20010625

全国で採択阻止の運動を


  侵略戦争を美化し、アジアの怒りをかっている「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)による中学歴史・公民教科書の採択問題が、重大な局面を迎えている。わが国の進路をアジアと共生するものとするためにも、採択権をもつ各教育委員会に対し、さまざまな運動で「つくる会」教科書の採択阻止を迫ることが重要となっている。県内の団体に対して講師派遣の運動を行っている岩手県教組岩手支部や、県教育長に公開質問状を提出した愛媛県の運動などを掲載する。

岩手 諸団体に講師を派遣
岩手県教組岩手支部 野島 浩司書記長に聞く


 岩手県教組岩手支部には、八十二の分会がある。
 来年度から中学校で使用される教科書の採択が、七月末と迫っている。ここで「つくる会」教科書のようなものが採択されることは許せないので、われわれは、教科書問題での講師を希望団体に派遣するという活動に取り組んでいる。
 いちおう希望に応じて派遣するという形だが、こちらから積極的に出かけることも行っている。現在まで、県内五カ所での講演会・学習会が開催された。
 いまのところ、要請してくれた団体は教組の他支部、地区労、あるいは教師の社会科サークルなどだ。もし、市民団体などからの要請があれば、積極的にこたえていく。そのために、講師派遣活動についてのビラ宣伝を計画している。
 講演会場での参加者の感想を聞くと、この問題が通常思われているよりも根が深く、深刻な問題だということが理解されつつあるように思う。
 われわれとしては、この問題を自民党、財界、右翼勢力が一体となった攻撃であるととらえている。彼らの目的は、自衛隊の海外派兵の拡大であり、そのための憲法改悪だ。
 その実現のために、彼らは世論づくりを行おうとしているし、十年、二十年という長期的な視点で見れば、国民全体の精神構造を「戦争美化」の方向に誘導しようとしている。
 こういうことを理解すれば、問題は教科書だけの問題にとどまらないことがわかる。日教組は従来から平和の課題を重視してきたが、「つくる会」教科書の問題を通じて、ますます真価が問われているのではないか。
 われわれの活動は小さなことだが、これからもがんばっていきたい。


愛媛 市民団体が教育長に質問状
憲法に則し採択せよ
新しい教科書と教育を考える市民ネットワーク・えひめ 武田 正光氏に聞く


 「市民ネットワーク・えひめ」は、自主・平和・民主のための広範な国民連合・愛媛や反原発運動に取り組んでいた市民、キリスト教、仏教関係者などで構成している。
 今回の申し入れだが、五月二十五日に県教育長に公開質問状を提出した(要旨・別掲)のをはじめ、六月議会に合わせ、憲法に照らした公正な採択を求めるという趣旨で松山、今治、川之江、西条などの主要市に請願・陳情を行った。県議会に対しても、六月二十五日に請願書を提出する。今治市では、文教委員会で可決された。
 今回の取り組みに先立って、四月末から県内四カ所で、講演会・学習会などに取り組んできた。松山市内ではビラ宣伝も行った。
 また、七月には、韓国から教師団体の代表を招き、講演会を行う予定だ。アジアとの共生のため、歴史わい曲の「つくる会」教科書が採択されないよう、今後も活動を強めたい。

公開質問状(要旨)

一、教育長は教育基本法と日本国憲法の精神から見て、「つくる会」の教科書には問題がある、と考えていますか。
二、日本国憲法の根本原理を否定的に扱う「つくる会」教科書を検定合格させることのみならず、それを公務員が採択し、使用することは、憲法違反であると考えますが、教育長はどう思いますか。
三、(略)
四、(略)
五、教育長は、「つくる会」教科書において、子どもたちに対する同和教育、人権教育が可能であると考えていますか。
六、他民族、他国の立場をまったく考慮せず、自国の立場のみを正当化している「つくる会」の教科書が学校現場で使われることになると、現在の「教育崩壊」にさらに拍車がかかることになると私たちは考えますが、教育長はどう思いますか。
七、(略)
八、もし、「つくる会」の教科書が愛媛県内で採択されれば、観光、文化、通商、スポーツなど、さまざまなレベルにおける愛媛と韓国との交流関係に重大な問題が生じるのではないかと私たちは危ぐしていますが、教育長はどのように考えていますか。
九、(略)
一〇、教科書の「採択権は教育委員会にある」という解釈は、教職員の教育権に介入することになり、教育基本法や学校教育法に違反する疑いが強いという学者見解があることを知っていますか。
(以下略)

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