20010415

教科書問題 アジアから怒りの声高まる

日本政府はただちに是正を


 文部科学省が四月三日教科書検定で、過去の侵略を美化した「新しい歴史教科書をつくる会」による教科書を合格としたことに、アジア各国で怒りの声が高まっている。各国の声を紹介する。

【中国】
 人民日報は四月六日、「歴史のわい曲と侵略の美化を許さない」とする論文を掲載、「日本の右翼勢力が依然として頑迷に残り、軍国主義の魂を必死に呼び戻している」と述べた。日本政府に対しては、「中国人民の感情をひどく傷つけ、中日関係の健全な発展を妨害」しているとし、「適切な措置」を求めた。
 中国青年報も四日、「日本の右翼はどうしてかくも勝手放題なのか」と題する論評を掲載、「つくる会」の政治的背後に、財界や自民党があることを暴露した。
 香港の明報は五日、社説で「日本の文部科学省が歴史をわい曲する教科書を承認したのは、日本政府がこの五十年来、侵略戦争の歴史を真剣に反省していないことの反映」であり、「アジア諸国は警戒を高めなければならない」と論じた。

【韓国】
 外交通商省スポークスマンは三日、「つくる会」教科書は「自国中心的な史観に立脚し、過去の過ちを合理化、美化する内容を含んでいる」と批判、検定合格に強い遺憾の意を表明した。
 韓国教員団体総連合会は、九日以降一週間にわたり、歴史わい曲についての特別授業を行っている。市民団体や宗教団体は連日抗議行動を行い、日本製品の不買運動を始めたところもある。韓日議員連盟も、定期総会の無期限延期を決定と抗議のための代表来日を決めた。
 東亜日報は六日、「太平洋戦争以前の『強い日本』を懐かしむ勢力が現在の日本社会に存在している」と批判、森首相らはこうした動きの「強い味方」であると断じた。

【朝鮮民主主義人民共和国】
 朝鮮中央通信は五日、「つくる会」教科書の合格について、「日本当局の行為は、過去、日帝によって残酷な災難を強要された朝鮮とアジア諸国、国際社会と公正な世論に対する耐え難い冒とく、公然たる挑戦」と批判した。

【ベトナム】
 外務省のファン・トゥイ・タイン報道官が五日、「日本が歴史認識を改めることが、隣国や域内諸国との友好・協力関係の促進に貢献する」とコメントした。

【マレーシア】
 マレーシア華人協会連合会が五日、「歴史的事実を美化する行為に強く抗議する」とする抗議文を、クアラルンプールの日本大使館に提出した。
 星州日報は「日本人民とアジア各国人民が団結して、歴史をわい曲する教科書に反対するよう呼びかける」と述べ、南洋商報も同様の記事を掲載した。

【シンガポール】
 聯合早報は五日、社説「子や孫にまで災いをもたらす日本の右翼戦争史観」を掲載、「(文部省の修正は)少し粉飾したり内容を薄めたにすぎない」と非難した。