の優劣といった市場原理に委(ゆだ)ねることは、行政水準の後退のみならず農林水産業や地場産業を衰退させ、過疎と疲弊を助長し、自然に恵まれ人間らしい生活空間や歴史と伝統に育まれた豊かな文化を保つかけがえのない地域そのものの消滅につながりかねない」としている。

地方は国の活力の源泉

 全国町村会は、「二〇〇二年度政府予算編成ならびに施策に関する要望」もまとめたが、ここに掲げられた地方の要求には、道理のあるものが多い。
 「宣言」にも指摘されているように、効率万能を掲げる構造改革路線は、都市に対して食料や労働力、エネルギーなどを提供している地方の役割を無視するものである。そもそも、地方の存在なくして、経済成長はありえなかった。この歴史的事実を無視し、産業に恵まれない過疎地などにも「効率」「自立」を求めることは、地方そのものの破壊につながるものである。
 もちろん、「地方中心の国にする」などといいつつ、小泉政権と「改革を競い合う」民主党に期待することはできない。大会で、鳩山代表に対し「実行しなくちゃだめだ」とヤジが飛んだのも、当然である。
 地方切り捨てに対しては、地方財界の一部からも反対の声があがっている。大都市優先、地方切り捨ての改革をうち破る、幅広い大衆行動を巻き起こすことが求められている。


地方交付税総額の安定的確保に関する特別決議(要旨)

 地方分権の実現に向け、また、町村の自立に向けた取り組みを行うためにも自主的な財源を確保することは、必要不可欠である。
 町村にとって、課税自主権の活用による地方税の確保には大きな限界があり、地方交付税は、極めて重要な地方固有の財源となっている。
 国が法令等で実施を義務付けている事務や、国から地方への税財源の移譲を議論することなく、国の財政事情から一方的に交付税総額を一律に削減することには、断固反対せざるを得ない。
 国におかれては、地方交付税が果たしている財政調整機能等を十分に認識し、地方交付税総額の安定的確保を図られたい。

道路特定財源の確保に関する特別決議(要旨)

 道路は、住民の日常生活を支えるとともに、地域間の連携及び交流の活発化、また産業振興の基盤としても不可欠なものとなっている。
 しかしながら、道路特定財源について、その一般財源化などの議論がなされており、これは、道路整備が遅れている町村の実情を大きく見誤ったものであると言わざるを得ない。
 国におかれては、地方の道路整備の重要性を強く認識し、これに必要な道路特定財源の確保を図られたい。

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