20010315

えひめ丸事件

米軍糾弾 全国で行動をまき起こそう
東京、神奈川で緊急抗議集会

対米追随外交の転換を


 近く日米首脳会談が開かれる。これを花道に森首相が辞任することは結構だが、えひめ丸事件で米国にき然たる態度を取れなかった森首相が、首脳会談で引き続き日米基軸、対米追随を再確認することは明白である。だが、それは日米同盟を強化し、米国の言いなりになって、アジアと敵対させられるものである。同時に、米軍犯罪・事故を引き続き発生させるものである。えひめ丸事件や沖縄の相つぐ米軍犯罪は、日米安保条約、在日米軍がその根源であることを教えた。米原潜の日本寄港拒否の声も自治体から上がっている。いまこそ、安保破棄、米軍基地撤去の国民世論を拡大し、そのための国民運動を実現しよう。三月六日東京、三月十日神奈川でえひめ丸事件・米軍を糾弾する緊急集会が開催された。こうした闘いをさらに広げ、全国で巻き起こす必要がある。東京、神奈川集会の発言などを紹介する。

東京
 「米原潜による実習船沈没事件・沖縄米軍トップの侮辱発言糾弾!森連立政権はアメリカ追随外交をやめろ!緊急抗議集会」が三月六日、東京で開かれた。主催は、照屋寛徳・参議院議員、東門美津子・衆議院議員、槙枝元文・元総評議長、森井眞・明治学院大学名誉教授などが呼びかけた実行委員会。
 槙枝氏は「米軍は世界中でわが物顔に振るまっており、えひめ丸沈没事件のようなことがいつどこで起きても不思議でない。だからこそ、大衆運動を基礎にした行動が大事だ」とあいさつした。
 前田哲男・東京国際大教授が「事件に潜む日米安保の危険性」と題した講演を行った(関連記事)。
 篠原国雄(海上労働ネットワーク事務局長)は、「私たちは、船員と船舶部員による団体だ。船員には国際的なライセンスが必要で、定められた航路を走っている。だが、米艦船にはライセンスが必要なく、ルールを守らない。えひめ丸事件は、無免許のダンプカーが暴走し、正しく走っている車にぶつかったようなものだ。二十年前の日昇丸事件では二人の船員が亡くなったが、当て逃げした米潜水艦の船長は結局無罪だった。米軍がいる限り、こうした事故はなくならない」と述べた。
 その後、会場からは民間労組員、学生、沖縄出身者、都高教組組合員などから、それぞれの場でもっと怒りを行動に変えようという発言があった。

明治学院大学名誉教授・森井眞
 えひめ丸事件に、言葉に尽くせない怒りを感じている。その怒りは、日本はここまで情けなく惨めな国になっていることに対してだ。主人持ちの国は卑しくなる。政治家が最初に卑しくなったのは、当然だ。自分の国の運命を自分で決められないからだ。
 だから、この政治家を国民が許したら、国民まで卑しくなってしまう。あの政治家たちの姿は惨めで卑しいものだ。それは憲法より安保を大事にして、その安保条約に使われている姿だ。政治を変えるために、それぞれの場で、この怒りをぶつけていこう。

政府は米国に毅然たる態度を取るべき
前田哲男氏の講演要旨
 事件は遠いハワイのできごとだが、遠い世界のできごとではない。いつどこでも起こりうる。明日、東京湾の入り口で起きても不思議ではない。日米安保により、米原潜は昨年、横須賀27隻、佐世保14隻、沖縄勝連町のホワイトビーチ10隻の51隻が入港している。そこにはグリーンビルも含まれている。えひめ丸事件後も原潜は日本に入港しており、勝連町長は「事件の真相が究明されるまでは入港しないでくれ」と言っている。だが、政府はそれさえ主張していない。一方、米軍側は「緊急浮上訓練も民間人の乗艦もやめない」としており、日本近海で訓練をやるかもしれない。相模湾には米海軍に提供した訓練水域があり、遠い世界のことではない。だから、政府は再発防止を米国に強く申し入れるべきだ。
 第2は、米軍が過去の教訓に学んだか、ということだ。20年前に日昇丸事件という米原潜による当て逃げ事件が起きた。その事件で2人が死亡し、米国は謝罪し、二度とこうした事件が起きないようにすると約束した。だが、今回の事件の真相が次第に明らかになりつつあるが、やはり怠慢の繰り返しだ。教訓に学んでいない。
 第3は、日米安保体制と無縁なのかということだ。無縁ではない。えひめ丸事件と同じ日、沖縄の北谷町での連続放火犯の米兵の身柄引き渡しを拒否した。数日後には酔っぱらい米兵が車などを破壊した。前日には、大分県日出生台演習場での実弾射撃で米軍が地元町議など3人に射撃をさせた。これを告発したが、検察は受理しなかった。これらの事件は、日米安保の地位協定によって、米軍が自由に活動できることを保障した結果だ。これを変えない限り、米軍犯罪、事件・事故はなくならない。ドイツでは、地位協定が改定され在ドイツ米軍の行動はドイツ国内法によって制限されている。せめてこのぐらいにはすべきだ。


