20001205

ルポ 埼玉県川口市
町づくりを乱す大型店(上)

周辺道路は大渋滞


 全国各地で大型店の出店ラッシュが続き、商店街や周辺住民の営業と生活がおびやかされている。埼玉県下最大のショッピングセンターがオープンした川口市を訪ねた。


 十一月一日、埼玉県川口市北部に、県下最大規模のショッピングセンター「ダイヤモンドシティ・キャラ」がオープンした。
 「ダイヤモンドシティ・キャラ」は、「サイボー」という紡績工場跡地に建設されており、売場面積は約四万四千平方メートルと、東京ドームとほぼ同じ大きさだ。大手スーパーのジャスコを核店舗とし、家電・パソコンのラオックス、無印良品など約百の専門店で構成されている。駐車場は、一階平面、四階、屋上の三カ所で、合計二千六十台を収容する。

送迎バスは営業妨害

 「ダイヤモンドシティ・キャラ」開店から十日後、JR京浜東北線の蕨駅東口を降りる。川口市は南北に長いため、隣の蕨市にある駅からが便利なのだ。
 駅前の五差路にくると、なにやら四十〜五十人の行列待ちの人びとがいる。いったい何だろうと近づく。と、「ダイヤモンドシティ・キャラ行き」という看板が。あとで分かったのだが、専用の送迎バス乗り場とのことだ。十五分に一本の間隔で動いているそうだが、いかにも場所が悪い。歩道の幅は二人が並んで歩ける程度しかなく、しかも行列は、近隣商店の入口前にずらずらと並ぶありさま。「営業妨害」と抗議されても仕方ないのでは、と思ってしまう。
 車で、駅東口からほぼ真っ直ぐの県道をダイヤモンドシティに向けて走る。すごい渋滞だ。わずか一・五〜一・六キロの距離なのだが、まったく進まない。バス通りで、しかも土曜日ということもあるのだろうが、店入口まで三十分近くかかってしまった。これでは、歩いた方が早い。
 ようやく入口に到着したのだが、駐車場の状況を表示したランプは、三つとも「満車」。誘導灯を持ったアルバイトの警備員が、大声で叫んでいる。「満車でしばらく入れませーん。この辺をぐるぐる回って下さーい」。
 確かに、バス通りに停車して駐車場の順番を待てば、渋滞はさらに悪化するだろう。だが、「ぐるぐる回って」では、むしろ渋滞を周辺に拡大させることになるのではないか。会社側がそう指導しているとすれば、疑問が残るところだ。
 やむなく入口前を通り過ぎ、しばらく進むと、近隣の交差点という交差点に、「ダイヤモンドシティは満車」と大書きされたステッカー看板が出されている。この看板は、いつ誰が持ってきて、そして片づけるのだろうか。もし一日中出されているなら、それこそしゃれにならない。行政は、この渋滞をどう考えているのか。

売上減恐れる商店街

 この当たりで車を降り、近所の商店で話を聞くことにした。
 「十時の開店だけど、いつも十一時には『満車』のランプがついてるよ」と、雑貨店の店員さん。「このあたりには一方通行の道路も多いから、渋滞になることは予想していた。開店前には市役所が交通量の調査をしていたけど、またやってもらわないとなあ」と、なかばあきらめているのか、妙にたんたんと話す。
 商店街の役員さんにも聞いた。役員さんは、「開店してすぐは、珍しがって皆行くからね。一〜二カ月たたないと、売り上げへの影響は分からないなあ。問題は、ジャスコに来た人が地元の商店街に来るかどうか」と、慎重に言葉を選びながら話してくれた。
 「開店前の説明会でも、渋滞の問題はずいぶん質問した。しかし、『独自に交通量調査をしている』といわれてしまうと、どうしようもない」と、事実上大型店出店を規制できないもどかしさを語る。
 「高齢化社会になっていく中、商店街の役割は大事になっていくと思う。ここの商店街でも、地元の小学生に話をさせてもらい、舗道の花壇整備やゴミ拾いに取り組んだりしている。皆で地域をよくしていくという役割は、商店街にしか果たせない」との話は、まるで自らに言い聞かせているようだった。 (続く)


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