20010615

東京 アジアの人びとと共に

500人が文部科学省を包囲

わい曲教科書の不採択を


  「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)による中学歴史・公民の教科書が検定に合格し、現在は各教育委員会による教科書採択が焦点となっている。米国に追随してアジアを敵視し、海外派兵拡大に踏み切ろうとする支配層は、そのイデオロギー面での下支えとして、「つくる会」教科書などを利用している。アジアと共生する国の進路を実現する上でも、教科書問題は重大な課題である。東京では、アジアからの証言者を招いて連帯集会と文部科学省包囲行動が開かれた。

 「歴史わい曲教科書を許さない! アジア連帯緊急集会」が六月十一日、東京で開かれ、七百人が参加した。
 この集会には中国、韓国、フィリピン、マレーシアなどからも参加した。また、十日から開かれていた、「つくる会」の歴史・公民教科書の歴史わい曲・侵略美化に抗議する「アジア連帯会議」を受けて開かれたもの。
 開会あいさつに立った小河義伸氏(キリスト者平和ネット事務局代表)は「『つくる会』の教科書はアジアの人びとの尊厳を深く傷つけるものであり、未来を担う子供たちに渡してはいけない。教育委員会による採択をさせない運動を各地で盛り上げていこう」と述べた。
 続いて発言した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW・NET JAPAN)の松井やより氏は、「『つくる会』の教科書は太平洋戦争を美化し、植民地支配を正当化し、一方で『国家への奉仕』『国防の義務』を強調している」と断じた。
 さらに、「この問題はアジア全体の問題だ。『つくる会』教科書を許さない取り組みと同時に、アジアにおいて歴史教育を共有するネットワークを長期的な視点でつくっていこう」と訴えた。
 海外からの参加者からも報告があり、フィリピンから参加した元従軍慰安婦のバージニア・ビアヌバさんは、かつて日本軍兵士によって性的虐待を受けた体験を切々と語り、最後に「正しい歴史を消さないでください。歴史を変えないでください」と訴え、集会参加者からひときわ大きい拍手が送られた。
 韓国、中国やマレーシアの参加者からも「つくる会」教科書について「従軍慰安婦の存在を消し去っている」「侵略を美化する教科書を検定に合格させた日本政府の態度は許されない」「再び日本は戦争をアジアで起こすのか」と、口々に「つくる会」教科書とわが国政府に対して抗議と怒りの声が発せられた。
 また、この集会に参加を予定していた朝鮮民主主義人民共和国の「従軍慰安婦・太平洋戦争被害者補償対策委員会」の代表が、日本政府によってビザ発給を拒否された問題で、同委員会からの連帯アピールが紹介された。
 集会最後に「アジアの人びととの連帯を強める」「検定に合格させた日本政府の責任を厳しく問う」とした宣言を採択した。
 集会に先立ち、「歴史改ざんを許さない」「文部科学省は検定通過を撤回せよ」と訴えながら、五百人が人間の鎖で文部科学省を包囲した。


「子供と教科書全国ネット21」など
「あぶない教科書」から子供を守れ

 「子供と教科書全国ネット21」などの主催による「子どもに渡しちゃだめ! こんなあぶない教科書」と題する集会が六月九日、東京で開かれ、約五百人が参加した。
 あいさつしたの川田龍平・HIV訴訟原告は、「私たちは厚生省の責任明確化と謝罪を求めて闘ってきたが、彼らは『遺憾』『おわび』とはいうが真の『謝罪』はしていない。教科書に関する問題もこれと同じで、歴史の真実を解明し、罪を認め反省することがなければならないはずだ。そのための大きな世論をつくり出していこう」と連帯を呼びかけた。
 姜尚中・東大教授は、「『つくる会』は『日本の自立』と言うが、それはアジアに対してだけで、対米追随は変わらぬままだ。現在は、歴史観をめぐる激しい争いが行われている。採択させない運動を、各地でがんばっていこう」と提起した。
 「つくる会」教科書の記述についての報告では、VAWW・NET JAPANの西野瑠美子氏が「『つくる会』は歴史をわい曲して記述するのみならず、従軍慰安婦問題について教科書に書かないという『抹殺』も行っている」と述べるなど、数多くの問題点が指摘された。
 また、来日した韓国の「日本の教科書を正す運動本部」のイ・シンチョル氏は、「私たちの団体は、約八十の教育者・市民・宗教団体などによる運動体だ。今回、日本政府は北朝鮮から来日するはずの同胞の入国を拒否した。国は分かれていても、日本の教科書問題に対する南北の心は一つである。重大なことは、『つくる会』の背後に日本政府があることだ」と、日本政府を厳しく批判した。
 続けて、「この背景には、日本を戦争のできる国として復活させたいという狙いがある。私たちは、教科書問題への反省と是正、教科書の不採択を求めていく」と決意を表明した。
 さらに、「日本はいつまでウソを続けるのか」など、教科書問題に対する日韓の小中学生の意見が紹介された。
 最後に、「できるだけ多くの人びとにこの教科書の危険な内容を知らせ、知恵と力をしぼって教育委員会や先生、地域の人びとに働きかけ、『あぶない教科書』から子供たちを守り抜くよう訴えます」などとする集会アピールを採択した。
 政府の進める歴史わい曲策動に対し、国際連帯で反撃することを誓い合う集会となった。

ページの先頭へ