神奈川
水産高PTAも危ぐの声
 「米原潜事件に怒る!神奈川集会」が三月十日、横浜で開かれた。主催は、県内の平和団体、労組や議員などによる実行委員会。
 主催者を代表し、伊藤茂氏(前衆議院議員)があいさつした。伊藤氏は「えひめ丸は神奈川の三崎港から出港しており、行方不明者の一人は県民だ。横須賀には米原潜が絶えず入港しており、県民の力を合わせて抗議することが大事だ」と述べた。
 石川巌氏(軍事リポーター、元朝日新聞記者)が「米原潜事件はなぜ起きたか、その背景を探る」と題した講演を行った。氏は「えひめ丸事件は、米原潜のアクロバットショーの失敗によるものだ。原潜はソナーの故障、潜望鏡記録の取り忘れを主張しているが、すべてウソだ。結局、艦長らは無罪で終わるだろう」などと述べた。
 会場発言では、行方不明者の同僚である梅津敬吾氏(三崎無線通信士協会会長)が発言(関連記事)。鈴木保氏(厚木基地爆音防止期成同盟委員長)や清水昭司氏(NEPAの会代表)も、事故への怒りを訴えた。
 四月から長男が三崎水産高校に入学するという相田紀良氏は、「息子が合格した矢先に、今回の事件だ。水産高校はこんな危険な実習をしていたのかと、考えさせられた。三崎水産高でも、実習航海ではえひめ丸と同じ海域に行くという。こういう事件がなくなるように、私もPTAの一人として運動をしていきたい」と訴えた。
 その後、原因究明や実習船の引き上げ、米軍の謝罪・補償などを求める集会アピールを採択した。なお、実行委員会は宇和島市の捜索継続を求める署名にも取り組み、集まった署名と見舞金を送った。

軍隊は犯罪にならないのか
三崎無線通信士協会会長・梅津敬吾
 行方不明になった船員の瀬川さんは、当協会の副会長であり、非常に真面目な人だ。
 昨日も奥さんに会って話を聞いてきた。事故当時、ブリッジに瀬川さんがいたことが確認されている。瀬川さんは、新しい無線装置の予備の電源を入れるために、無線室に戻ったのだろうと、奥さんは言われた。私も実習船に三十数回乗ってきたが、最後にSOSを発信しなくてはならない気持ちはよく分かる。だから、私も同感である。
 奥さんは外に出られない状態で、心のケアーが必要なだ。ゴミを出すにも、周囲の状況を見て、ほんの数分間外に出るだけだ。三浦市長にも、健康だけでなく、心のケアーについても要請した。査問会議に出るためにワドル前艦長が奥さんと手をつないでいた。これに対して、奥さんは非常に怒っていた。
 軍艦は無法である。治外法権の特権を利用して、証拠を隠ぺいしていると感じる。人間的には責任感のない人間だと痛感している。
 国際法上、軍の艦長にはライセンスはない。だから、長く航海しているが、軍艦が来れば逃げるようにしている。国際法上の国家試験を取った民間の船長と比べれば、操艦技術などずいぶん甘い。
 民間の船舶の航路はきちんと決まっている。陸上でいえば国道と同じだ。その国道を免許を持たないで走っているのと同じだ。例えれば、公道を無免許の戦車が走るのと同じだ。潜水艦は強固なチタンの塊であり、ぶつけられれば船舶はひとたまりもない。
 軍法会議ではおそらく無罪だろう。軍隊では何をやっても犯罪にならないというのは、まことに腹立たしい。