20010515

長野 連合、労組会議などが要請

侵略美化の教科書許さぬ

長野県教職員組合 藤田 茂樹 書記長に聞く


 過去の侵略をわい曲・美化した「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)教科書が検定に合格したことに対して、韓国の元従軍慰安婦たちが国会前で座り込みを行うなど、アジア諸国から厳しい批判が起こっている。わが国がアジアと共生する進路を実現する上でも、侵略戦争への反省を踏まえた歴史教育が求められている。政府はただちに合格を撤回すべきだが、あわせて、この教科書を採択させない闘いは、教育現場や地域での緊急の課題である。連合長野、平和・人権・環境労組会議、県教組など七団体は五月七日、県教育委員会に公正な教科書採択を行うよう要請を行った。藤田茂樹・長野県教職員組合書記長に聞いた。

 「つくる会」は、昨年十二月に県議会に請願を行い、その中で、中学の歴史・公民教科書の採択について現場教員の意見を聞かずに行えと主張している。また、各教育委員会に「つくる会」の西尾幹二による「国民の歴史」を送付した。さらに議員提出というかたちを取って、更埴市議会で同様の請願を採択させた。
 このようにして、なんとかして侵略の歴史をわい曲した教科書を採択させようとしている。また、産経新聞などは韓国からの当然の「再修正」要求に対して、「内政干渉」とキャンペーンを張った。
 県内にも、中国と友好都市関係を結んでいる自治体は多いし、教職員も交流で訪問する機会がある。外交上、過去の歴史に対するゆがんだ理解が進むことは、国際化の流れにも逆行する。われわれとしては、憲法と教育基本法を踏まえ、教育現場の意見が反映された教科書採択が行われるべきだと主張している。
 平和・人権・環境労組会議など七団体で県教委に要請を行ったが、二月にも同内容で県議会に請願を行っている。これは継続審議となっているが、県下の全自治体に対しても、同様の請願を行う予定だ。
 この問題に対しては、保護者の関心も非常に高い。われわれが県規模の学習会を行ったことを聞き、「地域でも取り組んでほしい」という声が届いている。教組としては、保護者もまじえ、各校区ごとの学習会を行いたい。採択の参考となる見本本教科書の展示会に対しても、いっしょに参加していきたい。

教科書採択に関する要請書(要旨)

 二〇〇二年度から使用される教科書について、検定結果が公表されました。検定に合格した教科書の中に、「つくる会」が執筆した中学校社会科歴史・公民の教科書が含まれています。この内容については、史実をわい曲し戦争を美化するなど、アジアにおける平和のための努力に逆行する記述が多く、国内外から大きな批判が起こっています。
 また、この教科書の採択を目的として、地方議会への請願や、教育委員に対する教科書著書からの図書贈与などが、全国的に行われてきました。「つくる会」などによって、採択制度の変更を迫る動きも起こっています。
 教科書で学ぶのは二十一世紀を担う子どもたちであることを考え、それにふさわしい教科書が、憲法・教育基本法にもとづいて、公正かつ民主的に選ばれるよう、下記の通り要請いたします。
一、日本国憲法・教育基本法の理念にもとづき、国際理解・協調の見地について十分な配慮がなされている教科書を採択すること。
二、「新しい歴史教科書をつくる会」などによる不当な宣伝にまどわれることなく、公正な採択を行うこと。
三、教科書採択にあたっては、教育現場の意見がいっそう重視されること。
四、教職員・保護者・地域住民の教科書閲覧が十分に行えるよう、見本本展示期間の延長、場所の増設などを実現すること。また、あげられる意見・感想が尊重されること。