20001215

ルポ 埼玉県川口市

町づくりを乱す大型店(下)

祭りもできぬ心配が


 商店街役員に続き、肉屋のおかみさんにも話を聞いた。
 「とにかく規模が大きくて、頭が痛くなる。私の友だちなんか、自分の乗ってきた車を探すのに三十分もかかったわよ」と迷惑顔だ。「だけど、両手にいっぱい買い物袋をかかえているような人は、ほとんどいなかったわね」。ここでも、なんとか希望を見いだしたい気持ちが顔をのぞかせる。
 道行く買い物客(女性)にも話を聞いてみた。
 「やっぱり勝手を知ったお店の方が、安心して買える」という。「だけど、夜九時までやってるのは困るわね。車が増えて、毎晩の犬の散歩がホントに危なくなったのよ。しょうがないから、散歩のコースを変えたわよ」。
 ダイヤモンドシティの南側は県道だが、残り三方は一方通行の道路になっている。うち一本は、桜並木がある川沿いの道。その沿道の商店でも、話を聞いた。
 「このへんでは、春に『桜祭り』をやっている。車が増えると、排気ガスで並木がどうにかならないか心配だ」と語る食堂店主。なるほど、大型店はいろいろな影響を地域に与えるものだと、いまさらながら実感する。

大型店の競争が商店街に影響

 実は、川口市と隣の戸田市とあわせると、ジャスコだけでも合計三店舗という過密地帯だ。
 だが、九九年度の県内大型五十四店舗の売上高は前年比四・三%減となり、全国平均の三・五%減を上回っている。相つぐ出店で大型店間の競争が激化、共倒れとなりかねない状況なのだ。
 しかも、六月の大店立地法施行を前に、大型店は駆け込みで出店や営業延長を進めてきた。埼玉県内だけでも、閉店時間延長では四月に三十件、五月にも四十件以上の申請があった。
 こうした大型店間競争のあおりを受けて、中小零細商店は軒並み営業難に陥っている。
 川口市内の小売業は、この十年間の不況ともあいまって、店舗数、従業員数、販売額とも低落している(グラフ)。また、売場面積別の店舗数、従業者数、販売額の構成比をみると、店舗数では約七五%を占める百平方メートル以下の中小零細店舗が販売額では二〇%程度であるのに対し、わずか一・三%の一千平方メートル以上の店舗が、販売額の三二%、従業者の一九%を占めている。もちろん、こうした傾向は川口市に限ったことではない。
 中小零細商店の営業だけでなく、近隣住民の生活に多大な影響を及ぼす大型店。出店を前提にした規制ではなく、商店街の役割、住民の利益を最重視した町づくりを行うことこそ、大切ではないだろうか。


大型店に依存せぬ町づくりを
市原 光吉・川口市議

 大型店の野放し出店は、川口でも変わらない。市中心部にはそごうがあるが、経営難で撤退がうわさされた。出店時には商店街も反対するが、いざ撤退するとなると「困る」となることもある。つまり、大型店が出店した後での「対策」には限界があり、中小零細商店を守る上では不十分ということだ。
 大型店が出店するとお客の流れが変わってしまい、町づくりが根底から変わってしまう。中小店は大型店の「小判ザメ」になるしかなく、もしこれが撤退すれば負の遺産しか残らず、町はますますさびれてしまう。だから、大型店ははじめから来ない方がよいということになる。
 商店街は地域に密着したまつりやコミュニケーションの中心だ。そうした大型店との違いを発揮できるように、行政もサポートを強めるべきだろう。そうした政治を実現するため、これからも活動を続けていく。


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