有明海のノリが壊滅的被害を受けている問題で、福岡、佐賀、熊本、長崎の漁業協同組合連合会などが一月二十八日、漁船千三百隻・六千人の海上デモを行った。諫早湾干拓中止と水門開放を求める漁民の闘いを、支援する世論が求められている。福岡県大和漁協青壮年部会長の江橋喬氏に聞いた。なお、党福岡県委員会は、漁民の闘いを支援する宣伝を、県内各地で行っている(関連記事)。
今回の海上デモは、一月一日、十三日に次ぎ今年三回目で、過去最大規模となった。長崎県漁協は自主参加を決定したが、カニ漁民などが百四十隻を連ねて駆けつけた。
漁民は「宝の海をかえせ」「死の海にするな」などの横断幕を掲げ、ノリ不作の原因とされる諫早湾干拓事業の工事中止と堤防排水門の開放を要求した。デモは堤防を取り囲むように行われ、漁民は「干拓工事を中止しろ」などのシュプレヒコールをあげた。
さらに、福岡県有明漁連の荒牧会長が行動団を代表して、川島・九州農政局諫早湾干拓事務所長に工事中止を求める抗議文書を手渡した。
堤防側の陸側にも、漁協婦人部など七百人が集合、行動を支援するなど、漁民の闘いが有明海を揺るがした。
政府は即刻工事中止を
江崎 喬・大和漁業協同組合青壮年部会長
一月二十八日の海上デモには、大和漁協青壮年部も、全力で取り組んだ。
とにかく、諫早湾干拓によるプランクトンの異常発生でノリが変色してしまい、壊滅的な打撃を受けている。何しろ、大和漁協では今年は例年の二五・七%しか水揚げがない。これは、例年二千万円の水揚げがある人なら、五百万円程度しか取れないということだ。
ところがこの規模だと、機械の借り入れ金返済など、必要経費として千五百万円程度はかかる。これだけで一千万円の赤字の上に、生活費のねん出も必要なので、大変だ。ただでさえ高齢化や後継者問題をかかえているのに。諫早湾の水門開放とあわせ、県や国には具体的な助成措置を望みたい。
立場の違いから、「水門を開けるな」という漁民がいるのも事実だ。われわれとしては自分たちの要求を掲げ続けるが、彼らとの話し合いも続けていく。
消費者にとっても、有明海は国産ノリの四〇%を占めているので、大きな影響が出るだろう。
事実、佐賀県の先日の入札では例年の五〇%しかノリが出ず、価格は一枚当たり平均三〜五円もアップした。一束百枚で販売されるので、束当たり三百〜五百円価格が上昇していることになる。これはかなりの高騰だ。
兵庫県の入札では、価格が例年の倍にもなっているそうだ。おにぎりの価格が上がるなど、消費者にも影響が出るのではないか。
あわせて、今回の被害を口実に、ノリの輸入自由化が行われるとしたら、問題だ。アジアからの安いノリが輸入されたら、太刀打ちできない。漁業も重要な食文化の一つであり、国産を維持しなければならないのではないか。そのことは、消費者にも理解してほしい。
政府や長崎県は、一方で「原因調査を行う」といいながら、干拓工事はいまだに継続している。「調査」というなら、少なくとも工事の中止をすべきではないか。
もし、干拓による水門閉鎖が原因ということがハッキリすれば、一部はすでに完成している水門を、また税金を使って撤去することになる。だから、せめて調査期間中は工事を中止すべきだろう。政府は、言っていることとやっていることがチグハグだ。こんなことでは困る。
今後も、議員などへの働きかけを強めるとともに、海上デモなどは継続していく。
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