20010315

東京 WTO交渉見据えシンポ

政府は日本農業の擁護を


 シンポジウム「WTO交渉と日本農業の課題」が三月六日、東京で開催された。主催は農政ジャーナリストの会。シンポジウムは、WTO(世界貿易機関)農業交渉の見通しと日本農業の課題について理解を深める趣旨で開催されたもの。冒頭、記念講演として内橋克人氏(評論家)が「日本型停滞の構造」と題して講演を行った。
 内橋氏は「日本経済は、上昇する土地価格をテコにして経済成長を図ってきた。このシステムがいまや行き詰まっている」とわが国経済の問題点を指摘し、「土地を単に経済の道具としてきたことが、日本の田園風景や農業を破壊してきた」とこれまでの農業政策について批判した。
 続けて「『改革』という言葉がもてはやされているが、世界市場化ともいえる状況に抵抗するのが市民社会の正義ではないか」と、グローバル化する世界経済とわが国経済について警鐘を鳴らした。
 シンポジウムでは、赤根谷達雄氏(筑波大教授)、小島麗逸氏(大東文化大教授)、佐久間智子氏(市民フォーラム二〇〇一事務局長)、篠原孝氏(農水省総合研究所所長)、若林英毅氏(JA全青協委員長)の各氏が発言した。
 赤根谷氏は「自由貿易は大事だが、日本もWTOに主張すべきところは主張してもいいのではないか」とし、佐久間氏は「WTOで決まる基準がわが国の基準になってしまうのに、国内議論が進まないことを危ぐしている。例えばWTO交渉で上下水道の自由化も議論されているが国内ではほとんど知られていない」と、農水省の姿勢について批判した。
 小島氏は「スーパーにいくと外国からの生鮮食料品が安い価格で店頭に並んでいる。中国のWTO加盟によりこれまで以上に外国から生鮮食料品が日本に入ってくることが予想される。各国は日本を巨大な市場に見立て、国家戦略として農産物の輸出に力を入れるだろう。日本側としてもルールづくりが必要」と、安全基準などのルールづくりの必要性を訴えた。
 若林氏はJA全青協について紹介しながら、「WTO農業交渉について一般の農家の関心は非常に高い。われわれも組織討議を重ね、農水省に申し入れを行っているが、寝込みを襲うような妥結はしてほしくない」と、農水省にクギを刺した。
 四月までには加盟各国からの提案が出そろい、交渉が本格的に始まろうとしている。わが国政府は、WTO交渉において日本農業を保護・育成する政策を堅持すべきである。