20010625

東京 「アジアをしる会」が講演会

21世紀の教科書議論を


 「緊急集会・歴史をわい曲した教科書の検定合格に抗議する・事実に基づく歴史認識を」が六月十五日、東京で開かれた。主催は「アジアをしる会」で、約六十人が参加した。
 冒頭に教育現場からの報告があり、「杉並の教育を考えるみんなの会」事務局の東本久子氏と、小学校教師の長谷川和男氏が発言した。
 長谷川氏は、今年から教科書採択方法が大きく変更されてしまったことを報告した。氏は、「これまでは見本本を教師が閲覧し、順位をつけた上でいくつかを提案、それを参考に、教育委員会が採択するという方法だった。この方法だと、教委が順位をひっくり返せばわかるようになっている。だが今年からは、全五十五教科書のすべてにコメントをつけ、順位をつけずに提出する方法に変わった。だが、教科書は区に七セットしかこない。それなのに、五十五社分すべてにコメントをつけるのは時間が足りないし、非常に負担が大きい。現場の意見が通ったのかどうかも分からない」と述べ、「つくる会」教科書を採択させる雰囲気がつくられていることを暴露した。
 講演を行った琉球大学教授の高嶋伸欽氏は、侵略戦争を美化する「つくる会」教科書に対する、アジアの怒りを紹介した。
 「韓国や中国はもちろん、マレーシアでも怒りの声があがっている。たとえば、彼らの教科書では、マレー半島の華人がゲリラ活動を行ったため、日本軍が『掃討』したかのような記述になっている。だが、実際は英国軍がゲリラの主力であり、事実と異なる。マレーシアには、これらの問題で教科書の書き直しを求める声が起きている。さらに、日本の都道府県や政令都市に不採択の要請を行う計画もある」と紹介。さらに、「広島の校長が日の丸・君が代の押しつけを理由に自殺した問題も、マレーシアでは『日本軍国主義復活の犠牲者』と危ぐされている」と述べた。
 その上で高嶋氏は、「『つくる会』の教科書を読むことは非常にしゃくなことだが、よく研究して批判することが大事だ。それを通じて、二十一世紀の教科書がどうあるべきか、国民的な議論を起こすことが求められている。一人ひとりが一冊読むことで、十冊の『つくる会』教科書を採択させない運動を起こそう」と呼びかけた。
 また、日朝女性と連帯する日本婦人連絡会代表の清水澄子氏(参議院議員)は、「つくる会」教科書のもつ女性べっ視の性格を指摘、「これを読まされる女子中学生の心情を、政府は考えているのだろうか」と批判した。
 質疑応答では教育労働者からの発言もあり、侵略美化を許さず、アジアと共生するわが国の進路を考える上で、有意義な集会となった。

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