有明漁民が農水省抗議行動


	20010305 有明漁民が農水省抗議行動断固たる大衆行動こそ要求実現の道政治家は漁民を見殺しにするのか

	福岡県有明海漁連、大和高田漁連、柳川大川漁連、大牟田漁連や大野島漁協などの有明海沿岸漁民約三百人は三月一日、農水相への要請行動と水門開放を求めるデモ行進を行った。すでに有明海では、諌早湾干拓工事の水門閉鎖によってノリ収穫が例年の二割程度しかなく、数年前からカニ、貝なども大打撃を受けている。こうした状況に対し、漁民二千二百人は二月二十二日、九州農政局諌早湾干拓事務所に押しかけ、工事中止と水門開放を強く求めた。その後、福岡漁連、佐賀漁連、熊本漁連などは工事阻止の座り込み行動を続けた。それでも政府は解決しようとはせず、漁民たちは農水相要請、抗議デモによって要求実現に立ち上がった。漁民の闘いは、営業と生活を守る当然の闘いであり、こうした大衆行動こそ要求実現の道である。悪政に苦しむ労働者、中小商工業者は、生活を守るために立ち上がった漁民を支持し、連帯して要求実現をかち取ろう。有明漁民が怒りのデモ　荒牧功・福岡県有明海漁連会長は、まず諌早湾干拓工事中止を求める十二万六千人以上の署名を提出した。ちなみにこの署名は、漁民だけでなく、漁連が二月二十五日に福岡市、久留米市など四カ所で街頭署名を行ったもの。一日で一万四千人もが署名に応じるなど、広く県民にも支持しされている。　続いて、会長は「宝の海有明海で、われわれは生活してきた。われわれが反対してきた諌早湾干拓工事は、漁業には影響がないと工事が強行された。これによって有明海は大きく変化し、ノリやカニ、貝などの魚介類が壊滅的打撃を受けている。漁民の生活は困窮し、有明漁民の存亡の危機にある。こうした原因は、干拓工事による水門閉鎖によるものである。よって、漁民の生活を守るため①諌早湾干拓工事の中止、および水門の常時開放、②有明海の漁業問題の調査と抜本的な解決策を求める」との要請を行った。　さらに、梅崎義己・柳川大川漁連会長は「参加した漁民は、諌早湾干拓工事の中止、水門開放を求めてきた。干拓工事から漁獲量は低迷を続け、ノリは平年の二～三割程度しかない。タイラギなどの貝は数年間収穫がゼロになっている。九州農政局は、堤防内の水が腐り悪影響をつくりだしていることを知りながら、漁民の声を聞こうとしない。見殺しにしようとしていることに憤りを感じる。そこで、ドロ水が有明海に流れ込んでいることを認めるなら、われわれ漁民を見殺しにするものだ。また、韓国では規模の違いがあるものの同じような干拓事業で、さまざまな影響が出た。これは、工事を中止することで数年間で海がもとに戻った。では、有明海で工事を中止し、水門を開けても、元に戻るまでの数年間の補償をどうするのか。学者などによる第三者委員会の調査結果を踏まえて、水門を開けるというが大臣の責任はどうなのか」と問いただした。　田中登・大和高田漁連会長は「この三カ月なにも好転していない。有明海は死んでいるも同然だ。諌早湾干拓の影響によってプランクトンは数倍に増えている。水門締め切り後、資料請求したが何も出てこなかった。また、長崎県が干拓について調査をしたが、長崎県民の六五％が必要ないと答えている。干拓によって農地をつくるというが、コメは余り、減反が続いている。野菜は輸入急増で成り立たない。どうして農地がいまさら必要なのか。必要はない」と述べた。　原田俊孝・大牟田漁連会長は「昨日まで諌早のピケに参加していた。そこで地域の人びとと交流してきた。長崎の漁民の方々から『賛成、反対があり公然とは難しいが、同じ漁民だから気持ちはいっしょだ』と、激励された。また、漁民ではない人からも『二十年前の長崎災害の時、諌早湾は干拓工事がなかったが影響はなかった。干拓工事は必要ない』とも言われた。九州農政局に抗議に行ったが、われわれはどうしてもやむにやまれぬものだ。ともかく工事を止めてほしいと訴えてきた。政治判断を求める」と語った。　こうした漁民の要求に谷津農水相は「第三者委員会が水門開放を決めれば、政治判断する」を繰り返すばかりで、いっさい漁民の要求にまともにこたえなかった。しかも、漁民の要求に対して「誰が長崎県を説得するのか。やってくれるのか」と脅迫まがいの発言さえ行う始末であった。会場からはさまざまな抗議や質問がついだ（別掲）。　一方、デモ隊は農水省前を始め、霞ヶ関周辺で「政治家は漁民を見殺しにするのか」との横断幕を先頭に、「水門を開けろ」「宝の海を返せ」のシュプレヒコールを繰り返し、政府の責任追及をアピールした。漁民の声　大臣以下全員が首をくくって責任を取れ　◎すでにこの三年間で、漁業不振のために十二人が死んでいる。このままいけば、有明漁民数十人が死ななくてはならない。そうなれば、漁民を見殺しにした大臣以下官僚の責任だ。大臣以下の官僚が全員が首をつっても済まないものだ。どう責任を取るのか。　◎第三者委員会というが、国の施策として諌早湾干拓をやった。いくら学者を入れても、海の実態を知らないからだめではないか。有明海を元へ戻すのは、大臣の政治姿勢ではないか。そこをはっきりさせてくれ。　◎われわれはせっぱ詰まっている。第三者委員会の結論は九月だというが、われわれは待てない。水門を開けることがまず第一だ。　◎有明海の環境破壊について、大臣はどう感じているのか。その点をはっきりさせてほしい。　◎われわれは先祖代々、有明海で漁業をやって生計を立ててきた。そして子供たちにも漁業をやろうと言ってきた。だが、有明海がこれではとても後を継げなどとは言えない。政府は、希望がもてる漁業政策をつくるべきだ。　◎後継者を育て、有明海を守っていくことがわれわれの使命だ。だが、今は若者が希望を失っている。有明海で生活できないようなら、とても地元には帰れない。工事中止・水門開放の政治判断をしてくれ。　◎有明海では四、五年前から水揚げが減った。生活するには借金しなくてはやっていけない。しかも今年は、ノリが生産が始まって以来初めての大凶作で、資材などの代金が払えない。その上、孫が学校で必要なお金について言えないほどになっている。どうか、有明海を元に戻してほしい。　◎ともかく水門を開けてくれ。有明海がおかしくなったのは、干拓工事によるものだ。われわれは海がなければ生きていけない。水門開放の判断をすべきだ。